「我々は崖っぷちに立っている」と総勢70名の作家集団が出版社にAI使用の制限を求める公開書簡を送付

ローレン・グロフ氏、レヴ・グロスマン氏、R.F.クアン氏、デニス・ルヘイン氏などからなる70人の作家が、書籍出版社に対してAIの使用を制限することを求める公開書簡を発表しました。
Against AI: An Open Letter From Writers to Publishers ‹ Literary Hub
https://lithub.com/against-ai-an-open-letter-from-writers-to-publishers/

Authors petition publishers to curtail their use of AI : NPR
https://www.npr.org/2025/06/28/nx-s1-5449166/authors-publishers-ai-letter
Authors call on publishers to limit their use of AI | TechCrunch
https://techcrunch.com/2025/06/28/authors-call-on-publishers-to-limit-their-use-of-ai/
現地時間2025年6月27日、ローレン・グロフ氏やレヴ・グロスマン氏といった著名作家を含む70人が、世界最大の出版社であるペンギン・ランダムハウスやハーパーコリンズ、サイモン&シュスター、アシェット・ブック・グループ、マクミランなどの出版社に対して、AIの使用を制限するよう求める公開書簡を発表しています。

作家集団による公開書簡の内容は以下の通り。
我々は崖っぷちに立っています。最も単純なレベルで言えば、アーティストとしての私たちの仕事は、人間の経験に応えることです。しかし、私たちが作る芸術は商品であり、私たちの世界は物事を迅速かつ安価に、そしてオンデマンドで求めています。そのため、小説・伝記・詩・回想録、つまりは人間の経験の記録が、人間とは何か、血を流すこと、飢えること、愛することとは何かを理解できないAIモデルによって「書かれる」未来へと突き進んでいます。
AIは私たちの人間性を理解しているように見えるかもしれませんが、真実は人間だけが他の人間と会話し、理解できます。AIにプロンプトが入力されるたびに、ボットが応答に使う言語は、私たち作家がキャリアをかけて作り上げてきた芸術の統合によって作り出されたものです。しかし、これらは我々作家の同意なく、報酬もなく、謝辞さえもなしに、盗用されたものです。
我々は執筆活動において、自らの人生に着目してきました。両親の死、子どもの誕生、そして私たちが経験した、あるいは想像したあらゆる恋愛。人間の英雄的行為と堕落の物語。これらの物語は私たちから盗まれ、機械の訓練に利用されています。もし近視眼的な資本主義の強欲が勝利すれば、まもなく書店に並ぶ本を生み出す機械が生まれるのかもしれません。これが最終目的なのでしょうか?私たちを方程式から完全に排除し、資本主義構造の頂点にいる者たちが私たちの労働から今以上に利益を得ることなのでしょうか?このままでは作品が作家にもたらす収益は、作家ではなくAIを運用する誰かが得ることになります。
AIが生み出す文章は、安価であるがゆえに安っぽく感じられます。シンプルであるがゆえに、シンプルに感じられます。それがAIの本質です。AIは非常に強力なツールであり、今後も存在し続け、真の社会貢献をもたらす可能性を秘めています。しかし、芸術や芸術家の代替になることは、恩恵ではありません。
AIの提供者たちは、私たち作家だけでなく出版社からも作品を盗んできました。私たちが書いた本を大切に扱い、企画・出版してくれた、勤勉な編集者、コピーエディター、広報担当者、そして出版社の方々の仕事も危機に瀕しています。あらゆる段階で人間の手によって育まれてきた共同作業による芸術である出版という形態そのものが、危機に瀕しているということです。私たちの物語に命を吹き込んできたオーディオブックのナレーターたちは、すでに安価でシンプルなAIによって脇に追いやられています。さらに追い打ちをかけるように、AIの利用は大量のエネルギーと水を消費するため、環境にも壊滅的な影響を与えるでしょう。さて、これから何が起こるのでしょうか?
出版社には、私たちと共に立ち上がってほしい。機械によって作成された書籍を決して出版しないと誓ってほしい。人間のスタッフをAIツールに置き換えたり、人間のスタッフをAIの監視役のような地位に貶めたりしないでほしいです。

私たちは出版社に以下を誓約するよう求めます。
・作家から盗用したAIツールを使用して書かれた書籍を、公然とまたは秘密裏に出版することはありません。
・AI生成書籍を宣伝するために「著者」をでっち上げたり、人間の著者がペンネームを使用して著作物の盗作に基づいて作成されたAIが生成した書籍を出版したりすることを許可しません。
・出版書籍のデザインには、アーティストの作品を盗作して構築されたAIを使用しません。
・従業員の全部または一部をAIに置き換えることはありません。
・アーティストの作品を盗作することで構築されたAIによって生成された文章やアートの制作を監督する新しい役職は作成しません。
・アーティストの作品を盗作することで構築されたAIの監視役として、既存の従業員の職務記述書を書き換えることはありません。例えば、コピーエディターは、アーティストの作品のタイトルをコピー編集し続けるものの、AIのコピー編集「作業」を監視・修正することはありません。
・いかなる場合でも、ナレーターの音声を許可なくトレーニングに利用して構築されたAIツールによって生成された「ナレーター」ではなく、人間のオーディオブックナレーターのみを採用します。

著者として、私たちは出版社との今後の契約において、可能な限りこれらの信念を反映させるつもりです。
出版社の皆様には、私たちの芸術作品の盗難、そしてその盗難から利益を得ている低品質なAIによる作品に対し、著者のために公然と立ち上がるよう呼びかけます。これは、現在出版活動を行っている私たちだけの問題ではありません。出版を続けられるかどうかに関わらず、いつか作品を発表し、正当な報酬を得ることを夢見て、技術を磨き続けている新進気鋭の作家たちに、より多くの場を提供するのも私たちの義務だと考えています。私たちはこれまで常にアーティストの声を必要としてきたように、出版社の声を必要としています。皆さんには、私たちの作品の未来、そして未来作品を守る担い手になっていただきたいのです。
ご返答をお待ちしております。

NPRの報道によると、この公開書簡が公開されてから24時間以内に1100人以上が署名しています。書簡公開後に署名した著名人には、ジョディ・ピコー氏、オリヴィー・ブレイク氏、ポール・トレンブレイ氏などがいるそうです。
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in メモ, Posted by logu_ii
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