静寂は一部の人にとってかなりの不快を伴う可能性がある

集中したいときや心を安らげたいときには、静かな場所でゆったりと過ごしたいと感じる人は多いはず。しかし、現代人は外部からの刺激に慣れすぎていて、静かな空間が原因で不安や恐怖を感じる可能性があると専門家が指摘しています。
What’s So Fearful About Silence? | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/enhance-your-vintage-years/202505/whats-so-fearful-about-silence

カリフォルニア州立大学サクラメント校の名誉教授であり臨床心理学者のフランシーヌ・トーダー氏は、「あらゆる外音から逃れることは、現代ではますます難しくなっています。そしてどうやら、音から逃れた静寂は、人々に不快感を与える可能性があります」と述べています。
バージニア大学心理学部のティモシー・D・ ウィルソン氏らが2014年に発表した論文では、大学生の被験者に本や電子機器などを与えず「電気ショック装置」だけ用意して15分間部屋に放置するという実験を行いました。結果として、じっと考え事をして過ごすような被験者はあまりおらず、男性の約67%、女性の約25%が、外部刺激の欠如を避けるために自ら電気ショックを与えたそうです。ウィルソン氏は「安価で容易にアクセスできる刺激を数多く享受している現代では、一人で考え事をしている孤独な状態は、不快な経験である可能性を発見しました。研究対象者の多く、特に男性は、外部からの感覚刺激を奪われるよりも、ネガティブなもの(軽い電気ショック)であっても、自らに刺激を与えることを選択しました」と語りました。

心理学者のリック・ハンソン氏は、著書「Buddha's Brain: The Practical Neuroscience Of Happiness, Love, And Wisdom(ブッダの脳 幸福、愛、知恵の実践的脳科学)」の中で、「人は感覚から喜びを得る」と述べています。ハンソン氏は喜びを得るための感覚の例として、静寂の中で静かな波の音を聞くようなケースを挙げており、特定の音に注意を向けることで喜びが強まるとのこと。しかし、トーダー氏は「現代人は静寂を得ることが難しく、静寂に不安や恐怖を感じることもあるため、ただ静寂を求めることはおすすめしません」と述べています。
一方で、静寂は脳に良い影響を与えるという研究もあります。2006年に内科医のルシアーノ・ベルナルディ氏が実施した「音楽が人間の生理現象に与える影響」を調べる実験で、12人の被験者に6種類の音楽を聞かせてその間の血圧・血中二酸化炭素濃度・脳内血流を観察したところ、どんな音楽でも肉体が覚醒状態にあるのと同じ状態の生理的な変化が生じたほか、曲と曲の間にあった2分間のインターバルに音楽を再生しているときよりもはるかに体がリラックスした状態にあることが発見されました。ベルナルディ医師は「騒音という刺激は精神を一方向に集中させるもので、逆に言えば、刺激がない静寂は精神を深いリラックスした状態にするのかもしれません」との見解を出しています。
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By Nikola Ostrun
静寂が一部の人には不快である可能性を踏まえた上で、トーダー氏は「静寂を受け入れ、思考と呼吸に意識を集中させることで、他の方法ではなかなか取り戻せない気付きや平穏を得る可能性が高まります」と述べています。トーダー氏によると、静寂が不快を伴う可能性を受け入れることで、「なぜ静寂から気をそらすような刺激を得たくなるのか」を理解する事が可能になり、静寂の中で思考を整理できる豊かな創造プロセスへとつながるとのこと。
トーダー氏は著書「Inward Traveler(内なる旅人)」の中で、静寂を受け入れて創造性を高める方法を示しています。静寂に意識を向ける際には、ある程度時間をとってリラックスし、内なる雑音や考えの脱線に気付くことが重要です。そして、もし難しかったり不安や不快さを感じたりしたら、一度静寂を手放し、可能なタイミングで再び静寂に浸ります。山や海といったやかましい音がない静寂の中で意識を安らげる経験がほんのひとときでもできたら、日常生活の中でも短い時間の静寂を受け入れてリラックスできるようになるとトーダー氏は語っています。
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