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詐欺師からの電話に「ペストリーって言った?」「画面が真っ暗になった」などと話し続けて時間を浪費させる「AIおばあちゃん」


電話は詐欺師が高齢者をだますためのツールのひとつとなっており、詐欺師らは高度なマニュアルを作成して組織的に詐欺を仕掛けてきます。そんな中、イギリスの通信事業者であるVirgin Media O2が、詐欺師からの電話に延々と話し続けて時間を浪費させる「AIおばあちゃん」を展開したとのことで、イギリスの日刊紙・The GuardianがAIおばあちゃんの仕組みや会話について報じています。

‘Dear, did you say pastry?’: meet the ‘AI granny’ driving scammers up the wall | Scams | The Guardian
https://www.theguardian.com/money/2025/feb/04/ai-granny-scammers-phone-fraud


Virgin Media O2が展開したAIおばあちゃんは「デイジー」という名前であり、実際の詐欺電話でトレーニングされたAIで構築されています。Virgin Media O2のマーケティングディレクターであるサイモン・ヴァルカーセル氏は、「デイジーは注意するべき戦術や、詐欺師をオンラインに保って時間を無駄にするために提供するべき情報を正確に知っています」と述べています。

Virgin Media O2は詐欺師の時間を無駄にする動画を投稿しているYouTuberのジム・ブラウニング氏と協力して、人々をだまそうとする詐欺師に見つかりやすいウェブサイトにデイジーの電話番号を入力しました。その中には、詐欺師が作ったであろう「話がうますぎるコンテスト」を宣伝するウェブサイトなども含まれていました。

複数のウェブサイトに電話番号を記入してから数日後、早速詐欺師からデイジーの番号に電話がかかってきました。それから数週間にわたり、デイジーのもとには詐欺師から何度も電話がかかってきたそうで、中には40分間もデイジーと話し続けた詐欺師も現れたとのこと。


The Guardianは、実際に「AIおばあちゃん」が詐欺師と会話した際の音声データをYouTubeで公開しています。

Daisy the 'AI granny' speaks to scammer: 'I'm a bit lost now' - YouTube


「あなたのコンピューターは電源がオンになっていますか?」と尋ねる詐欺師に対し、「今はオフになってると思いますが、すぐにオンにしますよ」と答えるデイジー。


その後しばらく会話した後、デイジーは「コンピューターは編み物のパターンを調べたり、たまにスコーンのレシピを調べたりするのに使っているの」と発言。詐欺師は無視して「OK、コンピューターを見つけたら電源をオンにしてください。そしてホームページに行ってください」と指示を出します。


しかしデイジーはホームページを開けないまま、「いつもよりちょっと時間がかかっているみたい」「ごめんなさい、頑張ってはいるんだけどね」「私は78歳なの。私の時代にはこんなテクノロジーはなくて、全部もっと単純だった。わかる?」と雑談を開始。


詐欺師もイライラしてきたのか、「あなたは人を困らせるプロだ、そうだね?」と乱暴な発言をするようになります。


これに対しデイジーは、「まあ大変。私は誰にも迷惑なんてかけたくないの。ただ……ちょっとおしゃべりしたいだけなの」と答えました。デイジーはこのように、詐欺師の時間を無駄にしてイライラさせるためのAIです。


別の詐欺師との会話では、「Play Storeというアプリを開いてください。Play Storeです。P・L・A・Y・S・T・O・R・E」と丁寧に言って聞かせる詐欺師に対し、デイジーは「ねえ、ペストリーって言ったの?」と的外れな返事をします。


詐欺師がペストリーではなくPlay Storeというアプリだと説明すると、「何かクリックしたと思うんだけど……画面が真っ暗になってしまったの。これってよくあることなの?どうすれば元に戻るの?」と答えるデイジー。一向に話が進みません。


詐欺師はまるでサポートセンターのように、スマートフォンの電源を入れるように懇切丁寧に説明しますが、なかなかデイジーのスマートフォンの電源はつきません。ついに詐欺師は、「あなたが私たちの時間を無駄にしようとするなら、お金がなくなってしまいますよ。誰かがあなたのお金を盗もうとしているので、私たちはセキュリティをアップグレードしようとしているだけなんです」とイライラし始めます。


ようやく電源がついたものの、デイジーは「ああ、三角形のアイコンがあるけど、これが正しいものなのかどうかわからない。パイのスライスかも。私の目は昔ほど良くないから。目を細めて見ないと」とのらりくらりと話し続けます。


そして「Play Store」の話に戻ってくると、またデイジーは「あなたの近所においしいペストリー屋さんはある?私はスコーンが大好きなんだけどね。興味があったら、おいしいスコーンのレシピを教えてあげましょうか」と言い始めます。詐欺師が「いえ、あなたのレシピに興味はないです。OK?」と答えると、デイジーは「あら、ちょっとイライラしてるの?」とのんきに答えました。


なお、デイジーはあくまで詐欺電話への意識を高めるために短期間展開されただけであり、Virgin Media O2はデイジーを広範囲に展開する予定はないとのことです。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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