修理に数千万円の費用がかかる医療機器のメーカーが「今後病院側の勝手な修理は許さない」と発表、修理する権利に反するものだとして話題に

大手医療機器メーカーのテルモがカーディオバスキュラー事業で取り扱っている人工心肺装置の「Advanced Perfusion System 1 Heart Lung Machine」について、以前まで修理技術者に付与されていた認定資格の更新が終了することがわかりました。修理自体はテルモの公式サービスを利用することで引き続き行えますが、他社の認定技術者に依頼できなくなるため高額になってしまうとの指摘があります。
Medical Device Company Tells Hospitals They're No Longer Allowed to Fix Machine That Costs Six Figures
https://www.404media.co/medical-device-company-tells-hospitals-theyre-no-longer-allowed-to-fix-machine-that-costs-six-figures/
病院は院所属の修理技術者や請負業者を雇って院内の医療機器を修理させています。テルモはこうした修理技術者に自社医療機器の修理を許可するための認定資格を付与しており、Advanced Perfusion System 1 Heart Lung Machineも修理に認定資格が必要な機器の1つでした。
海外メディアの404 Mediaによると、上記機器の認定資格の更新が終了し、すでに資格を有している技術者は有効期限が来るまで修理に従事できるものの、期限後は修理を行えなくなるということです。
以下が病院向けに送られたというメッセージで、「テルモ カーディオバスキュラーは、Advanced Perfusion System 1 Heart Lung Machineの修理および保守に関する認定の提供を中止します。当社はこの資格がこれまで提供してきた価値を認識しており、提供を中止するという決定は慎重に検討した上でのことです。機器とコンポーネントに対する直接的なサービスは引き続き適用します」と記されています。

テルモが404 Mediaに寄せた声明によると、「認定資格プログラムへの参加者が減少しており、機器が適切にメンテナンスされているかどうかを適切に確認するためには、テルモの社内チームによるサービスを義務付けることが最善の方法であると判断した」とのことでした。
今回の変更により、病院は直接テルモと修理契約を結ぶ必要が生じます。
404 Mediaは、「これは合理的な変更に見えるかもしれませんが、回り回って医療費を押し上げることにつながる可能性がある」と指摘しています。
Advanced Perfusion System 1 Heart Lung Machineは、心臓を切開する手術(開心術)の最中に血液を再循環させるために使われる高度な医療機器で、404 Mediaいわく修理には数千万円規模の費用が必要になるとのこと。ところが、このような機器を修理する際、外部の技術者ではなく公式のサポートに頼ると費用が2~3倍高く付くことがあるため、修理するための選択肢が減るのは大きな問題につながりかねないといいます。

病院の医療機器修理に携わる関係者は、「私が恐れていることの1つは、機器が故障した場合、そのメーカーのエンジニアの都合に左右されて修理が遅れてしまう可能性があるということです。もし開心術を待っている人がいれば、『機械が故障したので延期します』と伝えなければなりません。これは人生を左右するような事態に陥っている患者にとって不利益です」と話しています。
また、テルモの機械修理に詳しい関係者は「テルモのシャツを着ているからといって、病院内の技術者よりも有能な技術者ということにはなりません。メーカーとサービス契約を結ぶコストは、第三者と結ぶ場合と比較しておそらく10倍はかかるでしょう。1台の機器に対する契約は大したことではありませんが、それが多くの機器にまたがるようになると、結局は費用がかさみます。アメリカの医療制度が世界でも高い方であることは周知の事実ですが、こうした修理費用も医療費を押し上げる原因の1つになっているのです」と話しました。
404 Mediaは、今回の件は「修理する権利」に反するものだと指摘しています。修理する権利とは、メーカーに頼らずとも消費者自身や第三者の手により機器を修理できるようにすることを求める権利のことで、修理手段をメーカーが独占することで修理費用が高額になりがちになる問題を回避するものとして、主にアメリカで権利の拡充が求められています。
アメリカでは特に農業機械に関して修理する権利が騒がれることが多く、農業機械の修理手段が限られている上に何日も待たされることがあるため、農家は重要な収穫時期に作物を失うことになったという報告などが相次いでいます。2025年1月には、農業機械メーカーのジョン・ディアが独占的な修理慣行で連邦取引委員会から訴えられています。
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in Posted by log1p_kr
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