取材

巨匠・高畑勲の歩みを時系列で振り返る「高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。」オープニングセレモニーで太田光&岩井俊二がクロストーク


2018年4月に82歳で亡くなったアニメ監督・高畑勲さんの生誕90年および戦後80年という節目に「高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。」が2025年6月27日(金)から麻布台ヒルズギャラリーで開催されることになり、開催前日の6月26日(木)、オープニングセレモニーが行われました。

高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。
https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/isaotakahata-ex/

司会進行はフリーアナウンサーの武内陶子さんが担当。


セレモニーに出席した高畑監督夫人・かよ子さん、長男の耕介さん。耕介さんはあいさつの中で高畑監督の作品を「見た目も変化に富み、個性的で甘さ控えめで爽快感を味わえるとは限らないけれど、味わい深く今も色あせない輝きを持っています」と表現。本展覧会について「父の生前に始まり、作品の制作背景、思想、影響を受けた芸術を取り上げる構想でした。父の死でそれは叶いませんでしたが、時系列で見る回顧展となりました。世界各地での開催となったのは私たち家族にとっても驚きであり、喜びでもあります」と感想を語りました。


また、スペシャルゲストとして高畑作品ファンとして知られる爆笑問題・太田光さんも登場。登壇するなり「助けてー!」と叫び集まった報道陣の笑いを誘った太田さんですが、「ちょっと間違えてしまいました」と静かなトーンに切り替えて、高畑監督や作品についてのトークを行いました。


太田さんはかつて、高畑さんや宮崎駿さんがアニメの道を志すきっかけになった『王と鳥』の上映会をするにあたり、高畑さんと対談した機会があるほか、『かぐや姫の物語』制作中にも訪問したことがあるとのこと。当時、スタジオのアニメーターから、高畑さんはアニメーションに対して動き、仕草、まばたき1つでもこだわりが強く「そこまでやらなくても」ということでも合わせるという話を聞いた太田さんは、高畑さんがそれだけ作品に厳しく、自分にも厳しい人なのだと理解したそうです。


さらにゲストとして展覧会のスペシャルサポーターで映画監督の岩井俊二さんも登場。岩井さんは実は高畑さんとは血こそつながっていないものの遠縁だそうで、映像の仕事を志すにあたり、親戚の中で唯一映像の仕事をしていた高畑さんと親戚としてのツテで会ったことがあるとのこと。岩井さんが会った当時の高畑さんはドキュメンタリー映画『柳川堀割物語』に取り組んでいるころで、大学で自主映画を作った経験のある岩井さんに「いかに好きなものを作るのが難しいか」を2時間にわたり語ってくれたそうです。


このとき高畑さんからもらった言葉は映像の先輩からもらった唯一の言葉として大事にしてきたと語りました。自身の作品では、たとえば『Love Letter』の最後のシーンは『おもひでぽろぽろ』を頭に置きつつコンテを描いたとのこと。


好きな作品・シーンについて聞かれると、太田さんは「もちろん『赤毛のアンは大好き』」と前置きした上で、いしいひさいちさんのファンだということで『ホーホケキョ となりの山田くん』を挙げました。毒っ気のあるいしい作品をスタジオジブリがどう映画化するのかと見に行ったところ、まるで水墨画のようにすべてをきっちり描き込むわけではないヌケのいい絵が、見ていて心地が良く、また、ミヤコ蝶々さん演じるキクチババの動きがまさに「このセリフを言うときはこの表情になる」というものだったので感動したと感想を語りました。

一方、岩井さんは『太陽の王子 ホルスの大冒険』を挙げました。リアルタイムだと岩井さんが幼稚園ごろの作品ですが、高校ぐらいになって同好会による上映で見た時に「なんだこの完成度は」と衝撃を受け、それから折々に見る作品になっているとのこと。『花とアリス』で、主人公たちが見る映画として10秒少々ですが作中に登場したこともあります。


また、本展は戦後80年の節目ということもあって『火垂るの墓』の展示に力が入っているため、高畑さんが「『火垂るの墓』は反戦映画ではない」と述べたことについても質問がありました。

爆笑問題はちょうど『火垂るの墓』が公開された1988年デビュー。作品は劇場で見たのかテレビ放送で見たのかは覚えていないものの、野坂昭如さんによる原作は読んでいたという太田さんは、野坂さんがかつて映画監督の大島渚さんと大喧嘩をした武勇伝を持つ人物であることを挙げ、そんな野坂さん自身の体験をもとにした作品であることがすごくショックだったと語りました。


その上で、高畑さんの「反戦映画ではない」という言葉について、「戦争反対」という言葉の雑さを指摘し、「高畑さんから、単に『戦争反対』という言葉にこの作品を閉じ込めて欲しくないと、そう問いかけられている気がする」と述べました。

岩井さんも「あんなに見ていて苦しい映画はない」と述べた上で、「清太と節子、2人の兄妹の物語を描くことが戦争を描くことになるのかという自問自答が高畑さんの中にあったのではないか」と指摘。また、作中で清太と節子にとっては大事なサクマドロップの缶を、何も知らない駅員が野球のフォームで投げるという残酷な演出が行われていることについて「他人にとってはそんなものでしかない。高畑さんらしい、厳しくアイロニックな眼差しがあると唸りました」と語りました。


「高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。」は2025年6月27日(金)から、麻布台ヒルズギャラリーにて開催。チケットの価格は一般2000円、専門・大学・高校生1700円、4歳~中学生1400円です。

◆「高畑勲展―日本のアニメーションを作った男。」開催概要
会期:2025年6月27日(金)~9月15日(月・祝)
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)
主催:麻布台ヒルズ ギャラリー、NHK、NHKプロモーション
企画協力:スタジオジブリ
協力:(公財)徳間記念アニメーション文化財団、新潮社
協賛:ア・ファクトリー
後援:レッツエンジョイ東京、TOKYO MX、在日スイス大使館

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in 取材,   アニメ, Posted by logc_nt

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