「洗濯物の部屋干しが健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と専門家が警鐘を鳴らす

寒い冬の季節には洗濯物を屋外に干してもなかなか乾かないため、最初から部屋干しするという人も多いはず。しかし、イギリスのバーミンガム大学で免疫学および免疫療法学准教授を務めるレベッカ・ドラモンド氏が、誤った部屋干しが健康に悪影響を及ぼす可能性があると警告しています。
Why drying clothes indoors could put your health at risk
https://theconversation.com/why-drying-clothes-indoors-could-put-your-health-at-risk-248467

ドラモンド氏が部屋干しを危険視しているのは、屋内にぬれた洗濯物を置いておくことでカビが生える可能性があるためです。ドラモンド氏は、「風通しの悪い場所にあるラックでぬれた衣類を乾燥させると、家で成長するカビの量が増える可能性があります。これにより健康状態が悪化することもあれば、場合によっては死に至ることさえあります」と述べています。
カビは胞子と呼ばれる粒子を形成する菌類のグループであり、カビを含む菌類は涼しい気温や高い湿度といった成長に適した条件が整うと胞子を形成します。湿度の高い環境では菌類の胞子が定着・成長しやすいため、家の中ではバスルームや湿った部屋の天井などによくカビが生えます。
カビが成長すると壁に黒または緑の斑点が形成され、不快なカビ臭の原因になる可能性があります。また、カビは単に見た目や臭いが気持ち悪いだけでなく、長期間にわたってカビの生えた家で生活することで、深刻な健康被害をもたらす可能性もあるとのこと。
カビにはさまざまな種類がありますが、湿度の高い家で問題となりやすいのはアオカビやコウジカビです。これらのカビは普通の家にも存在しており、人々は日常的に少量のカビの胞子を吸い込んでいます。

幸いなことに人間の免疫系は胞子を検出して殺すのに優れているため、カビによって肺真菌症などを発症する割合はそれほど高くありません。しかし、免疫機能が損なわれていたり、すでに肺に損傷があったりするために胞子をうまく除去できず、カビにより感染症や基礎疾患の悪化が引き起こされてしまう人もいます。たとえばぜん息患者では免疫系が胞子に過剰反応し、肺に炎症が引き起こされて気道が狭くなり、呼吸が困難になるケースがあるとのこと。
さらに極端な場合、カビの胞子は気道の中で発芽し、菌糸体と呼ばれるクモの巣のような突起を形成することもあります。成長した菌糸体は気道をふさぎ、肺の組織を損傷する粘着性の塊となるそうで、肺から出血する可能性もあるとドラモンド氏は説明しています。
一般にカビは抗真菌薬で治療されていますが、近年は薬剤耐性を持つカビの増加が問題となっています。たとえば、コウジカビの感染症治療に用いられるアゾール系薬剤を長期間服用する患者の体内では、カビがこれらの抗真菌薬への耐性を獲得する可能性があります。
ところが、最近の研究では抗真菌薬を服用する患者の体内だけでなく、一般的な環境でも薬剤耐性を持つコウジカビが増加していることが示されています。これは、人間と同様に真菌感染症が脅威である農作物を守るため、アゾール系薬剤やその他の抗真菌薬が農薬として用いられているためだとのこと。また、高温にさらされたカビは抗真菌薬への耐性を発達させやすいという研究結果も報告されていることから、気候変動による気温上昇も関連しているかもしれないと指摘されています。

2020年には、イギリスに住む2歳の幼児が「家のカビに長期間さらされたことによる重度の呼吸器疾患」で亡くなるという事態も発生するなど、カビは人々に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
ドラモンド氏が住むイギリスでは冬場の湿度が高くなりがちなことから、同氏は「あなたの家にカビが生えないようにすることが大切です。家の換気をよくして、除湿機を使ったり、冬場に室内で洗濯物を乾かすなら暖房付きの物干しを買うなど、湿気を減らす対策を取るのが一番です」とアドバイスしました。
・関連記事
干したての洗濯物から香る「お日様の匂い」を真剣に科学する - GIGAZINE
室内干しした洗濯物の「生乾きのイヤなニオイ」の原因と予防策が解明される - GIGAZINE
洗濯したはずの服やタオルがすぐに雑巾臭くなる原因が明らかに - GIGAZINE
ポリエステル製の衣類は綿製よりも臭くなりやすいことが判明 - GIGAZINE
ジャック・ダニエルの蒸留所から漏れ出すカビが地元を汚染し住民は何百万円もの費用をかけて清掃を余儀なくされている - GIGAZINE
大学寮の「水浸しでカビ生えまくり」の悲惨な状況に抗議し学生らがキャンパスでキャンプ生活 - GIGAZINE
致死率が50%を超える真菌感染症「ムコール症」がインドでなおも拡大、新型コロナに対するステロイド治療が一因の可能性 - GIGAZINE
「ジョン・ウィック」のように真菌を確実に殺す天然物質が発見され「キアヌマイシン」と命名される - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Experts warn that drying laundry indoors….







