読者がミステリー作品を新鮮に楽しむのを難しくする要素とそれを克服する工夫とは?

事件や謎が発生し、名探偵や警察が捜査や推理をして解決するというミステリー作品は、100年以上愛されているジャンルです。基本的に「謎の出題と回答」というギミックを必要とするため差別化が難しそうな中で、どのようにして読者に新鮮な感覚を与えることができるか、どのような要素がミステリー作品を新鮮に楽しむことを難しくしているかについて、作家のリザ・タリー氏が分析しています。
The Murder Mystery: Keeping It Fresh ‹ CrimeReads
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タリー氏は初めて殺人ミステリーを執筆していた時に、「既に事件の謎と解決というアイデアは枯渇しており、独創性を新たに生み出すのはほぼ不可能だと考える人がいるのも無理はないにもかかわらず、ミステリー作品への需要は衰えることなく、むしろ高まっているように見える。作家はどのように新しい感覚を与える作品を生み出しているのだろうか?」と疑問に感じたことから、ミステリー作品の重要な要素について分析したとのこと。
まず、ミステリー作品の特徴として、ほとんどの場合特殊な種類の「犯罪」があり、何らかの「動機」を持った「犯人」が犯罪に対して「隠ぺい工作」を行います。そして、その隠ぺい工作は「捜査」によって解き明かされ、犯人と動機が明らかになります。

ほぼ決まった枠組みがある中で、「犯人」や「被害者」にどのようなキャラクターを配置するかという点で、驚きや意外性を生むことができます。また、「犯罪」の中身や「隠ぺい工作」もしくはトリックの内容も、作者のアイデアや工夫の見せ所になります。
一方で、「動機」においては作家に与えられる選択肢ははるかに少ないとタリー氏は指摘しています。イギリスのミステリー作家であるP・D・ジェイムズ氏が生んだ名探偵のアダム・ダルグリッシュ警視は、作中で「殺人の動機はすべて4つの『L』で表せる。愛(Love)、欲望(Lust)、利己的利益(Lucre)、そして嫌悪(Loathing)だ」という言葉を残しています。 また、犯罪心理学教授のエリック・W・ヒッキー氏は著書「Encyclopedia of Murder and Violent Crime」の中で、現実の殺人犯の動機を「組織による殺人」「個人的な理由による殺人」「性的殺人」「集団殺人」と分類しており、あまりバリエーションがないことを示しました。
犯罪の動機がそれほど多様にならない理由として、タリー氏は「動機は人間の心から湧き出るものであり、それは時代を超えてほとんど変化せず、地理的な場所や集団を超えて驚くほど一貫しているからです」と述べています。さらに、ミステリー作家は「心がどのように狂っていくのか」「普通の感情がどのように乱れて法を順守する気持ちを失わせるのか」ということに関心が寄るため、さらに視野が狭くなっている可能性があるそうです。

動機は時代を超えてある程度一貫するものであると同時に、細かいところでは時世を直接反映しやすいものでもあります。例えば、同じ「個人の欲望」であっても、現代特有の階級差を原因としたり、ソーシャルメディアのインフルエンサーに憧れた10代の少女の欲望にしたりすることで、現代の読者の心に新鮮に響かせることができます。「読者自身が変化し続ける社会で感じ、目撃し、心配していることに少しでも近づけるように設定することこそが、ミステリー作家が読者を惹きつける強力な方法の一つだと私は考えています」とタリー氏は語りました。
ミステリーの多くの要素は、創意工夫と即興の余地を作家に与えてくれますが、動機という肝心な要素に関しては、現実に即した解釈以外は困難です。だからこそ、現代において人々の心がどのような危険にさらされているかに気付くことが、新鮮なミステリー作品を作るコツになるとタリー氏は述べています。
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