人類は約200万年前から火を使って肉を薫製にしていた可能性

薫製は木材を加熱した際に出る煙を食材に当て、風味付けすると共に腐食を防ぐ調理方法です。イスラエルの研究チームが発表した論文では、「人類は約200万年前から肉を薫製にしていた可能性が高い」という説が提唱されています。
Frontiers | A bioenergetic approach favors the preservation and protection of prey, not cooking, as the drivers of early fire
https://www.frontiersin.org/journals/nutrition/articles/10.3389/fnut.2025.1585182/full

Stone Age BBQ: How Early Humans Preserved Meat with Fire | Tel Aviv University | Tel Aviv University
https://english.tau.ac.il/research/smoked-food-prehistoric
Humans Have Smoked Meat For Almost 2 Million Years, Study Suggests : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/humans-have-smoked-meat-for-almost-2-million-years-study-suggests
人類の隆盛と火の使用は密接に結びついていますが、火を起こして消えないように維持するには多大な労力と時間が必要であり、先史時代の研究者らは「なぜ初期人類は火を使い始めたのか?」という疑問に取り組んでいます。
今回、イスラエルのテルアビブ大学考古学および古代近東文化学部のミキ・ベン・ドール博士とラン・バルカイ教授の研究チームは、生体エネルギー学的アプローチを用いて初期人類の火の使用について分析しました。
バルカイ氏は、「火の使用の起源は、世界中の先史時代研究者にとって『燃えるような』テーマです。40万年前までに家庭内での火の使用が一般的になった点についてはおおむね一致しており、おそらく肉を焼いたり、照明や暖房にしたりするために使われていたのでしょう。しかし、それ以前の100万年については議論があり、初期人類が火を使い始めた理由を説明するために、さまざまな仮説が提唱されてきました。本研究では、この問題に対する新たな視点を探ろうとしたのです」と語っています。
40万年前より昔の考古学遺跡のほとんどには、火の使用を示す証拠はないものの、いくつかの遺跡には火が使われた明確な証拠があるとのこと。ホモ・エレクトスをはじめとする当時の初期人類は、日常的に火を使用していたわけではなく、何か特別な目的のために時々使用していたと考えられるそうです。
ゾウの骨を持つバルカイ氏

by Tel Aviv University
研究チームは、火を使用した証拠がある約180万年~80万年前の遺跡に関する文献を調査しました。条件に該当する遺跡は世界中に9カ所あり、その内訳はイスラエルに2カ所、アフリカに6カ所、スペインに1カ所となっています。
対象となった遺跡の共通点を調べた結果、すべての遺跡からゾウやカバ、サイといった大型動物の骨が大量に見つかっていたことがわかりました。これらの動物は初期人類の食生活において重要な位置を占めており、必要なカロリーの大部分を供給していたことが知られています。たとえば、ゾウ1頭の肉と脂肪に含まれるカロリーは、20~30人の集団が必要とするカロリーの1カ月分を超えるとのこと。
しかし、研究チームの分析では、狩った肉を焼いてすぐに食べてしまった場合、エネルギー収支は植物採集よりも低いことが示されました。一方、狩った肉を薫製などにして保存した場合、エネルギー収支は飛躍的に向上したと報告されています。
研究チームはこれらの要因を組み合わせて、「初期人類が火の使用を始めた動機は、肉を狙う別の捕食者から獲物を守ると同時に、薫製や乾燥によって肉を保存して長期間食べられるようにするため」という説を提唱しました。
以下の写真は、今回の研究で分析された焼けた骨の一部です。

by Tel Aviv University
ベン・ドール氏は、「燃料を集めて火を起こし、長時間維持するというプロセスには多大な労力がかかります。そのため、エネルギー効率の高い説得力のある動機が必要でした」「狩ってきたゾウやカバは、まさに肉と脂肪の貯蔵庫のような宝物でした。これらの肉は捕食者だけでなく細菌からも狙われていたため、多くの日数をかけて保護し、保存する必要があったのです」と述べています。
バルカイ氏は、「本研究では、初期人類が火の使用を開始した動機となる要因について、新たな解釈を提案します。それは、大型の狩ってきた動物を他の捕食者から守る必要性と、大量の肉を長期にわたって保存する必要性です。これらの目的で火が起こされるようになると、追加のエネルギーコストをかけずに、時々調理にも使用されるようになったと考えられます」とコメントしました。
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in サイエンス, 食, Posted by log1h_ik
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