海流のエネルギーを使うのに最も都合の良い場所はどこか?

温室効果ガスの排出量を削減する試みが世界中で行われていることに伴い、化石燃料を使った従来の発電方法とは異なる、クリーンな発電方法の開発が求められています。そのうちの1つとして候補に挙がる、海流の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方法「海流発電」を最も効率的に実行できる場所が調査により判明しました。
Drifter-based global ocean current energy resource assessment - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0960148125002381
Global study identifies top sites for ocean current energy
https://techxplore.com/news/2025-03-ocean-energy-production-worldwide-revealed.html
フロリダ・アトランティック大学のマフサン・サドギプール氏らは、「地球表面の70%以上を占める海洋は、運動エネルギーと電位エネルギーの両方において、再生可能エネルギーとして大規模に利用できるという大きな可能性を示しています。理論的には年間15万1300TWhもの電力を得られる海洋エネルギーですが、風力発電や太陽光発電などに比べてまだ開発の初期段階にあります。こうしたエネルギーを有効的に使うためには、海洋エネルギー資源を徹底的に評価、マッピングすることが不可欠です」と前置きし、アメリカ海洋大気庁が30年以上にわたり計測したデータを用いて「最も海洋エネルギーが豊富な場所」を調査しました。
サドギプール氏らは海流の運動エネルギーを用いた発電方法に焦点を当て、複数の地点で流速および深さを測定。1988年3月から2021年9月までに得られた、計4300万点以上のデータを使用しました。
その結果、フロリダ州東海岸沖と南アフリカ沖の海域は一貫して高い発電密度を示し、海流による発電に理想的であることが明らかになりました。
以下は、地域ごとの電力密度を示したヒートマップです。アメリカの東海岸や南アフリカは1平方メートルあたり2500W以上の出力密度を示しており、これは高密度な風力エネルギー資源の2.5倍のエネルギー密度だったとのことです。

さらに、この地域は水深が約300メートルと比較的浅いため、海流タービンを使ってエネルギーを取り出すのに適しているといいます。日本や南アメリカでも流速が速い地域があったものの、どれも水深が深く、300メートル級の深さで同様の出力密度は示しませんでした。

今回の調査ではデータの信頼性という新たな問題も浮上しました。北アメリカや日本では、計算の信頼性が高く、エネルギーポテンシャルの予測に確信を持つことができ、今回とは別の測定方法で得られた先行研究の測定値ともほぼ一致したことから、これらの地域で得られた知見の信頼性が高いことが確認されました。一方で南アフリカや南アメリカの一部、特にブラジル北部やフランス領ギアナ沖のような地域は、データが限られていたり、水の状態が非常に変動しやすかったりするため、評価が難しかったとのことです。
このため、たとえ効率的な発電が可能だとする地域を予測できたとしても、そのデータが確かなのかどうかについてさらなる調査が必要だとのことです。そのコストを鑑みると、ある程度電力密度が確からしい地域で発電を実施した方が効率的である場合もあります。
加えて、季節による変動も影響してくるそうです。北半球の暖かい時期(6月から8月)には、フロリダ、日本、ブラジル北部などの地域で高い電力密度が観測され、同様に南アフリカは暖かい時期(12月から2月)に電力密度が高くなります。暖かい時期はエネルギー需要も高まることから、需要と供給のバランスを取れるという点からも、海流発電を導入するメリットはあるとのことです。

共著者のジェームズ・H・ヴァンズウィーテン・ジュニア氏は、「水深と出力密度の関係は、タービンの配置と設計にとって極めて重要です。タービンを安定稼働させるためには高度な係留システムが必要となるのですが、水深が深くなると設置やメンテナンスにかかるコストや複雑さも懸念されるため、このような困難な環境に特化した技術の開発が不可欠となります」と述べました。
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