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イーロン・マスクとxAIを共同創業したエンジニアリングチームリーダーが退社


xAIの共同創業者であるイゴール・バブシュキン氏が、同社を退社すると発表しました。バブシュキン氏はxAIのエンジニアリングチームを率い、創業からわずか数年で同社をシリコンバレー有数のAI企業に成長させることに貢献してきました。

Co-founder of Elon Musk's xAI departs the company | TechCrunch
https://techcrunch.com/2025/08/13/co-founder-of-elon-musks-xai-departs-the-company/

2025年8月14日、バブシュキン氏は自身のX(旧Twitter)アカウントを更新し、xAIを退社することを発表しました。


バブシュキン氏が退社を発表したポストの内容は以下の通りで、xAIでの思い出を語りながら、xAIの同僚とマスク氏を称賛し、最後に自身のベンチャーキャピタルであるBabuschkin Venturesを設立すると発表するものとなっています。Babuschkin Venturesは「人類の発展と宇宙の謎の解明」に貢献するスタートアップを支援するとしています。


「今日は2023年にイーロン・マスクと共に立ち上げに携わったxAIでの最後の日でした。イーロンと初めて会った日のことを今でも覚えています。AIと未来の可能性について何時間も語り合いました。私たちは2人とも、これまでとは異なる使命を持つ新しいAI企業が必要だと感じていました。

人類の発展に貢献するAIの開発は、私の生涯の夢でした。ソ連崩壊後、両親は子どもたちにより良い生活を与えようとロシアを離れました。移民としての生活は、必ずしも楽なものではありませんでした。困難にもめげず、両親は人間の価値、つまり勇気、思いやり、世界を理解しようとする好奇心といった価値はかけがえのないものだと信じていました。子どもの頃、私はリチャード・ファインマンマックス・プランクといった科学者に憧れていました。彼らは宇宙を理解するために物理学の限界を果敢に押し広げました。欧州原子核研究機構(CERN)で素粒子物理学の博士課程に在籍していた私は、その使命に貢献できることに興奮していました。しかし、新しい物理学の探求はますます困難になり、ますます巨大な衝突型加速器が必要になり、一方で新たな発見は減少していきました。そこで私は、大型衝突型加速器ではなく、超知能こそが宇宙の謎を解き明かす鍵となるのではないかと考えるようになりました。AIは量子重力の一貫した理論を構築できるでしょうか?AIはリーマン予想を証明できるでしょうか?2023年の初め、私は超知能の実現に近づいていると確信しました。AIがもうすぐ人間のレベルを超えて推論できるようになる、という予兆はありました。どうすればこの技術を善のために活用できるでしょうか?イーロンは長年、強力なAIの危険性について警告していました。イーロンと私は、AIを人類の利益のために活用するという共通のビジョンを持っていることに気づき、志を同じくするエンジニアをさらに募集し、xAIの構築に着手しました。

xAIの創業当初は容易ではありませんでした。反対派からは、AI業界に参入するのが遅すぎたため、一からトップクラスのAI企業を立ち上げるのは不可能だと言われました。しかし、私たちは不可能を可能にすると信じていました。ゼロから会社を立ち上げるには、多くの実践的な作業が必要でした。当初、私はトレーニングジョブの起動と管理に使用する基盤ツールの多くを構築しました。その後、インフラストラクチャー、製品、応用AIプロジェクトなど、会社のエンジニアリングの多くを監督しました。xAIの社員は非常に献身的です。血と汗と涙を流し、私たちのチームは驚異的なスピードでメンフィス・スーパークラスター(AIトレーニング施設)を構築し、どの企業よりも早く最先端のモデルをリリースしました。私はイーロンから2つの貴重な教訓を学びました。1つ目は、恐れることなく袖をまくり上げて技術的な問題に自ら取り組むこと、2つ目は異常なほどの緊急性を持つことです。

