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白人至上主義団体のKKKをニュースサイトの「さまざまな意見を提供するAIツール」がうっかり擁護してしまう


アメリカの日刊紙であるロサンゼルス・タイムズのウェブ版に、2025年3月3日から新たなAI機能「Insight」が搭載されました。Insightは記事の内容に対し、異なる視点からの意見をAIが提供するツールとなっていましたが、搭載直後にアメリカの白人至上主義団体「KKK」を擁護する意見を表示してしまったと報じられています。

MAGA Newspaper Owner’s AI Bot Defends KKK
https://www.thedailybeast.com/maga-newspaper-owners-ai-bot-defends-kkk/


LA Times Uses AI to Provide "Different Views" on the KKK
https://futurism.com/la-times-ai-kkk

ロサンゼルス・タイムズのオーナーであるパトリック・スーン・シオン氏は3月3日の公開書簡で、特定の立場から書かれた記事には「Voices」というラベルを貼り、事実のみを報じるニュース記事と区別できるようにすると発表しました。さらに、一部のVoicesラベルが貼られた記事で、AIにより生成された別の立場からの意見を紹介する「Insights」という新機能もリリースしました。

InsightsはVoicesラベルが貼られたコンテンツを分析し、表明された意見が政治的スペクトルのどの位置に当てはまるのかを特定した上で、さまざまな情報源に基づいた異なる見解を提供します。AIが生成した意見はロサンゼルス・タイムズの記者によるレビューを受けず、ジャーナリズムの品質やそれが支持する視点について判断を下すものではないとのこと。スーン・シオン氏は、「より多様な視点を提供することは、私たちのジャーナリズムの使命をサポートし、読者がこの国が直面している問題を理解するのに役立つと信じています」と述べています。


これに対し、ロサンゼルス・タイムズの労働団体であるL.A. Times Guildのマット・ハミルトン副会長は、各社に送った声明で「私たちは、編集スタッフにより吟味されていないAIが生成した分析というアプローチが、メディアの信頼性を高めることにつながるとは考えていません。それどころか、このツールはニュースに対する信頼をさらに損なう可能性があります」と批判しました。

AIの活用を推進するオーナーの下で導入されたInsightsでしたが、生成した見解に「白人至上主義団体のKKKを擁護する内容」が含まれていたという指摘が上がりました。

問題となったのは、ロサンゼルス・タイムズが2月25日に公開した以下の記事に追加された見解です。以下の記事では、「カリフォルニア州アナハイム市で1925年2月に4人のKKKメンバーが市議会議員に当選したが、市民や地元紙の反対運動によってリコールされた」という内容が紹介されています。

100 years ago, Anaheim recalled its KKK city council. Why don't we remember? - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/california/story/2025-02-25/anaheim-ku-klux-klan-council-recall-1925


ニューヨーク・タイムズの記者であるライアン・マック氏は、この記事に対してInsightsが「現地の歴史的記述では、1920年代のKKKを明確なヘイトに基づく運動というよりは、社会の変化に対応する『白人プロテスタント文化』の産物として捉えており、そのイデオロギー的脅威を最小化することがあります」と、KKKを擁護するかのような補足をしたことを指摘しました。また、その上の記述でも、一部の人々はKKKが悪かったという「正式な証拠」がないと考えていることが記されています。

Earlier today the LA Times had AI-generated counterpoints to a column from @gustavoarellano.bsky.social. His piece argued that Anaheim, the city he grew up in, should not forget its KKK past.

The AI "well, actually"-ed the KKK. It has since been taken off the piece.

www.latimes.com/california/s...

[image or embed]

— Ryan Mac 🙃 (@rmac.bsky.social) 2025年3月4日 14:34


指摘から数時間以内に、当該記事からInsightsによる見解は削除されましたが、その他のVoicesラベルが付いた記事では記事作成時点でもInsightsが有効となっています。ロサンゼルス・タイムズのコミュニケーションチームは、メディアからの問い合わせに回答しませんでした。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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