新型コロナの後遺症「ロングCOVID」は生活の質を著しく悪化させて月の半分以上を機能不全状態にしてしまう

ロングCOVIDとは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主症状から回復した後も続く疲労感や息切れ、筋力の低下、認知機能の低下といった後遺症のことです。オーストラリアで行われた新たな研究で、ロングCOVIDは患者に非常に深刻なダメージを与え、人口全体の98%よりも重度の障害をもたらしていることが示されました。
Impacts of long COVID on disability, function and quality of life for adults living in Australia | Australian Journal of Primary Health
https://www.publish.csiro.au/PY/PY25033

Long COVID is more than fatigue. Our new study suggests its impact is similar to a stroke or Parkinson’s
https://theconversation.com/long-covid-is-more-than-fatigue-our-new-study-suggests-its-impact-is-similar-to-a-stroke-or-parkinsons-263623
日本では2023年5月に、COVID-19の感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ5類感染症へと移行され、これに伴ってCOVID-19を日常的な疾患のひとつと見なす人も増えています。しかし、一部の人々は数日にわたる発熱やせき、喉の痛みといったCOVID-19の主症状だけでなく、ロングCOVIDという後遺症にも悩まされています。
ロングCOVIDの主な症状には疲労感や倦怠(けんたい)感、筋肉痛、せき、息切れ、胸痛、記憶障害、集中力の低下、頭痛、味覚・嗅覚障害、筋力の低下など多岐にわたります。ロングCOVIDになるのは新型コロナウイルス感染者の約6%、オミクロン株ではワクチン接種者の3.5%と推定されており、新型コロナウイスル感染者の数を考えるとかなり多くの人々がロングCOVIDになっていると考えられます。

これまでの研究では、ロングCOVIDは慢性疲労症候群や脳卒中、関節リウマチ、パーキンソン病といった疾患と同程度に生活の質を低下させることが確認されています。
新たに、オーストラリアのディーキン大学健康学部の准教授を務めるディーキン・ヒッチ氏らの研究チームは、オーストラリア全土でロングCOVIDに苦しむ121人の成人を対象に調査を行いました。被験者は2020年2月~2022年6月の間にCOVID-19を発症し、その後数カ月以上が経過しても日常生活に苦労するほどのロングCOVIDに悩まされていたとのこと。被験者のほとんどはCOVID-19の発症時点で36~50歳と比較的若く、COVID-19自体の症状は入院するほどではなく、自宅で治療していたそうです。
研究チームは被験者がロングCOVIDで被っている影響を調べるため、障害と生活の質を測定するために広く使われているWHO障害評価スケール(WHODAS 2.0)とShort Form Health Survey(SF-36)に回答してもらいました。これらの調査は医学的なスキャンや血液検査の数値とは異なり、実際に症状が被験者の日常生活にどの程度影響したのかを知るのに役立ちます。

調査の結果、ロングCOVIDの被験者はオーストラリア国民全体の98%よりも重度の障害を抱えていることが判明。国民全体のうち「重度の障害」の基準を満たしているのは9%でしたが、ロングCOVIDの被験者は86%が「重度の障害」の基準を満たしていたと報告されています。被験者は平均して、月に約27日間は日常活動に支障を感じており、約18日間は「機能不全」の状態に陥っていたとのことです。
ロングCOVIDは、食事や着替えといった動作への影響は比較的少なかったものの、家事や社交といった複雑な領域では大きな影響を及ぼしました。人々は生存するための基本的なニーズを満たすことはかろうじてできたものの、家庭や職場、地域社会に貢献する能力は限られていたとのこと。
また、生活の質もロングCOVIDに大きな影響を受け、平均して生活の質の総合スコアは一般人口より23%も低くなりました。特に影響が大きかったのはエネルギーレベルと社会生活で、ロングCOVIDがもたらす疲労感や脳の混乱が、個人的な活動や人間関係、地域社会とのつながりに大きな悪影響を及ぼしていました。

ヒッチ氏らは、「疲労とは単に疲れているだけではありません。運転中に集中力がなくなったり、趣味を諦めたり、大切な友情から離れてしまったりすることもあります。私たちの調査では、ロングCOVIDが患者の将来を混乱させ、つながりを断ち切り、家族や職場、地域社会に波及する日常的な困難を生み出していることがわかりました」と述べています。
これまでの研究では、恵まれないコミュニティに属する人ではロングCOVIDの影響をより強く受けることが示されています。そのため、ロングCOVIDの規模と深刻さを無視することには、既に存在する社会的な不平等をさらに拡大させるリスクがあるとのこと。
ロングCOVIDの患者は単なる健康管理だけでなく、疲労を管理するためのサポートを必要としています。研究チームは、職場における勤務時間の短縮や職務の見直し、社会的なつながりを再構築するためのサポートなどの支援を行う必要があると主張しました。
・関連記事
新型コロナの症状が長引く「ロングCOVID」は持続感染によって引き起こされている可能性 - GIGAZINE
新型コロナの後遺症「ロングCOVID」を発症するリスクはパンデミックの過程で次第に低下していることが判明 - GIGAZINE
新型コロナの後遺症「ロングCOVID」に悩む患者の全身スキャンで「体中の組織でT細胞が異常に活性化」していることが明らかに - GIGAZINE
新型コロナウイルスに感染した回数が多いほどロングCOVIDのリスクは高くなる - GIGAZINE
疲労感や運動能力の低下をもたらす新型コロナの後遺症「ロングCOVID」にミトコンドリアの機能不全が影響している可能性 - GIGAZINE
新型コロナウイルス感染後の後遺症「ロングCOVID」の発症リスクを約1.6倍に高める遺伝子が発見される - GIGAZINE
新型コロナウイルス感染後の後遺症「ロングCOVID」で免疫システムが変化してしまう可能性 - GIGAZINE
低電圧の電流を流すウェアラブルデバイスがロングCOVID患者の症状を緩和できる可能性 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article The aftereffects of COVID-19, known as '….