サイエンス

ソーシャルメディアやスマートフォンに依存している青少年は自殺行動のリスクが高い


スマートフォンやソーシャルメディアの使い過ぎは若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすと指摘されており、オーストラリアでは16歳未満のSNS利用を禁止する法案が議会で可決されるなど、各国が対策に乗り出しています。アメリカに住む4000人以上の青少年を対象にした新たな研究では、スマートフォンやソーシャルメディアのスクリーンタイム自体ではなく「依存性のある使い方」が、自殺行動やメンタルヘルスに影響を及ぼしている可能性が示されました。

Addictive Screen Use Trajectories and Suicidal Behaviors, Suicidal Ideation, and Mental Health in US Youths | Media and Youth | JAMA | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2835481


Addictive Use of Social Media, Not Total Time, Associated with Youth Mental Health | Columbia University Irving Medical Center
https://www.cuimc.columbia.edu/news/addictive-use-social-media-not-total-time-associated-youth-mental-health

Teenagers who report addictive use of screens at greater risk of suicidal behaviour, study shows | Children's health | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2025/jun/18/teenagers-social-media-mobile-phones-video-games-mental-health

以前から子どもや若者のソーシャルメディアやゲーム、スマートフォンの使用とメンタルヘルスの関連は指摘されてきました。しかし、これらの関連を調べる研究の多くは、総使用時間である「スクリーンタイム」に焦点を当てており、ソーシャルメディアやスマートフォンの使い方そのものや、使い方の性質が時間経過と共にどのように変化するのかには、あまり注目されてきませんでした。


そこで、コロンビア大学ヴァジェロス医学校ワイル・コーネル医科大学の研究チームは、子どもたちのソーシャルメディアやスマートフォン、ビデオゲームの「依存的な使用」に着目した研究を実施しました。

研究ではアメリカに住む4285人の青少年を対象に、ソーシャルメディア・スマートフォン・ビデオゲームの使い方やメンタルヘルスの状態について追跡調査を行いました。被験者の子どもたちは研究開始時に8~10歳であり、4年間にわたってスクリーンの使用やメンタルヘルスについて調査されました。

研究チームは単にスクリーンタイムを測定するだけでなく、被験者の「依存的な使用」について評価しました。具体的には、テクノロジーが学業や運動などの活動を妨げているかどうかや、スクリーンから離れた時に渇望や苦痛を感じるかどうかといった項目に基づき、機械学習でグループ分けが行われたと報告されています。


研究の結果、スマートフォンに関しては調査開始の時点から、約半数の子どもが高い依存性を報告しました。また、24.6%の子どもは追跡中の4年間でスマートフォンの依存的使用が増加していたとのことです。

ソーシャルメディアについても、合計で約40%の子どもが依存性の高い使用または依存性の増加傾向を示しました。一方、ビデオゲームについては40%以上が高い依存性を示したものの、ソーシャルメディアやスマートフォンとは異なり、時間の経過と共に明確に依存性を増すグループは確認されず、初めから依存性が高いグループと低いグループに分かれていました。

自殺念慮や自殺の準備を含む自殺行動や、その他のメンタルヘルスの問題と合わせて分析したところ、ソーシャルメディアとスマートフォンの依存性が高いまたは依存性が増している子どもは、依存性の低い子どもと比較して自殺行動のリスクが2~3倍高いことが判明。また、ビデオゲームへの依存性が高い子どもはそうでない子どもと比較して、自殺行動や不安、抑うつ、攻撃性、規則違反といった症状を報告する可能性が有意に高いことがわかりました。

対照的に、ソーシャルメディアやスマートフォン、ビデオゲームに費やした全体的な時間は、自殺行動やメンタルヘルスのリスクと関連がみられませんでした。つまり、問題なのはスクリーンタイムではなく、それらの使用に強迫観念や苦痛、制御不能といった依存的な傾向が見られるかどうかだったというわけです。


論文の筆頭著者であり、ワイル・コーネル医科大学の健康科学・精神医学准教授を務めるユンユー・シャオ氏は、「全国調査や過去の研究ではスクリーン使用の増加が記録されていますが、私たちの研究は依存的な使用の長期的な軌跡を具体的にマッピングした初めての研究であり、リスクがいつ誰に現れるのかに関する新たな知見を提供するものです。政策の取り組みは、スクリーンタイムの一般的な制限から離れて、代わりにスクリーン使用の依存症的なパターンを特定し、対処することに焦点を当てるべきです」と述べました。

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in モバイル,   ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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