体のかゆい場所をかくことは科学的にデメリットがあるのか?

体がかゆいときはどうしてもかいてしまうのが人としての自然な反応であり、何も不思議なことではありません。ただし、かきすぎると血が出てしまったり、体を傷つけたりしてしまうこともあり、かくにしても限度というものがあります。体をかくことにどんなデメリットがあるのかについて、ピッツバーグ大学のダニエル・カプラン医学博士が解説しました。
Scratching promotes allergic inflammation and host defense via neurogenic mast cell activation | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adn9390

Why You Shouldn’t Scratch an Itchy Rash: New Study Explains
https://www.upmc.com/media/news/013025-itchy-rash
Is there a benefit to scratching that itch? Yes and no, says new study
https://newatlas.com/health-wellbeing/scratching-itch-benefit/
虫刺されや発疹、皮膚疾患によるかゆみは、時としてかきむしらないようにすることが不可能に感じられるほど強烈なことがあります。かくという行為は非常に気持ちの良いものであり、快感を伴うということは何らかの有益なメリットがあるからこそそのように進化したと考えるのが自然です。ところが、体をかきむしると皮膚を傷つけ、感染症を引き起こす可能性を生むなどデメリットも多数あるため、カプラン氏は実際の所かくことが良いことなのか悪いことなのかを見極めるための研究を行いました。
カプラン氏ら研究チームは正常なマウスとかゆみを感知するニューロンがないためにかゆみを感じないマウスを用意し、かゆみを誘発するアレルゲンをマウスに投与して耳に湿疹のような症状を引き起こし、体にどのような変化が訪れるのかを観察しました。
正常なマウスに体をかかせると、耳は腫れ、好中球と呼ばれる炎症性免疫細胞が増加しました。一方、かゆみを感じないマウスや、術後の犬猫に付けるような保護具「エリザベスカラー」を付けてかくことを防がれたマウスでは、炎症と腫れははるかに軽度でした。この実験によって、かくことが皮膚をさらに悪化させることが確認されました。

カプラン氏らによれば、かくという行為に反応して痛みを感知するニューロンが「サブスタンスP」と呼ばれるアミノ酸鎖を放出し、これが体中に存在する免疫細胞「マスト細胞」の活性化を引き起こしたとのこと。マスト細胞が活性化すると、白血球の一種である好中球が体内の免疫反応に働き、炎症やかゆみ反応が頻繁に起こるようになるといいます。
マスト細胞はさまざまな炎症性皮膚疾患やアレルギー反応を引き起こす犯人ですが、細菌やその他の病原体から身を守るためにも重要な働きをするため、カプラン氏らは「かくことで活性化されるマスト細胞が、皮膚のマイクロバイオームに影響を与えるのではないか」と考察しました。

これについては先行研究で「体をかくことが皮膚上の黄色ブドウ球菌の量を減少させる」ということが示されているとわかったそうですが、カプラン氏らは「かくことで黄色ブドウ球菌に対する防御が向上するという発見は、かくことが有益な場合もあることを示唆しているものの、かゆみが慢性化している場合、かくことによる皮膚へのダメージはおそらくこの利点を上回ります」との見解を示しました。
・関連記事
アレルギーはなぜ発生するのか?を分かりやすく解説したムービー - GIGAZINE
睡眠障害の原因になる「むずむず脚症候群」に関連する遺伝子のホットスポットが特定される - GIGAZINE
「蚊に刺されただけ」で人体の免疫に大きな影響が及ぶとの研究結果 - GIGAZINE
シャワーを絶対に浴びない人と浴びすぎの人には何が起こるのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1p_kr
You can read the machine translated English article Is there any scientifically proven downs….