サイエンス

暴力犯罪者は曖昧な表情を「怒っている」と認識しやすいことが判明


暴力事件を起こして投獄された囚人を対象としたドイツの研究により、攻撃的な犯罪者は相反する感情がない交ぜになったどっちつかずの表情を「怒っている」と感じる傾向が強いことがわかりました。

Perception of emotional facial expressions in aggression and psychopathy | Psychological Medicine | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/psychological-medicine/article/perception-of-emotional-facial-expressions-in-aggression-and-psychopathy/9B031AD0B060B7BDD374BB594AEF5FF0

Violent offenders more likely to perceive ambiguous faces as angry, study shows
https://www.psypost.org/violent-offenders-more-likely-to-perceive-ambiguous-faces-as-angry-study-shows/

過去の研究では、暴力犯罪者は恐怖の処理能力に障害を抱えている可能性があることが示唆されており、このことから「犯罪者には自分自身の恐怖や、他者の恐怖を認識することが困難な傾向があるのではないか」と主張する専門家もいます。


それが果たして本当なのかを検証するため、オランダのアムステルダム大学とドイツのテュービンゲン大学の研究チームは、人が恐怖や怒りの表情をどのように認識するかを調べる4つの実験を行いました。

研究の対象者はドイツの矯正施設で服役中の男性暴力犯罪者65人で、そのうち21人は事前に行われたサイコパステストの「Hare精神病質チェックリスト改訂版」でサイコパスだと診断されるほど高いスコアを示したとのこと。また、犯罪者グループと年齢をそろえた一般人60人も対照グループとして実験に参加しました。

一連の実験のうち最初の2つは「視覚探索課題」と呼ばれるもので、参加者はダミー7つとターゲット1つの合計8つの顔写真の中から、「無表情」「喜び」「恐怖」の表情をしたターゲット1つを見つけるよう指示されました。2回行われた「視覚探索課題」の違いは赤色に着色されたターゲットが入っているかどうかで、他の条件は同じでした。


3つ目の「アンビバレンス課題」は、恐怖と幸せ(左)、怒りと幸せ(中央)、怒りと恐怖(右)がそれぞれ「3:7」「5:5」「7:3」の割合でブレンドされた顔写真を見て、どちらの感情の方がより支配的と思うかを回答するというもの。


4つ目の「モーフィング課題」では、無表情な顔がだんだん変化していくのを見せて、どの段階で恐怖・喜び・怒り・悲しみの感情を判別できたかを計測しました。


実験の結果、暴力犯罪者が恐怖を認識しにくいことや、サイコパス的な傾向や攻撃性が恐怖の表情の読み取りにくさと関連していることを示す証拠は得られませんでした。同様に、怒りの顔を敏感に読み取ってしまうことと、サイコパス傾向や攻撃性が関連しているということもありませんでした。

これは、「サイコパス傾向や攻撃性が恐怖を認識しにくいことと関連している」という説に疑問を投げかける研究結果が近年増えているのと符合すると、研究チームは指摘しています。

その一方で、暴力犯罪者グループは対照グループに比べて、幸せと怒りが50%ずつ混じった曖昧な表情を「怒っている」と認識する可能性が有意に高いという結果が得られました。この傾向は、攻撃性のスコアが高い暴力犯罪者においては特に顕著だったとのこと。

そのことを示すグラフが以下。対照グループ(青線)、犯罪者グループ(黄線)、特にサイコパス傾向が高い犯罪者グループ(赤線)の結果を見ると、怒りと幸せが半々の表情の認識が3つのグループで大きく異なることがわかります。


今回の研究は、男性の犯罪者だけが対象だったため、女性犯罪者や、攻撃性やサイコパス度が強いものの収監はされていない一般人には当てはめられません。また、感情の一部しかテストされていないので、基本的な感情のすべてを網羅しているわけではないほか、静止画像だけが使われたため、表情の変化に関する認識の違いを見落としている可能性なども指摘されています。

その上で、研究グループは査読付き医学誌・Psychological Medicineに掲載された論文の中で、「4つの実験を通して、サイコパス傾向と恐怖を含む感情の知覚障害は見られませんでしたが、怒りに対する認知バイアスと攻撃性との間には関連性が見られました。これらの結果は、サイコパス傾向が感情処理の異常から生じるという見解に疑問を投げかけるとともに、『敵意帰属バイアス』、つまり敵意を感じやすいことが攻撃的行動の根底にあるという考えを支持するものです」と結論付けました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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