MetaがAIのトレーニングに書籍を使った訴訟で担当判事が訴えを棄却、ただし「Metaによる著作物の使用が合法」というわけではないと釘を刺される

FacebookやInstagramの開発元であり、独自AIのMeta AIなどを展開するMetaが、「AIトレーニングのために著作権で保護された書籍を利用した」として複数人の作家から訴えられていたのですが、裁判を担当するヴィンス・チャブリア判事が訴えを棄却しました。
ORDER DENYING THE PLAINTIFFS’ MOTION FOR PARTIAL SUMMARY JUDGMENT AND GRANTING META’S CROSS-MOTION FOR PARTIAL SUMMARY JUDGMENT
(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.cand.415175/gov.uscourts.cand.415175.598.0.pdf
Meta Beats Authors’ Copyright Suit Over AI Training on Books
https://news.bloomberglaw.com/legal-ops-and-tech/meta-beats-copyright-suit-from-authors-over-ai-training-on-books
Judge dismisses authors' copyright lawsuit against Meta over AI training | AP News
https://apnews.com/article/meta-ai-copyright-lawsuit-sarah-silverman-e77968015b94fbbf38234e3178ede578
コメディアンのサラ・シルバーマン氏や「ひとりひとりのやさしさ」の著者であるジャクリーン・ウッドソン氏、「世界と僕のあいだに」の著者であるタナハシ・コーツ氏を含む13人の作家グループが、「MetaがAIトレーニングのために著作物を盗んでいる」として、著作権侵害訴訟を起こしました。
OpenAIとMetaが著作権侵害で3人の作家から訴えられる - GIGAZINE

この裁判では、MetaのザッカーバーグCEOがLlamaの開発チームに「著作権で保護された書籍や文書を含むデータセットをLlamaの学習に用いることを承認していた」ことが追及されていましたが、Metaは「著作権保護されたデータをダウンロードすること自体は著作権違反ではない」と主張していました。
Metaのマーク・ザッカーバーグCEOがAI「Llama」の開発チームに対し著作権で保護された作品の無断使用を許可したと訴訟で追及される - GIGAZINE

この裁判の担当判事であるサンフランシスコ連邦裁判所のチャブリア判事は、現地時間の2025年6月25日に原告側の訴えを棄却しました。チャブリア判事は「原告側が誤った主張をした」と判断していますが、今回の判決は原告に限定されたものであり、この訴訟において、原告側は「MetaのAI(Llama)が原告の書籍の一部を再現できる」という点と、「Metaが許可なく作品をトレーニングに利用したことで、著者が大規模言語モデル用のトレーニングデータとして作品をライセンスする能力が低下した」という点を主張しています。
原告側はMetaが海賊版のオンラインリポジトリから著者らの本をダウンロードし、Metaの生成AIであるLlamaのトレーニングに利用することで「大規模な著作権侵害を引き起こした」と主張。原告側の弁護士は、「Metaはこれらの文学作品を購入し、ライセンスを取得するために代金を支払うことができたし、支払うべきだった」と指摘しました。
これに対して、Metaはアメリカの著作権法は「著作物を無許可でコピーして新しいものに変えることを許可している」として、Metaのデータ利用法はフェアユースに当たると主張。Llamaが生成する文章は、トレーニングに使用された書籍の表現とは根本的に異なるものであると反論。さらに、もしもユーザーから要求されてもLlamaがトレーニングに使用された書籍の内容を丸ごとコピーしたような文章を出力することはないと主張しています。

