サイエンス

キノコに含まれる食物繊維がインフルエンザによる死亡率を下げる可能性があると判明


キノコはおいしい上にビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富に含まれており、健康にいい食品として知られています。そんなキノコに含まれるβグルカンという食物繊維が、インフルエンザから体を保護する効果を持っている可能性があると判明しました。

β-Glucan reprograms neutrophils to promote disease tolerance against influenza A virus | Nature Immunology
https://www.nature.com/articles/s41590-024-02041-2

New discovery could help protect against influenza | Newsroom - McGill University
https://www.mcgill.ca/newsroom/channels/news/new-discovery-could-help-protect-against-influenza-363625

Common Mushroom Fiber May Protect Against Flu, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/common-mushroom-fiber-may-protect-against-flu-study-finds

βグルカンはキノコをはじめとする真菌類のほか、大麦やオート麦などの穀物の細胞壁を構成する食物繊維の一種です。それぞれの食品に含まれるβグルカンには分子構造や分子量の違いがあり、それぞれの溶解性や生理的影響に影響しているとのこと。


新たにカナダ・マギル大学の研究チームは、マウスにβグルカンを投与した後にインフルエンザウイルスに感染させ、βグルカンを投与しなかった対照群のマウスと経過を比較しました。その結果、βグルカンを投与されたマウスの方が肺の損傷が少なく、死亡リスクが低いことがわかりました。

以下のグラフは、インフルエンザウイルス感染後の体重減少を示したもので、縦軸が体重減少率を、横軸が感染後の日数を示しています。青い線で示されたβグルカンを投与されたマウスは、黒い点線で示された対照群のマウスと比較して体重減少が少なく、ウイルス感染の影響が少ないことがうかがえます。


また、以下のグラフはインフルエンザウイルス感染後の死亡率を示したもので、縦軸が死亡率、横軸が感染後の日数を示しています。青い線で示されたβグルカンを投与されたマウスは、黒い点線で示された対照群のマウスと比較して死亡率が低いことが確認できます。


以下の図はマウスの肺組織を感染前(左)と感染6日後(右)で比較したもので、対照群のマウス(上)は感染後に組織が激しく損傷した一方、βグルカンを投与されたマウス(下)は損傷が少ないことが示されています。


βグルカンがインフルエンザウイルスからの保護効果をもたらすメカニズムについては、免疫細胞の一種である好中球を再プログラミングし、肺の過剰な炎症を防ぐためだと考えられます。インフルエンザによる死亡のほとんどは、ウイルス自体ではなく免疫の過剰反応によって引き起こされます。そのため、βグルカンが好中球の過剰反応リスクを制限することで、インフルエンザウイルスの感染後に肺炎などの深刻な合併症が起きにくくなるというわけです。

論文の共同筆頭著者であるマギル大学のキム・トラン氏は、「以前から好中球は炎症を引き起こすことで知られてきましたが、βグルカンには炎症を抑えるように好中球の役割をシフトさせる能力があります」と述べています。

また、マギル大学の免疫学者であるマジアー・ディバンガヒ教授は、「βグルカンはすべての真菌の細胞壁に含まれており、そうした真菌の中にはヒトの微生物叢(そう)の一部として体内に生息しているものも含まれます。部分的なβグルカンの影響により、個人の真菌のレベルや構成が、感染症に対する免疫システムの反応に影響を与えているのではないかという仮説は興味深いものです」とコメントしました。

なお、今回の研究はあくまでマウスを対象に行われたものであるため、人間でも同様の効果が出るかどうかは不明です。研究チームは今後、調査結果を人間にも適用できるかどうか調べるとのことです。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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