人類はいまだに深海底の0.001%しか視覚的に探索できていない

2025年5月に発表された研究によると、人類は地球の深海底のわずか0.001%しか可視的に観察していないことが明らかになりました。この研究は深海探査団体のOcean Discovery Leagueやスクリップス海洋研究所、ボストン大学の共同研究チームによって行われました。
How little we’ve seen: A visual coverage estimate of the deep seafloor | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adp8602
We've Only Glimpsed 0.001% of Earth's Deep Seafloor, Study Reveals : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/weve-only-glimpsed-0-001-of-earths-deep-seafloor-study-reveals
研究者たちは水深200メートル以上の深海潜水記録を4万3000件以上分析しました。その結果から、人類が過去67年間で視覚的に観察した深海底の面積は最大でもわずか3823平方キロメートルだと推定しています。これは深海底全体の面積3億3570万平方キロメートルのうちの約0.001%で、日本でたとえると埼玉県の面積よりわずかに広い程度です。また、別の方法で算出すると、人類が視覚的に観察した深海底の面積は約2130平方キロメートルとなり、もっと狭くなるとのこと。

深海底は地球の表面積の66%を占めていますが、その多くは未知のままです。研究によれば、1960年代から2010年代にかけて深海潜水の回数は4倍に増加しましたが、観測の偏りも明らかになっています。1960年代には潜水の約60%が水深2000メートル以上で行われていましたが、2010年代には25%に減少しました。しかし、海洋の約75%は水深2000〜6000メートルとされているため、深海潜水の観察範囲はそれほど広がっていないことになります。

また、地理的な偏りも顕著で、3万5000回以上行われた排他的経済水域内での潜水のうち、70%以上がアメリカ・日本・ニュージーランドの3カ国で実施されていました。さらに、1958年以降の全潜水の97%はアメリカ・日本・ニュージーランド・フランス・ドイツの5カ国によって行われたものでした。
海底地形に関する観察も非常に偏っており、海底の特定の地形的特徴、特に海底渓谷や崖、斜面などが過剰に観察される一方、大陸棚や海丘、深海平原などの特徴は相対的に観察が少ないことがわかりました。
たとえば、世界中には9472カ所の海底渓谷が確認されていますが、そのうち視覚的に少なくとも1回観察されたのはわずか442カ所。最も観察された渓谷はアメリカ西岸沖にあるモントレー海底渓谷で、この1カ所だけで世界中の海底渓谷観察活動の48.2%が行われていることがわかりました。2位は日本の相模湾でした。

Ocean Discovery Leagueの創設者であり会長のキャサリン・ベル氏は「気候変動から潜在的な採掘や資源開発まで、深海への脅威が加速する中、これほど広大な地域の限られた探査は科学と政策の両方にとって重大な問題となっています」と述べています。
なお、研究チームは、仮に世界中で1000台以上の探査機を追加して深海底の探査を増やしたとしても、地球の海底全体を視覚化するには約10万年かかると予測しています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk
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