地球の海はかつて青色ではなく緑色だった可能性

「海は青い」というのは現代の感覚では当たり前のことですが、数十億年前は青色ではなく緑色だった可能性があります。名古屋大学のチームが「緑の海仮説」を提唱し、なぜ緑色だったと考えられるのかを解説しました。
Archaean green-light environments drove the evolution of cyanobacteria’s light-harvesting system | Nature Ecology & Evolution
https://www.nature.com/articles/s41559-025-02637-3
太古の昔、生命を育んだ海は「緑色」だった!? ~25億年前の地球と光合成生物の進化の解明~ - 名古屋大学研究成果情報
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2025/02/-25.html
約24億年前の地球では、現在とは異なる環境が広がっていました。この時代、光合成を行う原核生物「シアノバクテリア」が酸素を作り出し、地球の酸素濃度を増加させるきっかけ「大酸化イベント」を発生させたとされています。
現代に生息する地球上の光合成生物は、太陽光の中でも主に青色や赤色の光を吸収する「クロロフィル(葉緑素)」と呼ばれる色素で光合成をしています。ところが、同じように光合成をするシアノバクテリアは、クロロフィルに加えて「フィコビリン」という色素を用いて緑色の光を利用できる特徴を持っています。しかし、なぜシアノバクテリアがフィコビリンを利用するに至ったのか、なぜ緑色の光が必要だったのかは明確にわかっていませんでした。

名古屋大学の松尾太郎氏らは太古の地球の環境に着目し、古代の水中環境における酸素、還元鉄、鉄水酸化物の分布を予測しました。
約24億年前の地球は現在とは異なり、大気中の酸素がほとんど存在しない「貧酸素環境」で、二酸化炭素が多く水中の環境が酸性に傾き、陸地の浸食が比較的早く、大量の鉄が海に流れ込んでいました。これにより、現代の海洋にはない二価の鉄が海全体に広がっていたと考えられています。

このような環境の中で酸素の発生を伴う光合成が行われると、徐々に酸化が始まり、水中に溶け込んだ二価の鉄は酸化鉄に変化し、水の中に漂い始めます。
この環境を想定し、松尾氏らがシミュレーションと実験を行ったところ、海に広がった酸化鉄が紫外線から青い光までを効率よく吸収することに加え、水が赤い光を吸収するために、太古の海は緑の光であふれていた可能性があることがわかったそうです。
ところが、緑の光であふれる環境は、青と赤の光を吸収するクロロフィルで光合成を行う生物にとって過ごしにくいものでした。その中で、残った緑の光を吸収するよう進化した生物こそがシアノバクテリアだったと松尾氏らは主張しています。

松尾氏らが現存するシアノバクテリアを遺伝子操作して過去の自然淘汰をシミュレートした結果、「フィコエリスロビリン」と呼ばれる緑色に特化したフィコビリンを獲得したシアノバクテリアが、緑色の光環境の下で繁栄した可能性が示唆されたとのこと。緑の光が優勢という環境が選択圧として働いたことで、効率的に緑の光を吸収する形質を獲得した可能性があるといいます。
松尾氏らは「光合成生物の活動によって生まれた緑の海は、紫外線を効率的に遮へいすることで生命を育む現場になりました」「緑色の海の存在が、遠くの惑星の生命の存在を示す指標にもなるかもしれません」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1p_kr
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