酒は本来即禁止されるぐらい害があるのになぜいまだに飲まれ続けているのか?

「酒は百薬の長」といいますが、実際のところは過度のアルコール摂取が体に害を及ぼすことは周知の事実。アルコールを過度に摂取することがなぜ健康に悪いのかを、科学系の話題をアニメーションで説明するYouTubeチャンネル「Kurzgesagt」が解説しています。
Alcohol is AMAZING - YouTube

酒に含まれるアルコールは、基本的に酵母が糖を分解して変換してできたものです。

酒を飲むと、胃や腸でアルコール分が吸収されます。

吸収されたアルコール分は肝臓で分解されます。

そして、アルコールは中枢神経系に対して抑制的に作用します。具体的には神経を落ち着かせる作用を持つGABAの作用を強めます。

そのため、アルコールを飲むと幸福感に包まれ、安らかな気持ちになります。泣いたり笑ったりと感情を他人に見せることをいとわなくなり、コミュニケーション能力も向上します。

交流関係が広い人の中には飲酒が習慣づいている人も多くいます。

アルコールが肝臓でアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドは人体にとって有害な物質です。本来であればアセトアルデヒドはさらに肝臓で酢酸に分解されるのですが、酒量が多く分解が間に合わないと、アセトアルデヒドが血流に乗って全身に回ってしまい、細胞やDNAに損傷を与えてしまいます。

特に、アセトアルデヒドのダメージによって脳内のニューロンが縮小し、神経回路が切断されることもあります。「若いうちに飲酒をするな」といわれるのはこのためで、脳の成長が未熟な時に飲酒をするのは、まるで固まる前のセメントを砕くようなものだとKurzgesagtはたとえました。

飲酒でよく指摘されるのががんのリスクです。

WHO(世界保健機関)のデータによれば、毎年74万人の人が飲酒を起因とするがんに罹患(りかん)しているとのこと。

そして、飲酒を起因とするがんによる死亡者数は毎年40万人。

もちろんアルコールの分解を担当する肝臓にも負担がかかり、本来であれば分解できるはずの脂肪がたまってしまい、脂肪肝につながる可能性もあります。

Kurzgesagtによれば、1日の飲酒量で健康悪化のリスクを及ぼすのは、5%のビールだと330mlを超えたあたりだとのこと。

しかし、過去の研究によれば、平均的な男性の1日当たりの酒量はワインだとグラス3杯、ビールだと1リットル、蒸留酒(スピリッツ)だと120mlほど。

女性の場合はワインがグラス2杯、ビールだと600ml、蒸留酒だと80mlほど。つまり、平均的な酒量は男女ともに健康悪化のリスクを抱えるレベルだというわけです。

2015年に収集されたヨーロッパのデータでは、アルコールを毎日取っていると答えた人は約50%。タバコやコカイン、大麻よりも依存性は高いといえます。

判断能力も大きく鈍るので、飲酒運転はもってのほか。毎年15万人が飲酒運転の犠牲でなくなっています。この15万人はお酒を飲んだから亡くなったのではなく、お酒を飲んで車を運転した人のせいで命を落とした人の数です。

そして、アルコール依存の人は暴力をふるったり暴言をはいたりと、過度に攻撃的になるケースがよくあります。

WHOのデータによれば、飲酒に起因する犯罪は年間10万件。

イギリスでは飲酒運転事故の発生件数は年間50万件で、酒で酔った人が暴れたことによる暴行事件は年間80万件。

さらに飲酒は自分だけでなく、子どもへの健康リスクもあります。妊婦が日常的にアルコールを摂取すると、胎児性アルコール症候群を引き起こす可能性が指摘されています。

そんなアルコール依存を示すのは、WHOによれば成人の14人に1人だとのこと。また、欧米に限ると20人に1人がアルコール依存であるそうです。

ただし、近年はZ世代で飲酒をする人が減っているといわれています。

2019年の研究で、12年生(16~17歳)で「酒を飲んだことがある」と答えた人は1996年から20年で25%減少していたとのこと。

この背景には、若い世代で人とのつながりが希薄になっていることが指摘されています。「ほぼ毎日友だちと会っている」と答えた12年生は40年間で48%も減少。

「異性とデートしたことがある」と答えた12年生も40年間で30%減少しています。なぜこのような傾向が生まれているのかについては、新型コロナウイルスの流行やSNSの発達などが理由として指摘されていますが、どれも科学的な裏付けがなく、はっきりとは説明できないのが現状です。

Kurzgesagtは「アルコールは何千年もの間、他者と人生を分かち合い、祝い、楽しむための強力なツールでした。しかし、人類はそこから脱却して新しい道を進もうとしているのかもしれません」と述べました。

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in サイエンス, 動画, Posted by log1i_yk
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