妊娠中の母親の食生活が子どものADHDリスクに影響を及ぼしている可能性

妊娠中の母親による飲酒や喫煙などは、胎児の発育に悪影響を及ぼすことが知られています。新たな研究では、妊婦の食生活が子どものADHD(注意欠如・多動症)リスクに影響を及ぼす可能性があると判明しました。
A western dietary pattern during pregnancy is associated with neurodevelopmental disorders in childhood and adolescence | Nature Metabolism
https://www.nature.com/articles/s42255-025-01230-z

New Research: Strong Link Between Western Diet During Pregnancy and ADHD – University of Copenhagen
https://science.ku.dk/english/press/news/2025/new-research-strong-link-between-western-diet-during-pregnancy-and-adhd/
Maternal Diet in Pregnancy Linked to Child's Risk of Future Disorders : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/maternal-diet-in-pregnancy-linked-to-childs-risk-of-future-disorders
近年はADHDをはじめとする子どもの神経発達障害や、そのリスク因子についての研究が進んでいます。しかし、妊婦の食生活が子どもの神経発達障害が及ぼす影響については、これまであまり研究されてきませんでした。
そこで、デンマークのコペンハーゲン大学などの研究チームは、デンマークとアメリカで実施された4つの大規模な研究データを用いて、妊婦の食生活と子どもの神経発達障害についての関連性を分析しました。
研究には合計で6万組以上の母子のペアが参加し、データには母親の妊娠期間中の食事パターンや血液サンプル、子どものADHD診断結果などの情報が含まれていました。母親の血液サンプルは妊娠期間中のさまざまな時点で採取され、研究チームはメタボロミクスを通じて母親の代謝産物を分析し、結果に影響を及ぼす可能性がある代謝物について調べたとのこと。

分析の結果、4件の研究すべてにおいて妊婦が「西洋的な食事」をとることと、子どものADHDリスクの増加に関連性が確認されました。たとえば、少し食生活が西洋的な食事に近くなるだけでも、ADHDのリスクが66%増加したとのことです。また、1つの研究では妊婦の西洋的な食事と、子どもの自閉症の間にも関連性が示されたと報告されています。
論文の筆頭著者でコペンハーゲン大学の食品科学者であるデビッド・ホーナー博士は、「妊娠中の西洋的な食事、つまり脂肪分・砂糖・精製品が多くて魚・野菜・果物が少ない食事に偏るほど、子どもがADHDや自閉症を発症するリスクが高まるようです」と語っています。
今回の研究では「西洋式の食事」について、以下のグラフで赤色で示された食品をより多く食べ、緑色で示された食品をより少なく食べるパターンとして定義されています。西洋式の食事に多く含まれる食品には「Animal fats(動物性脂肪)」「Refined grains(精製穀物)」「High energy drinks(高カロリー飲料)」「Spices(スパイス)」「High fat dairy(高脂肪乳)」「Snacks(スナック)」「Red meet(赤身肉)」などが挙げられています。一方で西洋式の食事に含まれていない食品には、「Fruit(フルーツ)」「Fish(魚)」「Tomatos(トマト)」「Water(水)」「Green leafy vegetables(緑色の葉物野菜)」などが挙げられていました。

研究では、食生活とADHDリスクの関連性が最も高いのは妊娠初期から中期であることも確認されました。論文の共著者であるコペンハーゲン大学のモーテン・アーレント・ラスムッセン教授は、「コホート間で比較すると、妊娠初期と中期に最も強い関連性が観察されました。これは、この時期の胎児における脳の発達が、母親の栄養の影響を特に受けやすいことを示唆しています」とコメントしています。
また、血液サンプルのメタボロミクス分析により、食生活と神経発達障害の関連性を説明する可能性がある43種の代謝物も判明。これら43種の代謝物のうち、15種は特にADHDリスクの増加と強く関連していることがわかりました。その多くが摂取した食事に関連しており、初期の神経発達に重要な炎症と酸化ストレスの調節に重要な役割を果たしていたとのことです。
今回の研究結果を不安に思う人も多いかもしれませんが、逆に言えば食生活を少し改善するだけで、子どもの脳の発達にプラスの影響を与える可能性があることも示しています。ホーナー氏は、「私たちの分析は、食事とADHDリスクとの間に強い関連性があることを確認しただけでなく、食事ガイドラインの改善や予防戦略の基礎となり得る栄養素や食品も特定しました。このことは、食事に関する推奨事項を改善し、将来の世代をより健康的にするための新たな可能性を開くものです」と述べました。
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