保守派はリベラル派よりも「AIが選んだオススメ」を受け入れやすいとの研究結果

近年は音楽や動画などのストリーミングサービスやレシピサイトなどで、「AIが選んだオススメ」が表示されることが増えています。そんなAIによるオススメを受け入れる傾向と政治思想の関連を調べた研究で、「保守派はリベラル派よりもAIが選んだオススメを受け入れやすい」という結果が明らかになりました。
Swipe right: When and why conservatives are more accepting of AI recommendations - Paul - Journal of Consumer Psychology - Wiley Online Library
https://myscp.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jcpy.1461

Conservatives are more receptive to AI-generated recommendations than liberals, study finds
https://www.psypost.org/conservatives-are-more-receptive-to-ai-generated-recommendations-than-liberals-study-finds/
世間の消費者はNetflixのオススメ番組やSpotifyで再生される曲、料理アプリで紹介されるレシピなど、日常のあらゆる場面で「AIによるオススメ」に接しています。多くの研究はこれらのレコメンドシステムの精度を高める方法に焦点を当てていますが、「誰がAIによるオススメを受け入れやすいのか」という点については、あまり注目されてきませんでした。
政治的イデオロギーはブランドの好みや食品の選択に至るまで、幅広い消費者行動に影響を与えていることがわかっています。そこで、アメリカのニュージャージー州にあるモントクレア州立大学で経営学教授を務めるイマン・ポール氏らの研究チームは、政治的イデオロギーがAIによるオススメの受容に及ぼす影響を調査しました。

研究チームが行った一連のオンライン実験では、被験者はAIによって生成された「映画・音楽・レシピのオススメ」について想像したり、これらのオススメに反応したりするように求められました。一部の実験では、AIによるオススメが「被験者自身の過去の好みに基づいたものだった」と説明されました。また別の実験では、「AIによるオススメは被験者が普段消費するものと違う目新しいもの、あるいは異なるものだった」と説明されました。
さらに被験者らは、自分自身の政治的イデオロギーについて、リベラルから保守のどこに当てはまるのかを評価しました。研究チームはこれらのデータを基に、保守派とリベラル派でAIによるオススメを受け入れる程度がどう異なるのかを分析したとのこと。
また、実際に「AIが生成した音楽プレイリスト」を宣伝するFacebook広告キャンペーンを用いた実験も行われました。この広告キャンペーンはアメリカで実施され、2020年の投票データに基づいて各地域を「リベラル」または「保守」に分類し、地域によって広告のクリック率がどう異なるのかが調査されました。

分析の結果、保守派は新しいテクノロジーに対して懐疑的だという考えに反し、一貫して「保守派はリベラル派よりもAIによるオススメを受け入れる可能性が高い」という傾向がみられました。また、保守派がAIによるオススメを好む傾向はサービスの種類を問わず、Facebook広告キャンペーンを用いた実世界での調査でも、保守派寄りの地域でクリック率が高いことが確認されました。
ある実験では、保守派と強く結びつけられている「変化への抵抗」と「一貫性への志向」という特性が、保守派がAIによるオススメに従いやすい理由を統計的に説明することが判明。AIによるオススメがユーザーの好みと矛盾していたり、新しくなじみのないサービスから提供されたりした場合、政治的イデオロギーによる違いは消失しました。
また、被験者に「過去の視聴履歴のみに基づいてオススメの音楽を表示するアプリ」と「斬新で予想外の音楽をオススメするアプリ」のどちらかを選んでもらう実験では、保守派は過去の視聴履歴に基づいたオススメを表示するアプリを選ぶ傾向が有意に高くなりました。一方、リベラル派はほぼ半々に分かれたとのことです。

今回の結果から、保守派の人々は一貫性となじみがある体験を好む傾向が強く、これによって過去の履歴や好みに基づいたオススメを提案するAIを受け入れやすいことが示唆されています。その一方で、今回の研究はあくまで日常的な消費行動というリスクが低い状況に焦点を当てているため、医療や自動運転車といったリスクの高い状況でも同様の反応がみられるかは不明です。
心理学系メディアのPsyPostは、「今後の研究では、これらのパターンが政治的なメッセージや金融アドバイス、または公衆衛生への介入など、他の分野へどのように拡大するのかを調査することが可能です。また、人々がAIベースのシステムと触れ合う経験を重ねるにつれ、これらの好みがどのように変化するのかを検討することも有用です」と述べました。
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