アート

たった30分で油絵の風景画を完成させるボブ・ロスのオリジナル絵画を購入するのは不可能に近い


1990年代にNHK-BSで放映されたテレビ番組「ボブの絵画教室」でホストを務めたボブ・ロス氏は、たった30分で写真と見間違えるほどの美麗な風景画を「ね?簡単でしょう?」と描いてしまうことで知られています。素早く絵を完成させるためロス氏は生涯で数万点の絵画を作成しており、「歴史上最も多作な芸術家の一人」とも言えますが、その一方でロス氏の作品をアートの市場で手に入れることはほとんどできません。なぜロス氏の作品がそれほど希少なのか、オンラインメディアのThe Hustleがアートギャラリーのオーナーや収集家、ロス氏の遺産を保存する会社に話を聞いています。

Why it’s nearly impossible to buy an original Bob Ross painting - The Hustle
https://thehustle.co/why-its-nearly-impossible-to-buy-an-original-bob-ross-painting


1990年代にNHK-BSで放映されて日本で人気を集めたテレビ番組「ボブの絵画教室」は、アメリカでも絶大な人気を誇っています。ロス氏の子ども時代から青年時代、実は軍人だったという時代を経て伝説の絵描きになるまでのエピソードをまとめた「Today I Found Out」のムービーは、記事作成時点で300万回以上再生されています。ロス氏は1995年に亡くなりましたが、ロス氏のレッスンを集めたYouTubeチャンネルでは、レッスン企画の「The Joy of Painting」がどれも1000万回以上、多いものは5000万回も再生されているほか、2000年にはロス氏の風景画が世界で最も人気のあるカードゲームとして知られるマジック:ザ・ギャザリングカードのイラストに採用されることも発表されており、根強い人気がよく分かります。

「ボブの絵画教室」で一世を風靡したボブ・ロス氏の軍人時代や番組の誕生秘話など「知られざる人生」とは - GIGAZINE


以下は、The Hustleが示した、著名な画家ごとの作品総数を比較したグラフ。多作な画家であったピカソは1万3500点の作品数で、モネやムンク、ダリだと1000~2000点程度、ファン・ゴッホやレンブラントは1000点もありません。一方でロス氏は、1983年から1994年まで381回続いた番組で、毎回新しい風景画を収録前、収録中、収録後の3つのバージョンで描いていたこともあり、約3万点の作品を残していると考えられています。


しかし、クロケット氏によると、ロス氏の作品はその数に反してアート市場でほとんど売られていないそうです。ロス氏が使ったという絵の具やブラシ、マグカップや時計、下着やトースターまでもがオンラインでやりとりされているのを確認できますが、ロス氏が生涯で制作した数万点の絵画はほんの一握りしかオークションに出品されていません。

ロス氏の作品の多くを所有しているのは、ロス氏や彼に芸術家としての独立を勧めたアネット・コワルスキー氏らが設立したボブ・ロス社です。ロス氏が亡くなった後、ボブ・ロス社およびロス氏の作品はコワルスキー氏に所有権が移りました。そのため、現在でもロス氏のオリジナル作品1165点が、ボブ・ロス社のオフィスビルのダンボールに眠っています。

アネット・コワルスキー氏の娘でありボブ・ロス社の現社長であるジョアン・コワルスキー氏は、The Hustleの取材に対し、「ロス氏の作品を購入したいという人々から絶えず会社に問い合わせが寄せられていますが、私たちの唯一の使命は、ボブ・ロスという驚くべき神話的な存在を保存することです」と作品を流通させていない理由を語りました。ボブ・ロス社はときおり、全国のギャラリーや展示会に絵画を数点貸し出しており、たとえばフロリダ州ニュースマーナにあるボブ・ロス・アート・ワークショップ&ギャラリーには54点の絵画が展示されているほか、ワシントンDCの国立アメリカ歴史博物館には4点の絵画が所蔵されています。


しかし、ボブ・ロス社や展示中の作品を合わせても1000点程度であり、ロス氏が生前に寄贈したり売却したりして市場に流れている絵画はまだ大量に存在しているはずです。そこでThe Hustleは、Minnetrista展示場の副社長でありボブ・ロス研究員でもあるジェシカ・ジェンキンス氏に流通中の作品について尋ねました。ジェンキンス氏によると、ロス氏は自分の絵を積極的に募金活動に寄付したり、適正価格で売ったりしていたため、何十年も前に手に入れた人たちが多くのロス氏の作品を家庭やビルなどに飾っているそうです。実際に、ロス氏が出演した番組の系列局がある駅には、2025年時点でもロス氏の作品が4点飾ってあり、それを見るためだけに海外から観光客が来るとのこと。

そのため、ロス氏の作品は多くが流通していますが、一部の熱狂的なコレクターを除くと、一般的なアート市場であまり競売にかけられていません。ギャラリーのオーナーでロス氏の作品を10年間買い集めて転売してきた経験のあるライアン・ネルソン氏は、「ロス氏の作品は誰もが認識できるため非常に人気が高く、入手が困難です。私たちは地球上のどのギャラリーよりも多くのロス氏の作品を売買しており、その地位を維持するために、私たちは作品の購入にかなり高めの価格をつけています」と述べています。需要がかなり高いのに希少というギャップに、特定のギャラリーによる高値転売が合わさって、「番組内で30分以内に描かれた作品」という一見気軽に手にできる作品と感じられるにもかかわらず、ほとんど競売で見かけないという現状が発生しています。


また、もうひとつの大きな理由として、ロス氏が「完成品ではなくプロセスを重視していた」という点があります。コワルスキー氏は「彼は絵画そのものに、ほとんど無関心でした。彼にとって絵画は旅であり、人々に教えるための手段に過ぎなかったのです」と語りました。

Amazon.co.jp: ボブ・ロス ザ・ジョイ・オブ・ペインティング 決定版DVD-BOX1 : ボブ・ロス: DVD

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「ボブの絵画教室」で一世を風靡したボブ・ロス氏の軍人時代や番組の誕生秘話など「知られざる人生」とは - GIGAZINE

「ボブの絵画教室」で有名なボブ・ロスの風景画がマジック:ザ・ギャザリングに採用される - GIGAZINE

「ボブの絵画教室」を見ながら素人が実際に画を描いてみる「ボブ・ロス・チャレンジ」 - GIGAZINE

Twitchにお絵かき実況チャンネルが登場して「ボブの絵画教室」全話マラソン開催中、「ね、簡単でしょう?」 - GIGAZINE

まるで人工知能がLSDを使って「ボブの絵画教室」を見ているかのようなムービー - GIGAZINE

ピカソの名画に隠された「もう1枚の肖像画」の謎 - GIGAZINE

in アート, Posted by log1e_dh

You can read the machine translated English article It's nearly impossible to buy an ori….