アメリカはドローンの製造や軍事利用で中国やロシアに遅れを取っており実戦に備えられていないとの指摘

現代の戦争ではドローンを使った爆撃が一般的なものとなりつつあり、ドローンの製造能力や操縦する兵士の訓練、運用のノウハウといった要素が戦争における鍵を握っています。アメリカの日刊紙であるニューヨーク・タイムズは、アメリカがドローンの製造能力や軍事利用において中国やロシアに遅れを取っていると指摘しました。
Drones Are Key to Winning Wars Now. The U.S. Makes Hardly Any.
https://www.nytimes.com/2025/07/13/business/drones-us-military-manufacturing-lags.html
アメリカのドナルド・トランプ大統領は2025年6月、商業ドローン市場で優位に立つ中国などへの依存度を減らすため、ドローンに関する能力強化に向けた複数の大統領令に署名しました。これを受けてピート・ヘグゼス国防長官は7月10日、ドローンの産業基盤強化に向けた投資などを定めた覚書を発表しました。
ヘグゼス氏は、時代遅れの規則や調達プロセスが、アメリカ軍の指揮官がドローンを購入したり、兵士を訓練したりするのを妨げていたと指摘。「敵対国が何百万機もの安価なドローンを生産している間、私たちは官僚主義的な煩雑な手続きに陥っていました」と述べています。
しかし、アメリカ軍のニーズを満たすのに十分な数のドローンを製造できる国内産業を育成するには、かなりの時間やコストがかかります。中国に本社を置くDJIは商用ドローンの世界販売台数シェアの約70%を占めており、その他のドローン企業の製造能力はDJIに遠く及びません。ドローン業界コンサルタント企業・UAS NEXUSのボビー・サカキCEOは、「DJIに匹敵する企業はありません。DJIは年間数百万機のドローンを製造できます。これはアメリカのどの企業よりも100倍以上多い量です」と指摘しました。
アメリカには約500社のドローン製造企業がありますが、その多くは製造・販売実績のないスタートアップであり、ドローンの年間生産台数は10万台未満だとのこと。これらの企業の創業者らは、アメリカ軍が国産ドローンを導入することを見越して製品開発を行っており、ヘグゼス氏が発表した方針によってその競争が激化するとみられます。

2025年6月、アメリカのドローン製造能力の向上と兵士のドローン戦能力向上を目的として、国防総省の資金提供を受けたアメリカのドローンメーカーとアメリカ軍による演習が行われました。演習は、「ドローンを指定された標的に突っ込ませるドローンメーカー側」と、「妨害電波を発する機械などを用いてドローンを阻止する兵士側」に分かれて行われました。なお、妨害電波を出しながらの訓練を人口密集地域で行うのは規制上の問題があったため、演習はアラスカ州フェアバンクスの南にある訓練場で実施されたとのこと。
演習に参加したドローンメーカーは、国防総省の資金提供を受けていましたが、演習では課題が浮き彫りとなりました。DragoonやAeroVironmentといったスタートアップが製造したドローンは、エンジンや航行の問題に見舞われたほか、兵士による妨害電波の影響も受けてほとんど標的にぶつかることができませんでした。
また、兵士側が用意した妨害装置の中にも効果を発揮しないものが多く、防衛側のドローン対策が十分でないことも示されました。演習に参加した第11空挺師団の非致死的効果部門の責任者であるスコット・スミス中佐は、ドローンが関与する紛争に備えるためにアメリカ人がどれほど努力しなければならないのかが、この演習によって強調されたと指摘しています。
演習で最も優れたパフォーマンスを発揮したドローンは、カリフォルニア州に拠点を置くスタートアップ・Nerosが製造したものでした。Nerosは戦争のまっただ中にあるウクライナにもオフィスを構えており、ウクライナで試験や開発を行っているとのこと。Nerosのドローン「Archer」は、兵士たちの妨害装置を無線周波数を切り替えることで回避し、兵士の頭上約3mでホバリングしてみせました。
Nerosは2025年だけで約6000機のドローンをウクライナに納入しており、一部のアメリカ軍幹部からDJIに代わる最良の選択肢と評されています。しかし、Nerosの工場では約15人の作業員が手作業でドローンを組み立てており、月産台数がわずか1500機にとどまっているとのこと。NerosのCEO兼共同創業者であるソレン・モンロー=アンダーソン氏は、生産能力を増強してDJIと競争したいと考えているものの、実現するのは難しいとの見方を示しています。モンロー=アンダーソン氏は、「DJIは世界中のどの企業よりもはるかに優れています。だからこそ、私たちがやっていることが重要なのです」と述べました。
アメリカのドローンメーカーはロシアとウクライナの戦争初期、ウクライナにハイスペックドローンの提供を行っていました。しかし、アメリカ製ドローンは壊れやすい上に不具合も多く、ロシアの妨害電波やGPS妨害技術を克服できていないことが報じられています。
ウクライナがアメリカ製ドローンは不具合だらけであまりに高価過ぎるとしてより安価な中国製ドローンに切り替え - GIGAZINE

ドローンによる爆撃はロシアとウクライナの戦争で使用されているほか、イスラエルも中国製のドローンを兵器化してパレスチナを攻撃しています。
Israel killing Gaza civilians with commercial drones, probe finds | Israel-Palestine conflict News | Al Jazeera
https://www.aljazeera.com/news/2025/7/14/israel-killing-gaza-civilians-with-commercial-drones-probe-finds
また、ウクライナのドローン開発メーカーであるSkyetonのロマン・クニャチェンコCEOは、欧州の防衛企業がウクライナの前線から離れた地域でドローンの「実戦テスト済み」の証明を偽造すると共に、ウクライナのドローン企業から独自技術を盗もうとしていると非難しました。
Ukrainian Drone Pioneer Warns Of European Firms Faking Combat Tests And Pilfering Tech Secrets
https://dronexl.co/2025/07/13/ukrainian-drone-pioneer-warns-european-firms-faking-combat-tests/
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