ゲーム

たった1人の開発で初月100万本以上を売り上げた「Balatro」の販売戦略とは


「ローグライクなポーカーゲーム」というまったく新しいゲーム性を備えた「Balatro」は、2024年2月に登場して以来瞬く間に注目を集め、発売から約1カ月でミリオンセラーを達成し、2025年1月には500万本を売り上げるなど多数のユーザーから好まれる人気作に成長しました。また、Balatroの開発者はたった1人であることもしばしば驚きを持って受け止められることがあります。たった1人でどうやって初月100万本も売り上げたのかについて、ゲーム開発に携わるミケーレ・カタノ氏らが分析しました。

Balatro: How a solo developer sold more than 1M copies in one month
https://www.brothers-in-gaming.com/post/balatro

Balatroはカナダのゲーム開発者であるLocalThunk氏の個人開発によるゲームで、パブリッシングはPlaystackが担当しています。

カタノ氏らはBalatroの特徴として「基本はポーカーなのにポーカーを知らない人でも楽しめる」「ルールが簡単」「勝利条件が明確」という3つの大きな要素があると分析しています。ともすれば地味になりやすいカードゲームを派手なエフェクトとサウンドで盛り上げている点もまた魅力の1つであり、配信などでこのゲームを知って「やってみたい」と思った人も少なくないはずです。


しかし、どれほど面白そうなゲームであっても、その面白さが世間に広まらないと販売数は伸びません。カタノ氏らは、Balatroがこんなにも売れたのはひとえにLocalThunk氏らの販売戦略が優れていたためだと指摘しています。

カタノ氏らいわく、LocalThunk氏らは「ストリーマーを巻き込んだ宣伝」「時間をかけて複数のデモを展開」「Steam Next Festへの複数回の参加」「活発なDiscordコミュニティの育成」の4つの柱で販売を進めていったとのこと。


すべての始まりは、2023年7月19日に実施されたストリーマーのNorthernlion氏による発売前のストリームでした。これによりBalatroのSteamフォロワー数は400%近く増加しました。カタノ氏らいわく、PlaystackがBalatroを取り扱い始めたのはこのストリームの直後だったとのことです。

また、LocalThunk氏がデモ版を複数回にわたり公開したことも功を奏しました。2023年6月に配信された最初のデモは、広告も一切なくほとんどインパクトがありませんでしたが、2回目のデモはPlaystackの努力とストリーマーの影響で大成功したとカタノ氏らは指摘しています。

BalatroのSteamフォロワー数の遷移は以下の通り。オレンジの棒線が前週比の伸びを、背景にある青線がフォロワー数を示しています。Balatroは2023年7月19日のストリームで爆発的にフォロワーが増え、2回目のデモと2023年10月9日の「Steam Next Fest」が追い風となりフォロワー数が順調に伸び続けています。Steamのフォロワー数が最後に大きく伸びたのは2024年2月のSteam Next Festのときで、リリース2週間前という絶好のタイミングで行われたため、フォロワー数が前週比20%増という最後の大プッシュを受けることになりました。


しかし、Balatroの数字だけを見ても良いのか悪いのかがよくわかりません。カタノ氏らは比較対象として同じく個人開発ゲームの「Animal Well」を挙げ、チャートを見比べました。Animal Wellは「The Game Awards 2024」でBalatroと同じくBest Independent Gameにノミネートされた作品で、Metacritic発表の「2024年のベストゲーム」では3位のBalatroを抑えて2位に付けた人気作です。

Metacritic発表の「2024年のベストゲーム」のトップ3は「FFVIIR」「Animal Well」「Balatro」でトップ10のうち半分がインディーズゲームに - GIGAZINE


Animal WellのSteamフォロワー数の遷移は以下の通り。2023年1月に伸びているのはインフルエンサーが取り上げたためですが、それ以降は2024年5月の発売日までほぼ横ばいです。


これについてカタノ氏らは「Balatroはリリース後もフォロワー数が増加し続け、リリースから2カ月足らずで4万フォロワーに達したのに対し、Animal Wellは同じ数字に達するまで4カ月近くかかりました。これは、Balatroの勢いと口コミがはるかに強かったことを意味します」と指摘しました。なお、Animal Wellの販売数は4カ月で50万本以下だと予想されています。

カタノ氏らは「ゲームの質を比較しているわけではなく、ゲームをどのように売り込むのかが本当に重要だという話です」と述べました。

最初の1年は非常に好調だったBalatroですが、他の人気作と比べると発売後の成績が良くないとカタノ氏らは指摘しています。

以下は、Balatro(黄)、2011年発売のThe Binding of Isaac(青)、2019年発売のSlay the Spire(赤)の、Balatro発売直後の2024年3月から8月にかけてのSteam同時接続プレイヤー数の平均値の推移です。何年も前のゲームが非常に安定した同時接続プレイヤー数を長期間維持しているのに対し、Balatroは維持率が悪いです。


Balatroが長期的なプレイヤーの維持に苦しんでいる理由として、カタノ氏らは「ゲーム性に理由がある」と指摘。Slay the Spireや、上記グラフに乗せなかった「Hades」は「キャラクターあるいは武器ごとに特性があり、時間をかけて熟達していく喜びが生まれる」という特徴があるのに対し、Balatroは一定の戦略を理解すればあとは運要素に左右されるのみになるという違いがあるとカタノ氏らは論じています。

なお、Balatroは2025年内に無料の大型アップデートを実施することを告知しています。


カタノ氏らは「次のアップデートではデイリー/ウィークリー・チャレンジが来ると予想しています。多くのローグライクゲームにはこれがあるからです。プレイヤーをさらに夢中にさせるシンプルで素敵な追加要素になると思います」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ハマった時の快感が心地よくてついつい何度もプレイしたくなるポーカー+ローグライクで濃厚デッキビルディングと化すゲーム「Balatro」プレイレビュー - GIGAZINE

Steamで2024年に最も売れたゲームトップ10のうち8つが小規模開発者によるインディーゲーム - GIGAZINE

「The Game Awards 2024」候補作発表、GOTYにBalatroやエルデンリングDLCがノミネートしたほかクリエイター部門に兎田ぺこらなど - GIGAZINE

Appleが「2024年最高のアプリ」を選出、多機能カメラアプリや中毒性抜群カードゲームアプリなど - GIGAZINE

「ギャンブル要素があるので18禁」とEUで評価された「Balatro」の開発者が怒りのコメント - GIGAZINE

2024年にSteamでリリースされた新作タイトルは過去最多の1万8000本以上、ユーザー評価ランキング1位を獲得したタイトルは? - GIGAZINE

in ゲーム, Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article What is the sales strategy behind 'Balat….