xAIは驚異的なスピードで業務を進めています。業界のベテランたちは、メンフィス・スーパークラスターを120日で構築するのは不可能だと言っていました。しかし、私たちは不可能を可能にすると信じていました。目標は、メンフィス・スーパークラスター上でトレーニングセットアップをできるだけ早く大規模に実行することでした。120日の期限が近づくにつれ、マシン間のRDMA通信で不可解な問題が次々と発生しました。イーロンはデータセンターへ飛ぶことを決め、私たちもそれに従いました。インフラチームは真夜中にメンフィス・スーパークラスターに到着し、すぐに作業に取り掛かりました。何万行ものlspci出力を徹底的に調べた結果、問題の根本原因はBIOS設定の誤りにあることが分かりました。イーロンは夜遅くまで私たちと一緒にいました。トレーニングの実行がようやく成功したとき、イーロンは午前4時20分に私たちの勝利を投稿し、私たちは大笑いしました。あの夜のアドレナリンの奔流と、私たち全員が同じ道を歩んでいるという心の絆は決して忘れません。私たちは、人生で最も爽快な時間を過ごしているような気分で就寝しました。

xAIの全員に、心からの愛情を注いでいます。私たちのチームは本当に特別な存在です。皆さんは、私がこれまで一緒に働いた中で最も献身的な人たちです。これほど急速に最先端技術に追いつくのは容易なことではありません。しかし、全員の不屈の精神とチームスピリットのおかげで、それは可能になりました。この冒険に共に参加してくれたすべての方々に感謝します。皆さんの貢献、時間、そして決して容易ではない犠牲に敬意を表します。夜遅くまで共に働き、徹夜で働いたことは、いつまでも忘れません。皆さんの犠牲と貢献は決して忘れません。今日、車を走らせながら、子どもを大学に送り出し、誇り高い親になったような気持ちです。会社が成長し、成熟していくことを心から応援し、胸が喜びの涙でいっぱいです。

新たな章へと向かう中で、両親が子どもたちのためにより良い世界を求めて移住した姿にインスピレーションを受けています。最近、Future of Life Instituteの創設者であるマックス・テグマーク氏と夕食を共にしました。彼は幼い息子たちの写真を見せながら、『子どもたちが成長できるよう、AIを安全に構築するにはどうすればいいでしょうか?』と尋ねてきました。私は彼の問いに深く心を打たれました。キャリアの初期には、DeepMindのStarCraftエージェント『Alphastar』のテクニカルリードを務め、強化学習がスケールアップ時にどれほど強力になるかを目の当たりにしました。最先端のモデルがより長い期間と幅広いタスクにおいてエージェント化していくにつれ、より強力な能力を発揮するようになり、AIの安全性を研究し、発展させることがますます重要になります。私は、人類にとって安全で有益なAIを実現するという使命をこれからも追求していきたいと考えています。そこで、AIの安全性研究を支援し、人類の発展と宇宙の謎の解明に貢献するAIおよびエージェントシステムのスタートアップ企業を支援するBabuschkin Venturesの設立を発表します。チャットをご希望の場合は、[email protected]までご連絡ください。シンギュラリティは近づいていますが、人類の未来は明るいです!」

バブシュキン氏はxAIでの思い出を語りながら、xAIの同僚とマスク氏を称賛し、最後に自身のベンチャーキャピタルであるBabuschkin Venturesを設立すると発表しています。Babuschkin Venturesは「人類の発展と宇宙の謎の解明」に貢献するスタートアップを支援するとしています。

過去数カ月、xAIはAIチャットボットのGrokをめぐる数々のスキャンダルに巻き込まれてきました。2025年7月にはGrokが物議を醸す質問に答える際に、マスク氏の個人的な意見を引用していたことが判明。

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他にも、2025年8月にはGrokの画像生成機能であるImagineで、著名人のヌード画像などが生成できてしまうことが問題視されています。

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なお、バブシュキン氏はxAIを立ち上げる以前、DeepMindの研究チームに所属し、2019年にはStarCraftのトッププレイヤーに勝利できる画期的なAIシステムである「AlphaStar」を開発しました。その後、バブシュキン氏はChatGPTをリリースする前の数年間にわたって、OpenAIで研究者としても働いています。

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by Marco Verch Professional Photographer and Speaker

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in ソフトウェア, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article xAI co-founder and engineering team lead….