この件で、チャブリア判事は「Llamaは原告の書籍のテキストを十分に生成する能力はなく、原告がAIトレーニングデータとしての作品ライセンス市場を主張する権利はそもそもない」として、原告の2つの主張はいずれも通用しないと結論づけています。チャブリア判事は「裁判所は、一般的な理解に基づいて判決を下すことはできず、当事者が提出した証拠に基づいて判決を下さなければならない」と述べ、本件を棄却しました。
チャブリア判事は「この判決は、Metaが著作権で保護された素材を用いて言語モデルのトレーニングを行うことが合法であるという主張を支持するものではありません」「この判決は、原告らが誤った主張を展開し、正しい主張を裏付ける記録を作成できなかったというMetaの主張を支持するに過ぎません」と言及しました。実際、チャブリア判事は「Metaが原告の作品をコピーして、市場に類似した作品を大量に流通させ、市場の希薄化を引き起こす製品を作成したという点については原告はほとんど言及しておらず、証拠も提示していませんが、これは潜在的に勝訴可能です」と伝えています。
加えて、Metaの「AI企業に何十年も前の著作権法の遵守を義務付けることは、極めて重要な時期に重要な技術の進歩を遅らせることになる」という主張も一蹴しており、「AIが開発企業に数十億ドル(数千億円)、あるいは数兆ドル(数百兆円)もの収益をもたらすと見込まれているため、もし企業が言うように著作物を用いてAIをトレーニングする必要があるのであれば、著作権者に補償するための方法を見つけるべきです」と述べました。
原告側の弁護士は、「裁判所は『著作権者の許可を得たり、費用を支払ったりすることなく、著作権で保護された作品を自社モデルに取り込む』AI企業は、一般的に法律違反に当たると判断しました。しかし、Metaが著作権で保護された作品を著作権侵害しながら利用するという、歴史上前例のない記録があるにもかかわらず、裁判所はMetaに有利な判決を下しました。我々はこの結論に敬意を表しつつ、異議を唱えます」という声明を出しました。
一方、Metaは「オープンソースのAIモデルは、個人や企業の革新、生産性、創造性を変革的に高めており、著作権素材のフェアユースは、この変革的技術を構築するための重要な法的枠組みです」と語っています。

この訴訟において、原告側はMetaが海賊版のオンラインリポジトリから著者らの本をダウンロードし、Metaの生成AIであるLlamaのトレーニングに利用することで「大規模な著作権侵害を引き起こした」と主張。原告側の弁護士は、「Metaはこれらの文学作品を購入し、ライセンスを取得するために代金を支払うことができたし、支払うべきだった」と主張しました。
これに対して、Metaはアメリカの著作権法は「著作物を無許可でコピーして新しいものに変えることを許可している」として、Metaのデータ利用法はフェアユースに当たると主張。Llamaが生成する文章は、トレーニングに使用された書籍の表現とは根本的に異なるものであると反論。さらに、もしもユーザーから要求されてもLlamaがトレーニングに使用された書籍の内容を丸ごとコピーしたような文章を出力することはないと主張しています。
なお、Metaと同じようにAIチャットボットのClaudeを開発するAnthropicが、3人のアメリカ人作家に著作権侵害で訴えられたのですが、同社も「著者の許可がなくても、合法的に購入した書籍でAIをトレーニングすることはフェアユースに当たり、著作権侵害にはならない」という判決を勝ち取っています。
「AI企業が合法的に取得した書籍でAIをトレーニングするのに著者の許可は必要ない」という判決が下される - GIGAZINE

・関連記事
OpenAIとMetaが著作権侵害で3人の作家から訴えられる - GIGAZINE
Metaのマーク・ザッカーバーグCEOがAI「Llama」の開発チームに対し著作権で保護された作品の無断使用を許可したと訴訟で追及される - GIGAZINE
Metaが海賊版コンテンツを含む81.7TB分のデータでAIをトレーニングしていたことが明らかに - GIGAZINE
MetaのAI「Llama 3.1 70B」が著作権で保護された「ハリー・ポッターと賢者の石」の42%を再現できることを研究者らが発見 - GIGAZINE
MetaがAI強化のため「訴えられてもいいから著作権で保護された作品をかき集めよう」と議論していたとの報道 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in ソフトウェア, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article A judge dismisses a lawsuit alleging tha….