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Internet Archiveがアメリカの連邦政府刊行物寄託図書館に指定されたことで何が変わるのか?


Internet Archive(インターネットアーカイブ)はウェブページのアーカイブ閲覧サービス・Wayback Machineを運営するほか、本やレコードなどの物理メディアの保管、デジタル書籍の貸し出しなどを行っているアメリカ・カリフォルニア州の非営利団体です。現地時間の2025年7月24日、Internet Archiveがアメリカ政府の刊行物を保管するFederal Depository Library(連邦政府刊行物寄託図書館)に指定されたことが発表されました。

Internet Archive Designated as a Federal Depository Library | Internet Archive Blogs
https://blog.archive.org/2025/07/24/internet-archive-designated-as-a-federal-depository-library/


SF-Based Internet Archive Is Now a Federal Depository Library. What Does That Mean? | KQED
https://www.kqed.org/news/12049420/sf-based-internet-archive-is-now-a-federal-depository-library-what-does-that-mean

アメリカの連邦政府刊行物寄託図書館プログラムは、特定の政府刊行物を図書館に配布することを命じた1813年の連邦議会合同決議に基づいたものです。連邦政府刊行物寄託図書館に指定された図書館は、政府刊行物のコピーを保管し、他の図書館との相互貸借や参照といったサービスを提供する義務を負います。


7月24日、カリフォルニア州選出のアレックス・パディヤ上院議員がアメリカ合衆国政府印刷局(GPO)に送付した(PDFファイル)書簡で、Internet Archiveを連邦政府刊行物寄託図書館に指定しました。アメリカの連邦法では、議会議員が最大2つの適格図書館を連邦政府刊行物寄託図書館に指定できると定められており、パディヤ上院議員はこの権利を行使したとのこと。

パディヤ上院議員はKQED公共放送社への声明で、「Internet Archiveのデジタルファーストなアプローチは、現代の連邦政府刊行物寄託図書館に完全に適合しており、デジタル化が進む環境において連邦政府刊行物へのアクセスを拡大します」「Internet Archiveは情報へのアクセスにおける数え切れないほどの障壁を打ち破ってきました。『あらゆる知識への普遍的なアクセス』を提供するという彼らの使命をさらに推進するために、この指定を与えることができて光栄です」と述べました。

また、Internet Archiveの創設者であるブリュースター・ケール氏は、「物理的な資料コレクションを保有しながら、インターネットの一部としてアクセスできるInternet Archiveのような組織の存在は、非常に喜ばしいことだと思います。これらの資料をWikipediaなどのサービスに統合することで、インターネットのエコシステム全体が強化され、デジタル学習者が政府資料へさらにアクセスできるようになるのです」と述べています。


連邦政府刊行物寄託図書館プログラムで配布される政府刊行物には、地図や環境報告書、健康調査、議会記録、新聞、書籍などさまざまなものが含まれます。ケール氏によるとこれらの記録は数百万ページにも及び、公共図書館のフロア全体を占有してしまうこともあるそうです。

実際、2020年にはサンディエゴ公共図書館が「所蔵する政府刊行物が膨大なスペースを占めているが、あまり利用されていない」ことを理由に、連邦政府刊行物寄託図書館としての地位を放棄すると発表しました。後に地元の抗議を受けてこの発表は撤回されましたが、占有スペースの関係でサンディエゴ市と無関係の文書は削除され、記事作成時点ではより小規模の厳選されたコレクションのみを維持しています。

政府刊行物を紙よりも圧倒的に小さいマイクロフィッシュマイクロフィルムに保存するという手法もありますが、これらの媒体はコピーが容易な代わりにアクセスが困難というデメリットがあります。GPOは2016年から政府刊行物のデジタル保存に取り組んでおり、政府記録のオンラインデータベースを運用しているほか、連邦政府刊行物寄託図書館プログラムのデジタル化も進めているとのこと。

連邦政府刊行物寄託図書館もGPOのデジタルアプローチに移行していますが、これまでに蓄積された膨大な文書をデジタル化するのは困難な道のりです。Internet Archiveは長年にわたって図書館やその他の学術機関のコレクションをデジタル化し、オンラインでホスティングする取り組みを支援してきた経験があり、そのノウハウが連邦政府刊行物寄託図書館プログラムにも役立てられる可能性があります。

また、Internet Archiveは政府の研究成果や出版物をまとめた無料のオンライン図書館であるDemocracy’s Libraryを2022年に立ち上げており、連邦政府刊行物寄託図書館への参加はこの取り組みも促進します。ケール氏は、「このプログラムに参加することで資料の出所に近づくことができ、より確実にInternet Archiveへ配信され、Internet Archiveの支援者や提携図書館の利用者がアクセスできるようになります」と述べました。


近年、Internet Archiveはアーカイブ活動の一部に関して法的課題に直面しています。Internet Archiveはパンデミックが起きた2020年、「全国緊急図書館」という名目でデジタル書籍の貸し出しにおける待機リストを廃止したところ、大手出版社4社から提訴されてしまいました。

結局この訴訟では出版社が勝訴し、Internet Archiveは50万冊の書籍を貸出リストから削除することとなりました。

インターネットアーカイブが出版社勝訴の影響で50万冊の書籍を貸出リストから削除 - GIGAZINE


また、Internet Archiveがオンラインで公開する数十万枚のレコードについても、ユニバーサルミュージックグループやソニー・ミュージックエンタテインメントなどの音楽レーベルが提訴しています。レーベル側が勝利した場合、損害賠償請求額は6億9300万ドル(約1030億円)に達する可能性があるとのこと。

インターネット・アーカイブVSレコード会社の訴訟は損害賠償請求額が約1000億円まで拡大、一方で和解の動きも - GIGAZINE


連邦政府刊行物寄託図書館に加わったことが、Internet Archiveの著作権訴訟に影響を与えるのかどうかは不明です。なお、政府刊行物は著作権の対象ではないため、Internet Archiveは著作権を気にすることなくデジタル化・アーカイブ・配布することが可能です。

ケール氏は、「デジタル時代になり、図書館が存在することや資料のコピーを長期にわたって保管することの意味を、私たちはようやく理解し始めたのだと思います。これらの資料を利用できるようにすることは、これまで以上に大事なのです」と述べました。

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