太陽光を熱に変換してわずか10分で30度も温度が上昇する新たな繊維が開発される

冬場の寒い屋外にいる時、「衣服がカイロみたいに発熱してくれればどれほど温かいだろう」と想像したことがある人もいるかもしれません。新たにカナダや中国の研究チームが、学術誌のAdvanced Composites and Hybrid Materialsに掲載された論文で、「光を熱に変換して温かくなる特殊繊維」を開発したと報告しました。
Color tunable photo-thermochromic elastic fiber for flexible wearable heater | Advanced Composites and Hybrid Materials
https://link.springer.com/article/10.1007/s42114-024-00994-4

This smart fabric heats up under the sun | Waterloo News | University of Waterloo
https://uwaterloo.ca/news/media/smart-fabric-heats-under-sun
New fabric can heat up almost 50 degrees to keep people warm in ultracold weather | Live Science
https://www.livescience.com/chemistry/new-fabric-can-heat-up-almost-50-degrees-to-keep-people-warm-in-ultracold-weather
科学者らは長年にわたり、寒い環境下で快適な体温を維持するためのウェアラブルヒーターを研究してきました。柔軟性のあるウェアラブルヒーターは山岳救助隊やペットの衣服など、さまざまな分野に応用することができますが、既存のウェアラブルヒーターは金属ナノ材料やバッテリー駆動の発熱体など、高価な部品に依存しています。
そこで、カナダのウォータールー大学で化学工学教授を務めるYuning Li氏らの研究チームは、光を熱に変換するプラスチックに似た素材である光熱活性ポリマーに注目しました。
研究チームが開発した繊維は、防水衣類やスポーツウェアにも使われるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)に、光熱活性を持つポリアニリン(PANI)とポリドーパミン(PDA)のナノ粒子を0.5%埋め込んだものです。実際に開発した繊維を糸巻きに巻いた写真が以下。

紡糸の工程で温度に反応して色を変える染料を組み込むことで、材料の温度が上昇すると赤色から白色に変化する仕組みになっています。これにより、着用者が繊維の温度変化を目で見て把握できます。

実際に研究チームは、新しく開発した繊維を用いてテディベア用のマフラーを編み、日光にさらす実験を行いました。すると、わずか10分間日光に当てただけで、繊維の温度はセ氏20度からセ氏53.5度まで上昇したとのことです。

Li氏は科学系メディアのLive Scienceに送った電子メールで、「組み込まれたナノ粒子は、さまざまな波長の太陽光を非常に効率的に吸収します。太陽光がこれらのナノ粒子に当たると、ナノ粒子はそのエネルギーを吸収し、光熱変換と呼ばれるプロセスを通じて熱として放出します」とコメントしています。
今回開発された繊維は元の形状の5倍に伸びる伸縮性も備えており、最大25回の洗濯を経験しても機能を維持する耐久性もあります。研究チームは実用化に向けて、生産プロセスのスケーリングやコスト削減に焦点を当てており、費用対効果を高めるためにPDAの代替となる原料を探しているとのこと。
Li氏は、「私たちは耐久性を優先し、生地がその革新的な特性を維持しながら、繰り返しの使用や環境暴露に耐えられるようにしました」「この研究の次のステップは、製造コストの削減、製造工程のスケールアップ、長時間の皮膚接触に対する安全性の確保です」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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