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B-2ステルス爆撃機はどうやって作られ、敵地の奥深くで作戦を実行できるのか?


2025年6月22日、ドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍がイラン国内3カ所にある核関連施設を空爆したと発表しました。この空爆では地下深くにある施設を攻撃するために「GBU-57」と呼ばれる精密誘導爆弾が使われ、その投下のためにステルス爆撃機のノースロップ・グラマン B-2が運用されました。このB-2について、世界中の巨大な建造物を紹介するYouTubeチャンネルのMegaBuildsが解説しています。

B-2爆撃機の驚異的なエンジニアリング - YouTube


B-2は、冷戦真っただ中の1970年代に、アメリカの航空メーカーであるノースロップ(当時)とボーイングによって開発が始まり、1988年11月にロールアウトしたステルス爆撃機です。


開発当時、主に運用されていた爆撃機はB-52で、そのルートは北アメリカ~ヨーロッパでした。しかし、ソ連への爆撃を想定した時、巨大なB-52はあっという間に制空レーダーに捕捉されてしまうことが想定されます。そのため、ソ連のレーダー網をくぐり抜けて目的地を爆撃し、そのまま速やかに帰投できるような爆撃機が求められました。


B-2の開発に携わったノースロップの創業者であるジャック・ノースロップ氏は、胴体も尾翼もなく機体全体が翼になっている全翼機が航空機の未来を築くだろうと考えていました。


全翼機のメリットは空気抵抗が少なく、軽量化に有利ということ。ノースロップは1948年にジェット推進全翼機のYB-49を開発していますが、機体の安定性が悪いために操縦難度が高く、さらに燃費が悪く大型爆弾の搭載が困難であるという理由から開発は中止となりました。


しかし、YB-49の開発中に「全翼機の形状は通常の飛行機よりもレーダーを反射しにくく、ステルス性能が高い」ということが判明しました。そこで、「ソ連のレーダー網をくぐり抜けながら爆撃を完遂して帰投する」という高いステルス性能を要求される課題に対し、ノースロップは再び全翼機ベースの爆撃機の開発をスタートしました。


B-2の特徴は、レーダー反射断面積が非常に小さいことと、空力性能が優れていること。機体表面は大きな滑らかなパネルで構成され、レーダーを反射してしまうような角やとがった部分がないように設計されています。また、機体表面はレーダーを吸収して熱に変換するグラファイト/エポキシ複合材で覆われています。その結果、B-2のレーダー反射断面積はB-52のおよそ1000分の1に収まっています。


全翼機には尾翼がなく、水平姿勢を維持するのが困難です。そこで、B-2ではフライ・バイ・ワイヤシステムが採用され、コンピューターによる高度な姿勢制御アシストが行われます。また、GPSだけでなく地形をスキャンできるセンサーやレーダーも多数搭載しており、昼夜を問わずあらゆる気象条件で運用できる性能を持っています。


搭乗員はパイロットとコパイロットの2人。B-2は長距離爆撃任務に用いられるため、長時間の拘束が予想されます。そのため、機内にはトイレや仮眠スペース、ギャレーが用意されているとのこと。


巡航速度は高高度で時速約900km。航続可能距離は約1万1000kmで、これはニューヨークからモスクワまで飛ぶには十分な距離です。また、空中給油もできるようになっており、機体上面に給油口が配置されています。


推力を生むエンジンは4基のゼネラル・エレクトリックのF118-GE-100ターボファンで、機体の奥深くに収納され、吸気口も巧妙に隠されています。また、排気は冷却され、機体後部の広い範囲に拡散される仕組み。こうすることで、赤外線の反射を最小限にとどめるようになっています。


B-2の積載可能重量は4万ポンド(約18トン)で、500ポンド(約227kg)のGPS誘導弾を80発、2000ポンドの爆弾を16発搭載できます。


今回のイランの核関連施設への空爆で使われたB-2は6万ポンド(約27.2トン)まで積載できるように改修されており、1つ3万ポンド(約13.6トン)という超重量のGBU-57を2発搭載していました。


イランの核関連施設の破壊を目標とする「ミッドナイトハンマー作戦」における、B-2のルートはこんな感じ。6月20日(金)の深夜から21日(土)の朝にかけて、複数のB-2爆撃機がアメリカ・ミズーリ州のホワイトマン空軍基地を出発。この時、陽動として一部のB-2爆撃機は西太平洋に向かっています。B-2爆撃機7機は本隊として空中給油を受けながらイランに向かいますが、その前にオマーン沖合にいる艦隊からイランに巡航ミサイルを発射。そして、地上を掃討したのちに7機×2発=計14発のGBU-57を投下しました。アメリカ軍は、GBU-57を含めて精密誘導爆弾を合計75発使用したと発表しています。


攻撃を受けた核関連施設の衛星画像。


施設入り口のトンネルは攻撃前日に埋められており、空爆される可能性に備えていたとみられています。


なお、国際原子力機関(IAEA)はミッドナイトハンマー作戦によって核関連施設が攻撃を受けたものの、記事作成時点では施設外の放射線レベルの上昇は報告されていないと述べています。

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in 乗り物,   動画, Posted by log1i_yk

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