生き物

群れを支配する「アルファオス」のヒヒはメスを独占するために多大なストレスを受ける


野生のヒヒを調べた研究により、群れを支配する層「アルファオス」に成り上がったオスは他のオスよりもストレスを受けやすく、エネルギー消費量も多いことがわかりました。研究者らは「社会的に高い地位にある動物が受けるであろうストレスへの理解が深まった」と伝えています。

Energetic costs of social dominance in wild male baboons | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2024.1790

Being a Ladies’ Man Comes at a Price for Alpha Male Baboons | Duke Today
https://today.duke.edu/2025/01/being-ladies-man-comes-price-alpha-male-baboons

Alpha Male Baboons Have High Stress and Shorter Lives — And It's All for Love
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/alpha-male-baboons-have-high-stress-and-shorter-lives-and-its-all-for-love/

飼育下の霊長類を対象とした先行研究では、社会的に低位にある個体ほど副腎皮質ホルモンである「グルココルチコイド」の濃度が高いことがわかっており、こうした個体は日常生活で起き得る出来事を予測することができないためにストレスを抱えやすいのではないかとの考察が行われていました。

ストレスが生じると、脳はグルココルチコイドやその他のホルモンを分泌し、エネルギーを動員して身体が困難な状況に対処するのを助ける役割を果たします。人間の場合、待ち合わせに遅れて走ったり、上司とのストレスの多い会議に臨んだりするときに分泌されるとのことです。

飼育下の動物では低位の個体ほどストレスを受けやすい一方で、野生の動物においては高位にある個体ほどグルココルチコイドの濃度が高く、高位にある動物は予測で受けるストレスが少ないはずだという仮説と矛盾していました。


こうした点に目を付けたデューク大学のローレンス・ゲスキール氏らは、野生のオスのヒヒから採取したふん便を分析した結果と、204頭のオスのヒヒから得られた14年間の行動記録を組み合わせ、社会的地位の高いオスが一体何からストレスを受けているのかを調査しました。

その結果、群れを支配する「アルファオス」のグルココルチコイドの濃度は、他の地位のオスより6%高かったことが判明します。


さらに、行動分析により、アルファオスのストレスの原因は意外なところにあることがわかりました。当初、アルファオスは他のオスと戦い続けるためにストレスを感じているのではないかとの仮説が立てられていましたが、こうした行動はむしろ特にストレスを感じていないということが判明します。そのかわりゲスキール氏らは、アルファオスのヒヒがエネルギーを消耗するのはずばり「仲間」であることを発見しました。

ゲスキール氏らによると、アルファオスのストレスホルモンは繁殖可能なメスを独占している時間と直接相関しており、他のオスが接近するのを阻止することこそがアルファオスにストレスを感じさせる要因だったといいます。また、アルファオスは摂取カロリーよりも消費カロリーが多く、これはストレスが多いだけでなく物理的に疲れていることを示唆しているとのことです。


群れを支配するアルファオスのヒヒは、交尾の権利を守るため、繁殖が可能な時期のメスを注意深く監視して何日もメスの後をつけまわし、自分が子孫を残すことができるかを確認するという習性を備えています。これには絶え間ない警戒を必要とし、アルファオスはメスが立ち上がってどこかへ行くたびについていくため、自らの食事を中断しなければならないこともしばしばあるそうです。

対照的に、アルファオスが他のオスと戦う際に感じるストレスは微量でした。これは、アルファオスが一度トップに立つと、その個体は眉をひそめたり牙を見せたりするだけで他のオスを怖がらせることができるためだと考えられています。

ゲスキール氏は「我々人間のヒエラルキーはもっと複雑なのでヒヒの結果をそのまま当てはめることはできませんが、少なくともヒヒにとっては、高位を維持することは間違いなく長期的なストレスの影響をもたらすでしょう」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1p_kr

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