16年間の激闘の果てに「レーザーアクティブ」のエミュレーターがついに完成、いったい何が難しかったのか?

by Flávio Dechen
1993年にパイオニアとNECから発売された「レーザーアクティブ」は、レーザーディスクプレイヤーでありながら、専用パックを取り付けることでPCエンジンやメガドライブのソフトが遊べるという夢のマシンでした。また、「PCエンジン LD-ROM2」や「MEGA-LD」という、CD-ROMより大容量のLD-ROMを使ったゲームがプレイできるのもレーザーアクティブならでは。海外のセガファンが、このレーザーアクティブでプレイできる「MEGA-LD」のエミュレーターを16年超しに完成させたと話題になっています。
ares v146 released
https://ares-emu.net/news/ares-v146-released
"This is the first:" The 16 year odyssey of "time, money, wrong turns and frustration" it took to finally emulate the Pioneer LaserActive
https://www.readonlymemo.com/this-is-the-first-the-16-year-odyssey-of-time-money-wrong-turns-and-frustration-it-took-to-finally-emulate-the-pioneer-laseractive/
パイオニアが1993年に発売したレーザーアクティブ(CLD-A100)の本体はレーザーディスクプレイヤーで、LD-ROM2やMEGA-LDのコントロールパックを挿入することでゲーム機に拡張可能。
CLD-A100の実機が以下。上段がレーザーディスクのプレイヤーになっており、下段左側のスロットにMEGA-LDのコントロールパックが刺さっています。接続されているコントローラーはメガドライブのものとよく似ています。このMEGA-LDのコントロールパックが刺さっていれば、MEGA-LDだけではなくメガドライブやメガCDのゲームもプレイすることができました。

by Own work
LD-ROMはCD-ROMのLD版、すなわちレーザーディスクを読み込み専用の記憶媒体として使います。CD-ROMのソフト開発技術を流用でき、映像化されたアナログの映像や音声をデジタルデータに加工せずに使うことができるというのがLD-ROMの大きなメリット。(PDFファイル)発売直前の雑誌記事によると、価格はCLD-A100本体が約9万円、LD-ROM2やMEGA-LDのコントロールパックがそれぞれ約6万円、カラオケができるカラオケパックが約2万円。レーザーアクティブ向けに発売されたゲームタイトルは、LD-ROM2が14本、MEGA-LDが24本でした。なお、レーザーアクティブが発売された1年後の1994年にCD-ROMをメディアに採用したセガサターンとPlayStationが発売されたため、レーザーアクティブはあまり普及しませんでした。

by aaronmjr
大のセガファンであるNemesis氏は、2009年4月にメガドライブとレーザーディスクのハイブリッド機であるメガLDのエミュレーションを思い立ちました。しかし、レーザーディスクがアナログビデオ媒体であったため、レーザーアクティブのエミュレーションは非常に難しかったとのこと。
単に映像を再生するだけなら問題ありませんが、LD-ROMのゲームは映像をインタラクティブに制御するため、再生・停止・早送りといった操作だけでなく、瞬時に特定のフレームへ移動したり、逆再生したり、複数の映像を切り替えたりする複雑な処理を要求します。
実際にMEGA-LD向けタイトルとして1995年2月に発売された「タイムギャル」がこんな感じで、アニメーションが再生される最中に表示される指示通りにボタンを押していくというもの。押したボタンに応じた展開がアニメーションで瞬時に再生されます。なお、以下のムービーは後年にNintendo Switchへ移植されたバージョンのものであり、MEGA-LD本体でのプレイではありません。
1985年のレーザーディスクゲームをHDリマスターした「タイトー LDゲームコレクション」の「タイムギャル」を遊んでみた - YouTube

このインタラクティブな制御を実現するため、LD-ROMのゲームは特殊な映像記録方法を用いていました。アナログ映像では1フレームを2種類の走査線データから構成するインターレース技術が使われていましたが、レーザーアクティブではこの2種類の走査線データにまったく別の映像を記録することで、瞬時に映像を切り替えるシームレスな分岐を可能にしていました。
しかし、2014年頃の一般的なキャプチャーカードでは、まったく異なる走査線データを正しくデジタルデータに変換できなかったとのこと。また、テレビの画面に映らない垂直帰線区間(VBI)にはフレーム番号や時間、チャプター情報などの制御コードが埋め込まれていましたが、当時のキャプチャーカードではレーザーディスク独自のVBIデータを読み取ることができませんでした。
これらの問題が解決できなかったため、レーザーアクティブのエミュレーション計画は2014年に一度停滞したそうですが、後にレーザーディスクを保存するために開発されたオープンソースのハードウェア「Domesday Duplicator」と、レーザーディスクの信号を映像にデコードできる「ld-decode」が登場したことをきっかけに再始動します。ただし、Domesday Duplicatorやld-decodeは映画の保存が主目的であり、VBIデータを含む全信号のキャプチャーには対応していませんでした。
そこで、Nemesis氏はこれらのソフトウェアの改良に自ら貢献し、ディスクの全情報を記録したチャプターデータを完全に読み込む機能や、VBIを含むNTSC映像の全525本の走査線をデータとして出力する機能、デジタル音声が映像とずれないようにする修正などを自ら行ったとのこと。

by Ricardo Jurczyk Pinheiro
これらの改良によって、初めてエミュレーションに適した形でLD-ROMのデータを完全にデジタルコピーできるようになったとのこと。ハードウェアの動作自体は2013年の時点で解析を終えていたため、LD-ROMのデータを正確にコピーできるようになってからはエミュレーターの開発がスムーズに進んだそうです。そして、Nemesisの貢献により、マルチシステムエミュレーター「Ares」が、2025年8月26日にリリースされたバージョン146でMEGA-LDに対応しました。
なお、Nemesis氏によると、LD-ROMゲームのインタラクティブな制御を実現するためには、動画圧縮を使うことができず、すべての動画を非圧縮で保存する必要があるため、ゲームのファイルサイズが数十GBと非常に大きくなってしまうことを課題に挙げています。動画を圧縮すると、ゲーム機のエミュレーションと映像の展開をリアルタイムで処理しなければならず、マシンに負荷がかかりすぎてしまうそうです。
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in ソフトウェア, ハードウェア, 映画, ゲーム, Posted by log1i_yk
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