腸活にはプロバイオティクスより「食物繊維」の方が有効な可能性があるとの研究結果

人間の腸内には天の川銀河の星の数より多くの腸内細菌が存在しており、人の健康に重要な役割を果たしています。そんな腸内細菌の健康的なバランスを維持する上では、生きて腸に届く善玉菌を直接摂取するプロバイオティクスより、善玉菌のエサとなる食物繊維を摂取して腸内環境を整えてもらうプレバイオティクスの方が重要な可能性があることを示す研究結果が発表されました。
Ecological dynamics of Enterobacteriaceae in the human gut microbiome across global populations | Nature Microbiology
https://www.nature.com/articles/s41564-024-01912-6
Fibre may help protect your gut from overgrowth of harmful bugs – new study
https://theconversation.com/fibre-may-help-protect-your-gut-from-overgrowth-of-harmful-bugs-new-study-246910
イギリス・ケンブリッジ大学の主任研究員であるアレクサンダー・アルメイダ氏らの研究チームは、2025年1月10日に査読付き学術誌・Nature Microbiologyに掲載された論文で、世界45カ国の人々から採取した1万2238以上の便サンプルを分析した研究結果を発表しました。
以下は、サンプルの採取数ごとに地域を色分けした地図で、黄緑色は100件未満、緑色は100~1000件、青色は1000件超を意味しています。日本からは592件のサンプルが提供されました。

研究チームが、DNAシーケンシング技術で各サンプル中の腸内細菌の種類を特定して定量化したところ、腸内に腸内細菌科(エンテロバクター科)と呼ばれる腸内細菌のグループがいるかどうかを80%の精度で予測できたとのこと。
腸内細菌科は、大腸菌(Escherichia coli)などを含むグラム陰性細菌のグループで、少数であれば無害ですが、何らかの原因で大量に増殖すると感染症などの健康上の問題を引き起こすことがあります。
さらに研究を続けると、腸内細菌の中には腸内細菌科と一緒に繁殖する細菌である「共生菌(co-colonisers)」と、腸内細菌科と同時に見つかることがほとんどない「排他菌(co-excluders)」という2つのグループがあり、特に排他菌の一種であるフィーカリバクテリウム属が腸内にいるかどうかが健康にとって非常に重要なことがわかりました。
フィーカリバクテリウム属の細菌には、食事中のさまざまな繊維を分解して短鎖脂肪酸を生成し、腸内細菌科などの有害な細菌の増殖を阻止する働きがあります。

アルメイダ氏によると、短鎖脂肪酸の存在は共生菌と排他菌のバランスが取れているかどうかを示す強力なシグナルだったとのこと。また、短鎖脂肪酸は炎症の軽減や腸機能の改善など、幅広い健康上のメリットにも関係していることが、これまでのさまざまな研究で示されています。
この研究結果は、抗生物質を使うことなく感染症を予防したり、治療したりする新しい方法につながる可能性があると、アルメイダ氏は考えています。例えば、抗生物質で病原菌を死滅させようとすると善玉菌も影響を受けますが、排除菌を増殖させるような食事療法を導入すれば、薬を使わずに有害な細菌の繁殖を抑制できます。
善玉菌により腸内環境を整えることを目指す同様の考え方としては、有用な腸内細菌を直接摂取する「プロバイオティクス」がありますが、新しく腸内に細菌を導入しても、それらはごく限られた期間しか生存できないことが、以前の別の研究で判明しています。
食事を通じて有用な腸内細菌を増やすことについて、アルメイダ氏は「この戦略はプロバイオティクスより効果的かもしれません」と述べました。

研究チームは今後、微生物が生成する化学物質を調査するメタボロミクスや、遺伝子がどのように活性化されるかを調べるトランスクリプトミクスなどを駆使して、腸内の生態系が人の健康をどのように助けているかをより深く解明する予定です。これにより、食物繊維などの特定の栄養素と長期的な健康の関係が明らかになり、最終的には抗生物質を使わずに感染症から身を守る食事療法も開発できるかもしれないと、アルメイダ氏は述べました。
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