Googleが5000億円超の制裁金を独占禁止法違反でEUから科される

EUの政策執行委員会である欧州委員会が、広告技術(アドテク)業界における競争をゆがめたとしてGoogleに対して独占禁止法違反で29億5000万ユーロ(約5000億円)の制裁金を科しました。Googleは自社のオンラインディスプレイ広告に関するサービスを優遇することで、競合するサービスの提供者、広告主、オンラインパブリッシャーに不利益を与えたとされています。欧州委員会はGoogleに対して自己優遇行為を終わらせることおよび、アドテクサプライチェーンにおける固有の利益相反を解消するための措置を講じることを命じました。
Commission fines Google €2.95 billion over abusive practices in online advertising technology
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_1992

EU fines Google $3.5B over adtech ‘abuse’ | TechCrunch
https://techcrunch.com/2025/09/06/eu-fines-google-3-5b-over-adtech-abuse/
Googleは広告を主な収入源とするアメリカの多国籍テクノロジー企業です。具体的には、自社のウェブサイトやアプリケーション上で広告を販売し、オンラインで広告を掲載したい広告主と、広告スペースを提供できるパブリッシャー(第三者のウェブサイトやアプリ)の間を仲介しています。
広告主とパブリッシャーは、新聞やウェブサイトのバナー広告(ディスプレイ広告)など、検索クエリにリンクしないリアルタイム広告の掲載に、アドテク業界のデジタルツールを活用しています。特に、アドテク業界は3つのデジタルツールを提供しており、ひとつ目がパブリッシャーが自社のウェブサイトやアプリ上の広告スペースを管理するために使用する「パブリッシャー広告サーバー」、2つ目が広告主が自動広告キャンペーンを管理するために使用するオープンウェブ向けの「プログラマティック広告購入ツール」、3つ目がディスプレイ広告を売買するために通常はオークションを通じて需要と供給がリアルタイムで交わる「アドエクスチェンジ」です。
Googleはウェブサイトやモバイルアプリへの広告掲載において、広告主とパブリッシャーの仲介役となる複数のアドテクサービスを提供しており、広告購入ツールとしては「Google広告」と「ディスプレイ&ビデオ360(DV360)」の2つ、パブリッシャー向け広告サーバーの「DoubleClick For Publishers(DFP:現在のGoogleアドマネージャー)」、広告エクスチェンジの「AdX」などを運営しています。

2023年6月、欧州委員会は「Googleがアドテク業界の競争をゆがめ、独占禁止法に違反している」としてGoogleに警告を発しました。これを受け、GoogleがAdXの売却を提案したものの、提案は却下されたことが報じられています。
Googleに広告事業の「強制売却」を欧州委員会が警告、独占禁止法調査の予備的見解で - GIGAZINE

現地時間の2025年9月5日、欧州委員会は「独自の調査により、Googleはパブリッシャー向け広告サーバー市場においてはDFPで、オープンウェブ向けプログラマティック広告購入ツール市場においてはGoogle広告およびDV360で、それぞれ支配的な地位を占めています。両市場とも欧州経済領域(EEA)全域を対象としています」と指摘。Googleがアドテク市場において独占禁止法に違反しているため、29億5000万ユーロの制裁金を科すことを発表しました。なお、29億5000万ユーロという金額は「EUが独占禁止法違反の制裁金として科した金額」としては、史上2番目に高額です。
特に、Googleは少なくとも2014年から2025年までの期間に、以下の行為によってEU機能条約(TFEU)第102条に違反することで、市場における支配的地位を濫用したと指摘しています。
・オークションに勝つために競合他社を上回らなければならない最高入札額を事前にAdXに通知するなどして、主要パブリッシャー広告サーバーであるDFPによって実行される広告選択プロセスで自社の広告取引所AdXを優遇しています。
・広告購入ツールであるGoogle広告とDV360がアドエクスチェンジに入札する際、AdXを優遇していました。例えば、Google広告は競合するアドエクスチェンジを避け、主にAdXに入札していたため、AdXが最も魅力的なアドエクスチェンジとなっていました。
これにより、アドテクサプライチェーンにおけるAdXの中心的な役割が強化され、Googleがサービスに対して高額な手数料を請求することが可能になったと指摘されています。そのため、欧州委員会は上記の行為について「AdXに意図的に競争上の優位性を与えることを目的としたものであり、AdXと競合するアドエクスチェンジの排除につながった可能性がある」と結論付けました。

