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強制送還への不安が高まるアメリカの移民の間で「当局による移民取り締まりを警告するアプリ」が人気に


アメリカでは2025年に就任したドナルド・トランプ大統領の下、不法移民の取り締まりが厳格化されています。移民の間で強制送還への不安が強まる中、アメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)による取り締まりを警告するアプリが人気を集めていると、海外メディアのRest of Worldが報じています。

Immigration raids fuel demand for migrant safety apps like ConsulApp - Rest of World
https://restofworld.org/2025/immigration-raids-migrant-safety-apps/


アメリカにおける不法移民の取り締まりは非常に厳しいものとなっており、ICEは2025年6月、1日あたりの逮捕者数が1600人を超えたと報告しています。トランプ政権発足後の50日間だけで、ICEによる逮捕は3万2000件を超えたとのことで、この数字は2024年全体の逮捕数に匹敵します。

アメリカのさまざまな都市では、ICEの捜査官らが軍用ライフルや防弾チョッキ、暴動鎮圧用の盾などで重武装し、装甲車の護衛を受けながら街路を巡回する様子が確認されています。時にはICEの過激な取り締まりに抗議するデモ参加者に対し、スタングレネード(閃光手榴弾)を発射する場合もあるそうです。

Stun Grenades, Armored Trucks in ICE Raids Spur Tensions - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-06-06/rifles-stun-grenades-armored-trucks-in-ice-raids-spur-tensions


6月6日には、カリフォルニア州のロサンゼルス市でICEによる大規模な摘発が行われました。これに抗議する住民らとICEとの間に衝突が発生し、8日にはトランプ政権が派遣した州兵が配備される事態に発展。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は「これは大統領の行為ではなく、独裁者の行為です」「事態を意図的にあおっています。法執行機関の不足が理由ではなく、見世物が欲しいからです」と批判しています。

ロサンゼルスに州兵、知事「派遣は違法」 移民摘発巡る抗議デモ | ロイター
https://jp.reuters.com/world/security/QBBMZVPFKVMA7PGHB5KT2T4PLU-2025-06-08/


ICEと契約しているテキサス州アンソンのブルーボネット拘置所では、収容者らが「SOS」の人文字を作っていることも報じられています。

"SOS": This ICE facility in Texas should shock your conscience.
https://slate.com/news-and-politics/2025/06/sos-immigrant-texas-ice-facilities-abuses.html


移民の間でICEの脅威が強まる中、「ICEの取り締まりを警告するアプリ」が人気を集めています。ジョージア州を拠点とする起業家のエイドリアン・ロザーノ・ジュニア氏が開発したアプリ「Hack Latino」は、アメリカ在住のラテン系住民向けのAI搭載アプリです。もともとはレストランの案内や領事館の情報を提供していましたが、4月からはICEの目撃情報を共有・警告する機能も追加されました。

Hack Latinoの他にも「Stop ICE Alerts」というアプリが同様の機能を提供しており、移民がICEの取り締まりを避けることをサポートしています。1990年代には、ヒスパニック系住民の多い地区の住民や活動家がパトロールを行い、警察がやってくると近隣住民に警告することが行われていましたが、これらのアプリはその現代版ともいえるものです。

各国政府も、アメリカに住む自国民を支援するためにテクノロジーを活用しています。アメリカに多くの不法移民が住んでいるグアテマラ政府は3月に、領事館サービスへのアクセスをデジタル化・効率化し、ICEによる逮捕などの緊急事態に素早く対処できるようにするアプリ「ConsulApp Guate」をリリースしました。

グアテマラの外務副大臣であるアントニオ・エスコベド氏はRest of Worldに対し、「一部の州では、拘束した人を別の州へ移送するのが常套(とう)手段です。そうなると意思疎通は困難になります」とコメント。拘留中の移民に対し、控訴手続きの支援や自宅に残された子どもの所在確認などの支援ができれば、当局がより迅速に事態を把握することができます。

また、メキシコ政府も1月に移民のためのアプリ「ConsulApp Contigo」をリリースしました。ConsulApp Contigoは領事サービスへのアクセスを向上させ、法的権利と手続きに関する情報に迅速かつ安全に提供するアプリだと説明されています。


一方で、これらのアプリを提供する人々の間でも不安が高まっているとRest of Worldは報じています。韓国系アメリカ人向けの教育コンソーシアム・Nakasecは、法執行機関と接触したユーザーに憲法上の権利を伝えるためのアプリ「Know Your Rights 4 Immigrants」を提供しており、2025年には対応言語を20以上に拡大しました。

アジア系移民を支援するNakasecの関連団体・Woori Juntosの広報担当者であるエスメラルダ・レデスマ氏はRest of Worldに対し、「私たちは皆、移民コミュニティに何らかのリソースを提供することに少し不安を抱えています」と述べ、州および連邦検察官はWoori Juntosが本拠を置くテキサス州の組織を標的にしていると主張。「州議会議員たちは不法移民を支援することを違法とする新たな法律を提出し、可決することで反移民感情をさらにあおっています」と述べています。

さらにアメリカ政府は、プラットフォームにICEの目撃情報を投稿するユーザーを特定する試みも進めているとのこと。移民や難民を支援するクエーカー教徒の団体「アメリカン・フレンズ奉仕団」のディレクターを務めるペドロ・リオス氏は、「私たちの多くは、もはやすべての情報を投稿していません」と述べ、写真や動画を秘匿性の高いWhatsApp経由で共有するようになりつつあると説明しました。

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   スマホ, Posted by log1h_ik

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