サイエンス

ADHDの人は性機能の問題や性生活の苦痛を経験する可能性が高い


注意欠如多動症(ADHD)は落ち着きのなさや衝動性、注意力散漫といった特徴を持つ発達障害であり、日常生活のさまざまな場面で支障が出る可能性があります。そんなADHDの人はそうでない人と比較して、性機能の問題や性生活の苦痛が多いという研究結果が発表されました。

Distressing Problems with Sexual Function and Symptoms of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder | Archives of Sexual Behavior
https://link.springer.com/article/10.1007/s10508-024-02977-4


New study links ADHD symptoms to distressing sexual problems
https://www.psypost.org/new-study-finds-link-between-adhd-symptoms-and-distressing-sexual-problems/

性機能障害の認知モデルは、性機能に困難を覚える根底のメカニズムのひとつとして、注意散漫があると位置づけています。そのため研究者らは、注意力の欠如を抱えているADHDの人々は、性機能に問題が生じるリスクが高いのではないかと考えてきたとのこと。

心理学系メディアのPsyPostは、「結局のところ性行為には、集中力と感情的な同調が必要なことが多いものです。その特性はADHDの症状によって妨げられる可能性があります」と述べています。

これまでにもADHDと性機能についての研究は行われてきましたが、多くの研究はサンプルサイズが小さいほか、性機能障害の診断に不可欠な要素である「性生活の苦痛」を評価していなかったとのこと。そこでカナダのブリティッシュコロンビア大学などの研究チームは、大規模なサンプルと検証済みツールを使用してこれらの関連性を調査することにしました。


研究はカナダに住む943人の成人を対象に行われ、被験者はオンラインプラットフォームを通じて注意力などに関連する症状や性機能、性生活の苦痛を評価する一連のアンケートに回答しました。被験者のうち106人が、世界保健機関(WHO)が開発したスクリーニングツールに基づき、「ADHDの可能性が高い」と診断される基準を満たしていたとのこと。

性機能は「性的欲求」「性的興奮」「オーガズムに達する能力」「オーガズムへの満足度」「潤滑や勃起などの身体的反応」など、いくつかの項目を調べるArizona Sexual Experiences Scale(アリゾナ性体験尺度)で測定されました。また、性生活に関する苦痛を評価するために、性生活の問題で不安や欲求不満、不満足感などを感じる頻度が測定されました。

データを分析した結果、ADHDの重症度が高いほど性機能の問題が多く、性生活の苦痛をより頻繁に感じることが明らかになりました。具体的には、ADHDの症状が多い人はオーガズムに達するのがより困難で、達した場合でも満足度が低かったと報告されています。また、ADHDの人々は自身の性生活について心配したり、動揺したりする割合が高かったとのことです。

一方、性的欲求や興奮、あるいは潤滑や勃起といった身体的な反応については、ADHDの人とそうでない人に有意な差はみられませんでした。このパターンは、ADHDに関連する注意力の問題が性的反応の後期、特に持続的な集中や感覚の調節を必要とする段階において、支障を来す可能性があることを示唆しています。


今回の研究では、ADHDの症状を持つ人の中でも、若いほどオーガズムの困難さと強い関連があることが示されました。これは、ADHDの症状が年齢と共に和らいでいくことが多いためかもしれないと考えられています。

また、ADHDの症状と性生活の苦痛の関係は男女共にみられたものの、その関連性は男性の方が強いことがわかりました。この点についてPsyPostは、ADHDの男性は性的なパフォーマンスに対する社会的期待のため、より多くのプレッシャーを感じている可能性があると指摘しました。


重要な発見として挙げられているのが、ADHDの可能性が高い人はそうでない人に比べて、苦痛を伴う性機能障害の臨床基準を満たす可能性が2倍以上高いという点です。さらに詳しく調べたところ、ADHDの症状と性生活の苦痛との関連性は、感情調節の難しさによって部分的に説明できることも判明。つまり、ADHDの人々は激しい感情をコントロールするのに苦労しやすく、その影響で性的問題に直面するとより動揺し、対処が難しくなることがあるというわけです。

研究チームは、「これらのデータは、ADHDと苦痛を伴う性機能の問題との関連性、およびADHDと性機能障害の根底にある潜在的なメカニズムとして、感情調節の困難さがあることを支持しています」と結論付けました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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