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Automatticのマット・マレンウェッグCEOがWordPressをめぐって争った理由を語るインタビュー


オープンソースのコンテンツ管理システム「WordPress」の共同開発者であるマット・マレンウェッグ氏が、WordPressで構築された商用ホスティングサービス「WP Engine」を公に非難したことで、コミュニティはWordPressの管理者としての立場上マレンウェッグ氏の行動はふさわしくないと反発し、WordPressコミュニティに大きな影響をもたらしました。訴訟にまで発展しているこの件について、なぜこのような決定を下したのか、マレンウェッグ氏本人が語りました。

Why Matt Mullenweg went to war over WordPress | The Verge
https://www.theverge.com/decoder-podcast-with-nilay-patel/693052/automattic-ceo-matt-mullenweg-wordpress-drama-wp-engine-open-source

2024年9月、WordPressのイベント「WordCamp US 2024」に登壇したマレンウェッグ氏は、自身が創設した企業・Automatticと、WordPressを利用した商用ホスティングサービス「WP Engine」を比較し、「両社はWordPressの持続的な成長を支えるという誓約を交わしたにもかかわらず、WP Engineの貢献はごくわずかである」と指摘。具体的には、AutomatticがWordPressに週3900時間を費やしているのに対してWP Engineはわずか40時間であること、両社ともに5億ドル(約720億円)近くの収益を上げているのにWordPressへの投資額に明確な差があることなどを列挙し、「WP EngineはWordPressの癌(がん)である」と痛烈に非難しました。


マレンウェッグ氏は、投資コストの違いに加え、WP Engineが利益を追求してWordPressの重要な機能を無効にしている点、WP EngineがWordPressの公式サービスであるかのように誤解させている点も問題だと指摘し、Automatticを通じて、WordPress商標の使用停止命令書をWP Engineに送付しました。

加えて、マレンウェッグ氏はWordPressに対するWP Engineからのアクセスをブロックすると発表しており、「オープンソースプロジェクトで大金を稼いでいる企業は還元するべきであり、しないのであれば商標を使用するべきではない」と述べ、WP Engineを徹底的にブロックする姿勢を見せました。

こうしたマレンウェッグ氏の主張にWP Engineは反発し、商標使用料の要求は恐喝未遂や名誉毀損(きそん)、不正競争などの法律違反に当たるなどとしてAutomatticとマレンウェッグ氏を提訴。さらにWordPressへのアクセス権回復を求めて裁判所に申立書を提出しました。後者の主張は2024年12月10日に認められており、WP Engineのアクセス権回復を求める仮差し止め命令が下されています。この影響で、WP Engineを利用するサイバーセキュリティ企業・SecureSightの経営者であるライアン・ケラー氏がWP Engineの顧客を代表した集団訴訟を提起するなど、影響は各方面に広がっています。


この件を含め、テクノロジー系メディアのThe Vergeがマレンウェッグ氏にインタビューを行いました。

The Verge:
あなたは、WordPressのホスティングサービスであるWP Engineがオープンソースにタダ乗りしていると判断し、彼らとの関係を断つことを決めました。WP Engineと対立するという決断は、チームの決定だったのか、それともあなたの個人的な決断だったのでしょうか?

マレンウェッグ氏:
コミュニティのフィードバックを多く反映したチーム決定でした。しかし、私はすべてに責任を負っています。「多くの人がオープンソースの精神と相容れないように見える一方的な決定を下した」と感じた点について、もし人々が不満を抱えているなら、私を追及すべきです。

私はWordPress.orgとWordPressに定期的に貢献する数万人の人々に対して大きな責任を感じています。私は、批判や憎悪の的となる焦点となる責任があります。したがって、WordPressのコードを実際に書いている開発者や、これらの反対意見を浴びるべきでない人々は私のようになる必要はありません。私は彼らのために批判を引き受けます。

The Verge:
私にとってこの紛争は典型的なオープンソースのフリーライダー問題のように見えます。大きな活気あるオープンソースエコシステムがあり、誰かがそれを利用するだけして、ホスティングを販売し、もしかしたら本家のプロジェクトより良いレベルの顧客サポートを提供しているかもしれません。彼らは本家プロジェクトに資金を提供せず、プロジェクト全体をフリーライダーとして利用しているのです。抽象的に言えば、これはオープンソースコミュニティ全体で常に起こってきた問題です。一般的には「それがオープンソースの代償だ」という意見が主流ですよね。

