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AIをいつ使うべきかのガイダンス


AIは便利な一方で、あらゆる物事で頼り過ぎてしまったり、人間の重要な活動を奪ってしまったりと言った懸念から、規制が求められることがあります。一方で、規制よりも「どのように使いどのように評価するか」を学生教育に取り入れる試みや、禁止ではなく使い方を教えるべきと言う指摘など、AIの使い方を正しく学ぶことが重要だという意見もあります。データエンジニアのサイモン・スペーティ氏が、「AIをいつ使うべきかのガイダンス」と題して見識をまとめています。

Will AI Replace Human Thinking? The Case for Writing and Coding Manually
https://www.ssp.sh/brain/will-ai-replace-humans/



スペーティ氏は「AIを使うのは良いことですし、誰もが使っていますが、それでも自分の技術を学び、考えるように努めてください。AIが私たちを不幸にする可能性は非常に高いと私は思います。AIを使うのは良いですが、あらゆるタスクに使うべきではありません」と私見を述べています。スペーティ氏によると、AIは自ら学習することはせず、誰かが知識や新しい洞察を付け加えていく必要があるため、歴史的概要の作成やデータから図表を作成するのには役立ちますが、文章作成やコーディングに使うのは望ましくないと考えられるとのこと。

以下は、横軸が時間、縦軸がエラーの量を表したグラフで、「AIを使用すればするほど発生するエラーが増える」ということを示しています。短期的なタスクにはAIを活用できますが、長期的なアーキテクチャ上の決定など将来繰り返し調整や修正などをしていく必要がある場合、AIを使用することによるエラーは増え続けるとスペーティ氏は指摘しました。


以下は、ソフトウェア開発者のフォレスト・ブレイジール氏が作成した「AIによる生産性向上の幻想」のグラフです。横軸は時間、縦軸はタスクの進行度を表しており、AIを導入する前はグレーで示しているように地道に進んでいきますが、AIを導入するとグリーンで示しているようなギザギザの進行になります。これは、AIを導入するとタスクの75%までは爆速で処理できて「すごい生産的」と感じるものの、結果やプロンプトに不満や問題が見つかるとゼロから再スタートする必要があり、最終的には妥協点を見つけるしかないということを示しています。


そのため、スペーティ氏はAIのユースケースを区別することが重要だと説明して、以下の図を引用しています。以下の図は、トーマス・プタチェク氏がAIのユースケースについて語るブログで示したもので、横軸はタスクの「楽しさ」、縦軸は「重要さ」を表しています。右上は「楽しくて重要なタスク」、左上は「重要だけど退屈なタスク」、左下は「重要でも楽しくもないタスク」、右下は「楽しいけど重要度の低いタスク」です。


各タスクにAIを使用する場合、「楽しくて重要なタスク」「楽しいけど重要度の低いタスク」についてAIを積極的に使うと、「楽しい」部分が阻害されてしまいます。一方で、楽しくないタスクにおいてはAIを活用することで生産性が上がる可能性が高まります。特に、繰り返し作業や面倒な事務処理が含まれる「重要だけど退屈なタスク」については、AIで自動化することで時間と精神的コストを大幅に節約できます。

また、スペーティ氏はAIを「魂がない」と指摘しています。仮に良い文章をAIが生成していたとしても、そこに魂がないならば、誰も読みたくないとスペーティ氏は語りました。また、対話AIや翻訳AIが応答を返してくるまでは、あまりにも短い時間しか猶予がないため、何かを考えたり学んだりする楽しさが奪われていくのも問題であるとのこと。


スペーティ氏が提起した問題について、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも議論が交わされています。あるユーザーは、「AIへの依存度を下げるため、AIが作業中に人間のオペレーターをトレーニングするモードがあれば良い」と提案しています。これにより、短期的にはAIだけで処理するより時間がかかりますが、長期的には人間の能力もバランス良く成長していくため、仮に電力やインターネット、AIモデルが完全に停止した場合でも、それほど影響を受けなくて済むという意見です。

また別のユーザーは、「『AIvs非AI』の議論は少し的外れで、エンジニアたちは『完璧な』アルゴリズムという古いパラダイムに囚われています」と指摘しています。このユーザーによると、スペーティ氏が引用した「AIはタスクの大部分を素早く解決するが、最後の微調整が難しい」というグラフは正しいが、人間の手で修正すれば人間の手だけで全てのタスクを処理するよりも半分以上時間を短縮できるため、「AI+人間」で考えるべきとのこと。完璧さを求められないプログラミングやライティングは人間の仕事ではなくなるかもしれませんが、AIが作るもの以上の品質が必要な部分では人間が不可欠になり、人間+AIの「ミノタウロス型」になると意見を述べています。

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in ソフトウェア, Posted by log1e_dh

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