尿から作るバイオコンクリートとは?

研究者らが、尿の成分を材料とする建築材料を開発しました。廃棄物を有効活用できるほか、生産時に発生する温室効果ガスを抑えられる環境上の利点があります。
High strength bio-concrete for the production of building components | npj Materials Sustainability
https://www.nature.com/articles/s44296-023-00004-6

Bio-concrete from urine: Researchers develop sustainable building material
https://techxplore.com/news/2025-05-bio-concrete-urine-sustainable-material.html
ドイツにあるシュトゥットガルト大学の研究者たちは新しい種類の建築材料である「バイオコンクリート」の開発に注力しています。バイオコンクリートは微生物などを使ったコンクリートのことで、生物の治癒特性を利用して自己修復を行うのが特徴です。
通常のコンクリートは非常に頑丈な建築材料ですが、雨風や時間の経過によって亀裂が入り始めることがあります。この亀裂がさらに広がり、水などが内部の鉄筋材料にゆっくりと侵食することで、コンクリートはもろくなっていきます。
2016年初頭、オランダのデルフト大学所属の微生物学者ヘンク・ヨンカーズ氏は、通常のコンクリートに細菌とカルシウム乳酸カプセルを混ぜ込んだ、自然の自己修復能力を活用する自己修復型コンクリート製品の開発に成功しました。
このコンクリートの亀裂に水分が侵入すると、カルシウム乳酸の生分解性プラスチック殻が分解され、カルシウム乳酸により活性化された細菌がカルシウム乳酸を消費して石灰石を生成します。この石灰石が膨張し、水によって生じた亀裂を埋めることで、コンクリートを修復するというものでした。
このようなバイオコンクリートを風雨にさらされる建物やメンテナンスしにくい場所にある建物に使うことで、建物の維持費を節約できるようになると期待されています。

シュトゥットガルト大学の研究者らがバイオコンクリートの材料に選んだのは、人間の尿でした。
研究者らによると、細菌を含む粉末と砂に人間の尿を混ぜることで、細菌による尿素の分解と尿へのカルシウム添加が行われ、カルシウムの結晶が成長するとのこと。これが詰め物の役割を果たし、バイオコンクリートとして成長するそうです。
研究者らが工業用尿素を使ってバイオコンクリートを製造したところ、50メガパスカルを超える圧縮強度を達成し、従来のバイオコンクリートの強度を大幅に上回ることに成功したとのこと。研究者は「30~40メガパスカルあれば、2~3階建ての建物を建設するのに十分です」と語っています。
ただし、人間の尿を模した材料「人工尿」では20メガパスカルになり、実際の尿では5メガパスカルに落ちました。これは、時間がたつにつれて細菌の活性が失われるためだと研究者らは指摘しています。
尿を使ったバイオコンクリートは、焼成の際の温度を低くできるという利点と、尿に既に水が含まれているため追加の水が不要だという利点があります。研究者らは今後、バイオコンクリートの新たな素材として尿を活用する道を開くため、屋外で使用可能かどうかを判断するための凍結融解試験を行うとのことです。実現すれば、空港のような人出の多い場所で排水された尿を分離・処理し、バイオコンクリートの原料として利用することができるようになるかもしれないと期待されています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr
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