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Metaのマーク・ザッカーバーグは最も優秀なAIエンジニア&研究者をまとめた「ザ・リスト」をベースに引き抜きを画策している


Metaのマーク・ザッカーバーグCEOはAI分野で最も才能のあるエンジニアや研究者を集めたリスト、通称「ザ・リスト」をベースに競合他社から優秀な人材の引き抜きを画策しています。このザ・リストの存在について、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。

It’s Known as ‘The List’—and It’s a Secret File of AI Geniuses - WSJ
https://www.wsj.com/tech/meta-ai-recruiting-mark-zuckerberg-openai-018ed7fc

Mark Zuckerberg’s secret list of top AI talent to poach has tech world atwitter | US news | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2025/jun/28/mark-zuckerberg-ai-list

ザ・リストに載っている人材は、カリフォルニア大学バークレー校やカーネギーメロン大学といった名門大学で博士号を取得した人材や、OpenAIやGoogle DeepMindといった大手AI企業で働いた経験のある人材が多く、大半が20~30代だそうです。


ザッカーバーグCEOはザ・リストに掲載されている人材を集め、約50人のスーパーインテリジェンスチームを構築することを目論んでいます。このスーパーインテリジェンスチームは、データラベリングサービスを提供するScale AIに対してMetaが148億ドル(約2兆1300億円)の投資を行う一環として設立される計画で、Scale AIのアレクサンダー・ワンCEOをトップに据える予定です。

MetaはScale AIのCEOであるアレクサンダー・ワン率いる「スーパーインテリジェンス(超知性)」の追求に特化したAIラボの構築を計画、OpenAIやGoogleからAI研究者を引き抜くべく数億~数百億円の報酬を用意 - GIGAZINE


ザッカーバーグCEOはスーパーインテリジェンスチームに採用する優秀なエンジニアや科学者を探すため、Metaの幹部2人と「リクルーティングパーティー」と呼ばれるグループチャットを作成し、そこで数百人の候補者および彼らにアプローチするための戦略(例えば、メール、テキスト、WhatsAppのどれで連絡を取るのが好みかなど)について話し合っているとウォール・ストリート・ジャーナルは報じています。

AI分野における優秀な人材たちは、これまでニッチだった分野で研究開発を進めてきた人たちであるため、自身の才能がこれほど高く評価されたことはほとんどないそうです。しかし、これからのAI市場でリードを確保するためには重要な人材であるとして、大手ハイテク企業の幹部や有力なベンチャーキャピタリストたちは、優秀なAI研究者たちを確保すべく躍起になっています。

AI分野における人材確保に注力していることで知られているのが、MetaのザッカーバーグCEOです。ザッカーバーグCEOはAI分野のスペシャリストを競合他社から引き抜くために、1億ドル(約140億円)の報酬を提示しているとOpenAIのサム・アルトマンCEOは示唆していますが、Metaのアンドリュー・ボズワースCTOはアルトマンCEOの発言を「不誠実」と非難しています。

MetaはOpenAIから主要なAI研究者を複数人引き抜き、独自の推論モデル構築を進めていることが報じられています。これについて、アルトマンCEOは「今のところ優秀な人材は誰も辞めていない」と主張していますが、OpenAIのエンジニアであるCheng Lu氏は人材の流出について「大きな損失」とXで投稿しています。なお、当該ポストは記事作成時点では削除済みです。

MetaがOpenAIの主要研究者を引き抜き、独自の推論モデル構築を加速 - GIGAZINE


なお、Metaが実際に人材登用に1億ドルの報酬を提示しているのか否かは不明ですが、「AI市場の現状とMetaの立ち位置を考えれば必要な投資だ」とテクノロジーメディアのSpyglassは指摘。

Metaから複数人の人材を引き抜かれたOpenAIですが、同社のマーク・チェン最高研究責任者はこの事態について、「誰かが家に忍び込んで盗みを働いたかのような感覚」とSlackで社員向けに送信したことが明らかになっています。また、チェン氏はアルトマンCEOらと従業員向けの報酬を再調整することで、引き抜きに対抗しようとしていることが報じられました

なお、このようなAI人材の争奪戦に備え、AnthropicおよびOpenAIは研究者をアクセス制限のある別々のフロアで作業させており、作業スペースではのぞき見防止のためにブラインドが下ろされていることも少なくないそうです。また、Anthropicは研究者が外国のスパイ活動の標的になることを懸念して、FBI捜査官を本社に招き、従業員向けにリスクの解説を依頼したこともある模様。

元OpenAIのイルヤ・サツキヴァー氏が立ち上げたSafe Superintelligenceでは、採用面接で対面面接まで進むと、携帯電話をファラデーケージ(通信信号を遮断する容器)に入れることが求められるそうです。

OpenAIの元主任サイエンティストであるイルヤ・サツキヴァーがAI企業「Safe Superintelligence」を設立 - GIGAZINE


Metaを初めとするAI企業が人材確保に多額の資金を投じている理由として、ウォール・ストリート・ジャーナルは「AI研究者のスーパーチーム構成にいくら金をかけても、データセンターなどのAIインフラを構築する費用には遠く及ばないため」と指摘しています。実際、Metaは2025年だけでAI分野に約700億ドル(約10兆円)を投じる計画ですが、AmazonやMicrosoft、Googleといった企業はそれ以上の投資を計画しており、「ハードウェアと比べると人間は割安」とウォール・ストリート・ジャーナルは表現しています。

なお、カリフォルニア大学バークレー校のアレクセイ・エフロス教授はAI研究者が移籍する理由は巨額の報酬ではないと語っており、「私の学生やポスドクにとって、目標は決してホットなことをして億万長者になることではありません。目標は、クールで、興味深く、重要で、未解決の問題を解決することです」と言及。そのような研究を行うには資金が必要となるため、必然的に高い資金力を持ったMetaやOpenAI、Googleといった企業に優れた人材が集まることになると持論を展開しています。

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in ソフトウェア, Posted by logu_ii

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