アメリカ海軍でアイスクリームが酒に取って代わった経緯

第二次世界大戦中にアイスクリームを製造・輸送するための船舶「アイスクリーム・バージ」が運用されるほど、海兵隊員にはアイスクリームが欠かせないものになっています。海や船、海軍などのトピックを扱うOld Salt Blogを運営する元船乗りで作家のリック・スピルマン氏が、海軍とアイスクリームが結びつくようになった経緯を解説しています。
How Ice Cream Replaced Booze in the US Navy
https://www.oldsaltblog.com/2025/05/how-ice-cream-replaced-booze-in-the-us-navy-2/

海軍とアイスクリームの関係は、1914年にアメリカ海軍長官ジョセファス・ダニエルズ氏が発令した一般命令第99号に端を発します。それまで、長い航海の中で娯楽がない船上において、飲酒は数少ない楽しみのひとつになっていましたが、一般命令第99号は海軍艦艇および海軍施設内でのアルコール飲料の持ち込み、消費を禁止しました。アメリカ海軍は1862年にラム酒の配給を廃止し、船員が船内で飲酒できるアルコールの種類を段階的に厳しく制限していましたが、一般命令99号では士官室と艦長室でのアルコールの提供さえも禁止されました。
そして、1920年にはアメリカ全土で消費のためのアルコールの製造、販売、輸送を前面的に禁止する禁酒法が施行されます。1933年までの13年間続いた禁酒法時代には、密売を行う犯罪組織や、数万もの「スピークイージー」と呼ばれる違法な酒屋が発生しました。

禁酒法時代、多くのアメリカのビール醸造所は、ソーダとアイスクリームの製造所へと業務を転換しました。その結果、アイスクリームパーラーが増加し、社交の場として人気の場所となりました。禁酒法は世界恐慌に伴って問題視されるようになり、1933年12月に廃止されましたが、一部の人にとってアイスクリームはかつてアルコールが担っていた気晴らしやストレス解消として選ばれるようになりました。
禁酒法廃止後の第二次世界大戦期でも一般命令第99号は有効であり、アメリカ海軍内は禁酒です。そこで、アイスクリーム・バージを利用して西太平洋全域のほぼすべての艦船にアイスクリームが支給されていました。アイスクリームは海兵の士気を高めるために重要な役割を果たしており、実際に空母「レキシントン」が日本軍の魚雷の攻撃を受けて沈没しつつある時、乗組員は船を放棄する前に冷凍庫から可能な限りアイスクリームを持ちだしたと記録に残っています。
また、航海が順調だった日は褒美として海軍の艦長が乗組員に「トット」と呼ばれるラム酒の配給が行われることがありました。イギリス海軍では操艦時に手が震えるようになるのを避けるため1970年のブラック・トット・デーに廃止されるまで敢行されていましたが、アメリカ海軍は1914年から禁酒であったため、アイスクリームが功績に対するトットとして提供されました。特に航空母艦(空母)においては、撃墜されたパイロットを艦に帰還させた場合や救助されたパイロットに報奨として、10~30ガロン(約45~135リットル)ものアイスクリームが支給されることもあったとのこと。

第二次世界大戦中の海軍に所属したトム・コクルコ氏は、退役軍人によって組織・運営されるメディアのRecurrent Militaryに対し、駆逐艦に乗って空母を護衛していた時にアイスクリーム報奨の伝統を知ったと話しています。コクルコ氏は当時を振り返り、「パイロットを救助して乗せるたびに10ガロンのアイスクリームがもらえて、本当にうれしかったんです。それで、仲間の内で『1機撃墜しよう』って冗談を言い合うようになったんです」とアイスクリームが当時のモチベーションに大きく関わっていたことを語りました。
・関連記事
アメリカ海軍公式アカウントがうっかりゲーム実況を配信する事件が発生、仕事用アカウントと私用アカウントの切り替えミスが原因 - GIGAZINE
アメリカ海軍が中国企業DeepSeekの開発したAIの使用を全面的に禁止 - GIGAZINE
バニラのアイスを買ったときだけ車のエンジンがかからなくなる不思議な現象、その原因は? - GIGAZINE
「アイスクリームはヘルシー」というのは本当? - GIGAZINE
古代文明はアイスクリームをどうやって作ってどのようにして庶民に広まっていったのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in 食, Posted by log1e_dh
You can read the machine translated English article How ice cream replaced alcohol in the US….