若者の不幸度が高まっているせいで人間の一生における幸福度のパターンに変化が生じている

長年にわたり世界中で行われた研究で、幸福度は若い頃にピークを迎えた後で中年期になると落ち込み、さらに高齢になると再び増加していくという「U字型」の推移を描くことが知られてきました。ところが近年は若者の間で不幸度が高まっており、この傾向に変化が生じていることが、44カ国のデータに基づく新たな研究で示されました。
The declining mental health of the young and the global disappearance of the unhappiness hump shape in age | PLOS One
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0327858

Lifetime trends in happiness change as misery peaks among the young – new research
https://theconversation.com/lifetime-trends-in-happiness-change-as-misery-peaks-among-the-young-new-research-263665
長らく、人生で最も幸福度が低く惨めさを感じやすいのは中年期であり、生涯にわたる幸福度はU字型(Uカーブ)を描くことが示されてきました。しかし近年では、若者のメンタルヘルスの悪化が問題視されるなど、若年層の間でも幸福度が低下している兆候がみられます。
中年でみじめさがピークに達する「幸福のUカーブ」とは? - GIGAZINE

そこで、イギリスのユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで定量社会科学教授を務めるアレックス・ブライソン氏らの研究チームは、アメリカとイギリスを含む44カ国のデータを収集・分析する研究を実施。年齢層別の幸福度の推移が、年と共にどのように変化しているのかを調査しました。
その結果、長らく知られていた幸福度のU字型のパターンが、「若年層の不幸度の増加」によって近年は変わりつつあることが判明しました。近年では若い頃に不幸度のピークが訪れ、その後は年齢を重ねるごとに不幸度が低下し、相対的に幸福度が増加していくというパターンになっているとのこと。この変化は中高年層の幸福度が高まったためではなく、若者のメンタルヘルスの悪化によるものだとブライソン氏らは主張しています。
以下のグラフは、年間40万人以上のアメリカ人を対象にした公開医療データを基に、「絶望状態」にある人の割合を年齢層と男女別に、1993~2024年にかけて示したもの。ここでの「絶望状態」の定義は、調査前の30日間にわたって1日もメンタルヘルスが良好でないと回答した人となっています。調査期間の大半において絶望度は45~69歳で最も高くなっていましたが、2015年頃から25歳未満の若年層の絶望度が急速に高まっています。25歳未満の男性(オレンジ色の線)の絶望度は1993年の時点で2.5%でしたが、2024年には6.6%へと増加。25歳未満の女性(青色の破線)の絶望度は1993年時点の3.2%から、2024年時点では9.3%へと約3倍に急増しています。

25~44歳の中年層でも絶望度は顕著に増加しているものの、増加率は緩やかであり、女性では4.2%から8.4%に、男性では3.1%から6.9%への増加にとどまりました。45~69歳の年齢層では、1993~2024年の絶望度の増加はそれより小さな幅にとどまっています。
その結果、2020年以降では女性の年齢層別の絶望度が、「若いほど高く高齢なほど低い」という傾向に変化しました。男性でも若年層と中年層の絶望度がほぼ同じで、高齢層の絶望度が最も低いという状態になりました。
以下のグラフは、アメリカにおける年齢別の絶望度を2009~2018年(青い線)と2019~2024年(赤い破線)で比較したもの。2009~2018年は緩やかな逆U字型を描いていましたが、2019~2024年になると「若いほど絶望度が高い」という傾向になっていることがわかります。イギリスのデータを分析した場合も、同様の結果が確認されたとのことです。

これらの変化が生じた理由については研究が進められていますが、記事作成時点では明確な結論が出ていません。絶望感の増加は2020年の新型コロナウイルスのパンデミック以前から見られましたが、パンデミックがその悪化をさらに加速させた可能性もあるとのこと。
また近年は、若者のメンタルヘルスの悪化とインターネットやスマートフォンの関連を示す研究も報告されています。しかし、確かにテクノロジーが絶望感の増加に影響しているとしても、それが単一の原因だとは考えにくいとブライソン氏らは考えています。
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ブライソン氏らが2025年に発表した調査結果では、かつて有給の労働者はメンタルヘルスが良好である傾向があったものの、近年は有給労働がメンタルヘルスの悪化を防ぐ効果が低下していることが示唆されています。ブライソン氏らは、「私たちが説明した変化の原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、政策立案者にとって、若者の絶望感の高まりという問題をあらゆる幸福戦略の中心に据えることは賢明でしょう」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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