サイエンス

運動量や睡眠時間などの行動データをベースにトレーニングした基礎モデルを既存のモデルと組み合わせることでApple Watchで92%の精度で妊娠を検出することが可能に


Appleが支援する最新の研究は、運動や睡眠といった「行動データ」が、心拍数や血中酸素濃度といった従来の生体測定よりも強力な健康状態を特定するための情報となり得る可能性を示唆しています。さらに、これを証明するために「ウェアラブルデバイスから収集した行動データでトレーニングされた基礎モデル」を開発したところ、驚くほど優れたパフォーマンスが確認できました。

[2507.00191v1] Beyond Sensor Data: Foundation Models of Behavioral Data from Wearables Improve Health Predictions
https://arxiv.org/abs/2507.00191v1


Apple AI model flags health conditions with up to 92% accuracy - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2025/07/10/study-apple-ai-model-flags-health-conditions-with-up-to-92-accuracy/

研究チームはウェアラブルデバイスで収集された25億時間以上の行動データを用いて、新しい基礎モデルをトレーニングしました。この「ウェアラブルデバイスが収集する行動データをベースとした基礎モデル」は、「心拍数センサーなどが出力するセンサーデータに基づく既存モデル」に匹敵する性能を発揮できることが明らかになっています。

研究チームは「ウェアラブルデバイスが収集する行動データをベースとした基礎モデル」を「ウェアラブル行動モデル(WBM)」と呼んでいます。従来の健康関連の基礎モデル(PPGモデル)は、Apple Watchの心拍数センサーや心電図といったセンサーからの生データに頼っていたのに対して、WBMは歩数・歩行安定性・可動性・最大酸素摂取量といったこれまで活用されていなかった行動データをトレーニングに利用しています。この種の「これまで利用されてこなかった高次の行動データ」を、Apple Watchは多数生成します。


スマートウォッチやフィットネストラッカーのセンサーデータはノイズが多く、膨大な量となるため、必ずしも意味のある健康データと一致するとは限りません。しかし、「高次の行動データ」はセンサーから導出された慎重に検証されたアルゴリズムを使用して計算されたものであり、「個人の行動に敏感である」という点で非常に重要です。例えば、歩行の歩様や全体的な活動レベルを特徴付けるモビリティ指標は、妊娠などの変化する健康状態を検出するのに役立つ重要な行動要因となる可能性があります。

WBMが使用する指標はセンサーデータに基づいていますが、データは現実世界の行動や健康に関連する傾向を浮き彫りにするため精緻(せいち)化されています。より安定しており、解釈が容易で、長期的な健康傾向をモデル化するために構造化されています。つまり、WBMはセンサーデータに直接依存するのではなく、処理された行動データの中で見つかったパターンをベースに学習するわけです。


WBMは16万1855人から収集したApple WatchおよびiPhoneのデータを用いてトレーニングされました。WBMではセンサーデータを直接利用するのではなく、活動エネルギー、歩行速度、心拍変動、呼吸数、睡眠時間など、人間が解釈可能な27の行動指標がトレーニングデータとして利用されました。

データは週単位のブロックに分割され、Mamba-2上に構築された新しいアーキテクチャを通過します。このアーキテクチャは従来のTransformerよりも優れたパフォーマンスを発揮します。


健康関連タスクで評価したところ、WBMは47の静的健康予測タスク(ベータ遮断薬の服用の有無など)のうち18で、強力なPPGベースのモデルを上回りました。また、妊娠、睡眠の質、呼吸器感染症の検出など、動的タスクではひとつを除くすべて既存モデルのパフォーマンスを上回っています。なお、PPGモデルがより優れたパフォーマンスを発揮したのは「糖尿病」です。

さらに、WBMとPPGの両方のデータ表現を組み合わせることで、全体的に最も正確な結果が得られています。このハイブリッドモデルは、妊娠検出において驚異の「92%」という精度を達成しています。また、睡眠の質、感染症、怪我、心房細動の検出といった心血管関連のタスクにおいても、着実な改善を示しました。

以下のグラフは健康予測タスクの予測精度を示したもので、青色がWBM、赤色がPPG、紫色がWBM+PPGの予測精度を示しています。


なお、WBMのようなモデルは長期的な行動シグナルを捉えることができます。一方、PPGモデルは短期的な生理学的変化を捉えることが可能です。これらを組み合わせることで、これまでよりも重要な健康状態の変化を早期に察知できるようになります。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by logu_ii

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