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YouTubeがモデレーターに政治・社会・文化的な問題を含む潜在的な危害よりも「表現の自由」を優先するように指示


利用規約に違反する動画に警告を与え、削除する措置を行っているYouTubeで、2024年末頃から規制が緩くなっていることが明らかになりました。「表現の自由」が「動画がもたらす危害のリスク」を上回る可能性がある場合、動画は削除されず残される可能性があるとのことです。

YouTube Loosens Video Content Moderation Rules - The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/06/09/technology/youtube-videos-content-moderation.html

YouTube will “protect free expression” by pulling back on content moderation - Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2025/06/youtube-adopts-looser-moderation-policy-for-videos-about-elections-gender-and-more/

2024年12月中旬にYouTubeの内部文書を調査したというニューヨーク・タイムズによると、YouTubeは「公益性がある」と見なされる動画を積極的に残すようモデレーターに指示しているとのこと。例えば、市議会の会合や選挙関連の集会、政治的な会話などの動画がこれに当てはまります。また、以前は「コンテンツの4分の1以上がポリシーに違反していれば動画を削除すること」という指示が与えられていましたが、この基準は「2分の1以上」に緩和されたそうです。


この規制緩和の影響で、これまでは誤情報と見なされていた動画が削除されずに残ることになります。例えば、「新型コロナウイルスのワクチンが人々の遺伝子を変化させる」という内容を盛り込んだ動画は、従来であれば医療関連の誤情報としてYouTubeのポリシーに違反したところ、「社会的関心がリスクを上回る」として削除すべきではないと判断されたケースが確認されました。YouTubeの研修資料によると、この動画には保健福祉省のロバート・F・ケネディ・ジュニア長官による「ワクチンに関連する直近のニュース」が含まれていたため、ニュースとしての価値があると判断されたほか、反ワクチンを明示的に推奨していたわけでもなかったため、危険性が低いと判断されたようです。

YouTubeの広報担当者であるニコール・ベル氏は、「YouTubeは、はやりのトピックに関するモデレーター向けのガイダンスを継続的に更新しています。時期によって意味のないポリシーは廃止し、正当な理由があればポリシーを強化します」と述べました。


YouTubeは以前からヌード、生々しい暴力、ヘイトスピーチなどを中心に動画を削除する措置を続けていますが、教育的、ドキュメンタリー的、科学的、芸術的に十分なメリットがある場合は削除しないなどルールの解釈に幅を持たせています。今回の規制緩和では、政治関連コンテンツのほか、イデオロギー、運動、人種、ジェンダー、セクシュアリティ、中絶、移民、検閲といったトピックについても、公共の利益になると見なされるようになります。

具体的な例では、トランプ政権の閣僚任命に関する公聴会について議論した43分の動画にトランスジェンダーの人物に対する中傷的な表現が含まれていましたが、「特定可能な個人に対する悪意のある表現を禁じる」というポリシーに違反するような行為が1件しかなかったため、残すべきと判断されています。また、韓国のユン・ソンニョル前大統領の弾劾と逮捕について語った動画では、「ユン氏がギロチンにかけられている様子を想像した」という問題のある発言が含まれていましたが、「ギロチンによる処刑を望むことは現実的ではない」として危険性リスクは低いと判断されました。

こうしたポリシーが適用されて以来、2025年の最初の3カ月で、YouTubeは「憎悪的で虐待的」であることを理由に19万2586の動画を削除しました。


ベル氏は「『公益』の定義は常に進化していることを意識し、現在のプラットフォームで見られる新しいトピックを反映するために、ポリシーの例外規定を更新しました。私たちの目標は変わりません。YouTubeで表現の自由を守ると同時に、深刻な被害を軽減することです」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1p_kr

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