欧州委員会はGoogleに対し、上記のような自己優遇措置を止めるよう命じました。また、アドテクサプライチェーンにおける固有の利益相反をなくすための措置を実施するとしています。Googleは欧州委員会の命令に対応した是正策案を提出するため、60日の猶予が与えられます。欧州委員会は、提出された是正策案が利益相反の解消につながるかどうかを徹底的に評価する予定ですが、利益相反が解消されないと判断された場合、Googleの意見表明権利に基づき、欧州委員会は適切な救済措置を講じることとなります。欧州委員会は既にGoogleによるサービスの一部売却のみが、固有の利益相反の状況に対処できるという予備的な見解を示していますが、「まずはGoogleの是正策案を聴取し、評価したいと考えている」と説明しました。
なお、欧州委員会が設定した「29億5000万ユーロ」という制裁金は、同組織が2006年に公開した罰金に関するガイドラインをベースに算出されたものです。罰金額を設定するにあたり、欧州委員会は独占禁止法に違反していた期間および事の重大性、AdXのEEAにおける売上高など、さまざまな要素を考慮しています。これに加えて、欧州委員会はGoogleが過去に支配的地位の濫用により罰金を科せられたことがあるという事実も考慮したそうです。
GoogleはEUだけでなく世界各国でアドテク市場における独占禁止法違反訴訟を起こされており、アメリカでは2025年4月に連邦地方裁判所が「Googleはオンライン広告技術で独占禁止法に違反している」という判決を下しました。しかし、広告主がディスプレイ広告を購入するのに用いる広告ネットワークに関しては独占状態にはないという判決が下されたため、Googleは「半分勝利」とコメントしています。
「Googleはオンライン広告技術市場で独占禁止法に違反している」と連邦地裁が判決、Googleは「半分勝利」とコメントしつつ控訴へ - GIGAZINE

なお、Googleの広報担当者はThe Wall Street Journalに対して欧州委員会の決定に対して控訴する意向を示しており、「広告の買い手と売り手にサービスを提供することに反競争的な要素は何もなく、Googleのサービスの代替手段はこれまで以上に増えています」とコメントしました。
一方、アメリカのドナルド・トランプ大統領は自身のSNSであるTruth Social上で「ヨーロッパは本日、もうひとつの偉大なアメリカ企業であるGoogleに35億ドル(約5100億円)の罰金を科し、『打撃』を与えました。これは、アメリカの投資と雇用に充てられるはずだった資金を事実上奪うものです。これは、Googleや他のアメリカのハイテク企業に対して科されたその他多くの罰金や税金に加えて課されるものです。非常に不公平であり、アメリカの納税者はこれを容認しません。以前にも申し上げたように、私の政権はこれらの差別的行為を容認しません。例えばAppleは、私の意見では課されるべきではなかった170億ドル(2兆5000億円)の罰金を支払わされました。彼らはお金を取り戻すべきです!私たちは、輝かしく前例のないアメリカの創意工夫にこのようなことが起こるのを許してはなりません。もしそうなった場合、私は、これらの納税しているアメリカ企業に課されている不当な罰金を無効にするために、セクション301の手続きを開始せざるを得なくなります。この件にご関心をお寄せいただきありがとうございます」と投稿し、EUによるアメリカ企業をターゲットとした罰則に不満を示しました。
なお、トランプ大統領は2025年8月末にデジタル税(デジタルサービス税)・デジタルサービス法・デジタル市場規制などでアメリカのテクノロジー企業に規制を課すあらゆる国に対して、規制を解除しない場合は追加関税を課し半導体の輸出を制限すると発表しています。
トランプ大統領が自SNSで「アメリカと素晴らしいテクノロジー企業に敬意を示せ、さもなければ、どんな結果になるか考えろ!」と投稿しデジタル課税や関連規制に激怒、規制を撤廃しないすべての国に対し新たな追加関税を課し半導体の輸出を制限すると宣言 - GIGAZINE

・関連記事
カナダ当局がGoogleをオンライン広告での反競争的行為で提訴し広告ツール売却や罰金支払いを求める - GIGAZINE
GoogleがEUによる独禁法違反の調査を終わらせるために「Ad Exchange」の売却を申し出るも拒否される - GIGAZINE
Googleに3000億円超の制裁金が確定、EUでの市場独占に関する裁判での敗訴で - GIGAZINE
Googleが独禁法訴訟で約300億円を支払いプラットフォームの運用変更を強いられる - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in ネットサービス, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article Google receives a fine of over 500 billi….