マレンウェッグ氏:
WordPressの未来に脅威や害を及ぼすとは思えない企業は数え切れないほど存在します。私が狂っているとか、正気を失っているとか言われるかもしれませんが、長いキャリアの中で今回のようなことがほとんど発生していないことと、もちろんすべてが公にされているわけではないことを強調したいと思います。私は、もし本当にコミュニティにとって大きな脅威だと感じたら立ち向かいます。しかし、私たちはそのようなことが全く起こらないように運営するよう努めています。

他のオープンソースプロジェクトで、商業的利益がプロジェクトの活力を奪った例は、探せばすぐに見つかります。例えば、WordPress.orgのディレクトリ(アプリストアのようなもの)では物を直接購入できません。開発者から直接購入する必要があります。ワンクリックで購入できるようなシステムはありません。

これは実は非常に複雑なインセンティブの仕組みです。他のオープンソースプロジェクトが同様の取り組みを早期に実施しましたが、そのコミュニティではコアソフトウェアとアドオンの両方において、個々の開発者が独自に活動する協力的な性質が変化しました。例えば、あなたと私がプラグイン開発者だと仮定しましょう。私がより良いウィジェットを作成し、あなたが別のウィジェットを持っているとします。WordPressでは、よく次のようなことが起こります。「あなたのウィジェットはクールだね。一緒に組み合わせよう」と提案し、プラグインを統合します。または「これはコアに組み込むべきだ。一緒に開発して、提出しよう。みんなが使えるようにしよう」と提案します。

もしあなたと私がそのウィジェットを販売するなら、それぞれまとまった金額を稼げるかもしれません。私たちは「オープンソース化したり、互いに協力したりしないという」約束を結ぶでしょう。しかし、この状況を数年続けていくと、ユーザーはそれぞれの機能ごとに小さな料金を請求されるような感覚を抱くようになります。これによりコアソフトウェアは衰退する可能性があります。なぜなら、最高の開発リソースがこれらの拡張機能に注ぎ込まれ、コアが空洞化してしまうからです。


The Verge:
以前、あなたは「WordPress.orgは私個人が所有している」と発言しましたよね?

◆マレンウェッグ氏
発言を後悔しています(笑)。この発言は何度も文脈から切り離されて使われてきました。最悪の発言でした。なぜ発言したのかというと、インタビュワーが具体的な所有権について尋ねていたからです。例えば、「どの法人が所有しているのか」と。それはサイトの運営方法、意思決定の仕方、コードの仕組みなどとは全く異なる問題です。

WordPress.orgの運営方法や仕組みを見れば、数万人の人々が関与する成果物であることは明白です。そのため、私がすべての決定を下しており、WordPressが私だけのものだと誤解されたことは非常に残念でした。その点については本当に後悔しています。多くの人が文脈から切り離して「このプロジェクトが個人に依存するのは問題だ」と主張しています。


The Verge:
しかし、実際に結果として起きています。あなたはWordPressのプラグインリポジトリと更新リポジトリであるWordPress.orgを所有しており、あなたは他社のアクセスを遮断できます。これがWP Engineに起こったことです。

マレンウェッグ氏:
逆転しましたけどね。私の権限は、どうやらそれほど大きくないようです。今回は道徳的な紛争、商業的な紛争を抱えていました。

The Verge:
この紛争が解決されるまで、どれくらいかかると思いますか?裁判で決着するのでしょうか?和解するのでしょうか?

マレンウェッグ氏:
答えられたらいいのですが。私は本当に、本当に、可能な限り最も協力的でオープンなWordPressに戻りたいと思っています。WP Engineは素晴らしい人材の集まりです。多くの満足した顧客を抱えています。彼らはWordPressの成長と活用に多くの貢献ができるはずです。だから、私は楽観的です。

私たちは素晴らしい信頼できる弁護士と協力できて幸運ですが、私の関心は製品とエンジニアリングにあります。私はその部分に時間を費やせるように戻りたいと考えています。Automatticで20年間働いてきて、週末を含め、コアのWordPressや他のオープンソースプロジェクトに関する作業を一切行わなかった日はほとんどありません。正直、私は生涯オープンソースを続けるしかないと思います。

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in Posted by log1p_kr

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