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AOLが34年間続いたダイヤルアップ接続サービスを終了すると発表

by Scott Schiller

アメリカの大手インターネットサービスプロバイダーであるAOLが、34年間にわたり提供し続けてきたダイヤルアップ接続サービスを2025年9月30日をもって終了すると発表しました。これにより、ダイヤルアップ接続サービスの関連ソフトウェアも提供されなくなります。

Dial-up Internet to be discontinued - AOL Help
https://help.aol.com/articles/dial-up-internet-to-be-discontinued


AOL announces September shutdown for dial-up Internet after 34 years - Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2025/08/aol-will-finally-end-1991-dial-up-internet-service-thats-older-than-smartphones/

ダイヤルアップ接続は、電話網を使って電話交換機を経由してネットワークに接続する方式で、ブロードバンド網が普及する以前には主流のネットワーク接続方式でした。固定電話回線を利用するため、複雑な回線工事が不要というメリットはあるものの、通信速度に限界があります。


AOLは「AOLは定期的に自社の製品とサービスを評価しており、ダイヤルアップ接続の提供を中止することを決定しました。このサービスはAOLのプランではご利用いただけなくなります」と述べており、ダイヤルアップ接続用ソフトウェアである「AOL Dialer」、および低速接続と古いOSに最適化されたウェブブラウザである「AOL Shield browser」の提供も9月30日をもって終了することを明らかにしました。

AOLの歴史は、1985年11月5日から提供開始されたコモドール64向けの「Quantum Link」にさかのぼるといわれています。Quantum Linkはコモドール64向けのオンラインサービス「PlayNET」が下敷きになっており、電子メールやファイル共有ライブラリ、オンラインのニュース配信、インスタントメッセンジャーの提供などが用意されていたほか、オンラインで遊べるゲームやオンラインカジノなどもあり、人気を博しました。

このQuantum Linkが1989年にAOLの前身である「America Online」に改名され、IBM PCユーザーでも利用可能になりました。


そして、America Onlineは1991年にAOL for DOS、1992年にAOL for Windowsを提供開始。無料ソフトウェアと会員ライセンスの無料トライアルを提供する戦略でユーザーを増やし、1993年9月には分散型のインターネット掲示板システム「Usenet」へのアクセス機能をサービスに追加したことで、さらにユーザー数が増加。加えて1997年にはAOLインスタントメッセンジャーが登場。無料で即時的な会話が可能なツールということで、ユーザー数をさらに伸ばしました。AOLインスタントメッセンジャーの歴史については、以下の記事でもまとめています。

Threads・Mastodon・Misskeyなど分散型SNS激動の時代にインスタントメッセンジャーの歴史から学べることとは? - GIGAZINE


1997年にはアメリカのインターネット接続世帯の約半数がAOLと契約しており、AOLの加入者数は2000年代初頭で2000万人を超えました。しかし、2000年からブロードバンドの普及が進むにつれて、AOLの加入者数は減っていきました。


アメリカの2022年度国勢調査結果によると、約17万5000世帯が依然としてダイヤルアップ接続サービスを通じてインターネットに接続しているとのこと。これらのユーザーの多くは、インターネットインフラの整備が進んでいない、あるいは設置費用が高額な地方に住んでいるとのこと。

ソーシャルニュースサイトのHackerNewsでは、ダイヤルアップ接続サービスがなぜ維持され続けたのかという事例が多く投稿されています。

2013年から2016年までインターネットサービスプロバイダーの相談窓口で働いていたというecshafer氏は「顧客の数社はまだダイヤルアップ接続を提供しており、その時点で数百人のユーザーがいました。彼らの多くはDSLさえ利用できないようなかなりの田舎に住む高齢者でした。しかし、ダイヤルアップ接続サービスは安定して利益を生んでいました。設備や回線はほとんどそのままで機能し、DSLやケーブル、光ファイバーなどの顧客よりも問い合わせの電話率がはるかに低かったからです」と述べています。

InitialLastName氏は「『@aol.com』のメールアドレスを使っていて、もし契約を続けなければそのアドレスは廃止されてしまうと考えて、実際には利用していないにもかかわらずAOLのダイヤルアップ接続サービスの契約に今でもお金を払っている人を少なくとも2人知っています」とコメント。

また、themadturk氏は「高齢者は、慣れ親しんだものを変えることにしばしば抵抗があります。母は2019年に介護施設に入るまでダイヤルアップを使い続けただけでなく、その数年前にWindows XPのマシンが壊れたときも、新しいPCのWindows 10をあらゆる点でXPのように見せかけ、動作するように私に頼んできました」と語りました。

AOLがダイヤルアップ接続サービスを停止しても、ダイヤルアップ接続サービス自体は完全に消滅せず、一部のインターネットサービスプロバイダーは引き続きサービスを提供しています。また、ダイヤルアップ接続でのデータ通信が可能な公衆交換電話網(PSTN)も記事作成時点ではまだ残っていますが、アメリカでもインターネットプロトコル(IP)を利用したIP電話網への移行が順次進んでいます。

IT系ニュースサイトのArs Technicaは、「AOLのダイヤルアップ接続サービスを使い続けている人は2025年9月末までに代替手段を見つけなければならず、代替手段がない地域に住む人々にとっては大きな課題になります。コストが上昇しても衛星通信や携帯電話サービスに乗り換える人もいる一方で、インターネットアクセスを完全に失う人もいるかもしれません。こうなると、ダイヤルアップ接続サービスは様々な制約を抱えながらも、34年間もその埋め合わせ役として機能してきました。今後は情報格差がさらに拡大することになるでしょう」とコメントしました。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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