生き物

シャコのパンチにヒントを得た柔らかいロボットアームで卵を割ることに成功


ロボットは一般的に硬く剛性のある材料で作られていると考えがちですが、ソフトロボティクスは生物に見られる特性を模倣した、より柔軟な材料でロボットデバイスを構築することを目指しています。その好例として、韓国の技術者たちが、シャコの強力なパンチを生み出す仕組みと同じメカニズムを採用することで、素早く力強い関節運動が可能なソフトロボットを開発しました。

A hyperelastic torque-reversal mechanism for soft joints with compression-responsive transient bistability | Science Robotics
https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.ado7696

This mantis shrimp-inspired robotic arm can crack an egg - Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2025/01/this-mantis-shrimp-inspired-robotic-arm-can-crack-an-egg/

シャコは約450種が存在していることが知られており、一般的に2つのタイプに分類することができます。1つは槍のような付属肢で獲物を刺す「槍突き型」で、もう1つは大きく丸みを帯びたハンマーのような爪で獲物を叩く「たたき型」です。たたき型の攻撃は秒速23メートルに達するほどの速度による強力なパンチで、水中で気泡を生成し、衝撃波を引き起こすことがあります。この衝撃波は二次的な打撃として作用し、獲物を気絶させたり殺したりすることもあるほか、打撃によってソノルミネセンスと呼ばれる発光現象を引き起こすこともあります。


2018年の研究によると、シャコの強力なパンチの秘密は、大きな筋肉からではなく、弓矢やネズミ捕りに似たシャコの腕の弾性のある解剖学的構造にあるとのこと。シャコの筋肉が腕の鞍型構造を引っ張ることで、それが曲がってポテンシャルエネルギーを蓄え、棍棒のような爪を振り下ろす際にそのエネルギーが解放されます。

この構造を利用して、2021年にハーバード大学の研究者がシャコの強力な付属肢のバイオメカニカルモデルを開発し、その動きを模倣する小型ロボットを製作したことを報告しました。

弾丸を超える速さで繰り出されるシャコのパンチをマネできるロボットが誕生 - GIGAZINE


ソウル国立大学の工学研究者で今回の研究チームを率いたチョ・ジンチョ氏は、溶接や塗装などの組立ラインでよく使用される「ソフトロボットマニピュレーター」の研究を行っていました。チョ氏は、力を加えた際の形状の予期せぬ変形から、基本的なメカニズムがシャコのパンチやノミが体の大きさの割に高く遠くまでジャンプできる仕組みと似ていると気付いたそうです。

過去にチョ氏のチームは、超弾性トルク反転機構(HeTRM)を使用して、ノミにインスピレーションを得た小型ジャンプロボット用のカタパルト機構を製作していました。チョ氏は「これらの原理をソフトロボティクスに応用することで、複雑な機構なしに新しいタイプの動きを可能にできることに気づきました」と述べています。


研究チームは、HeTRMを使用していないロボットアームと、HeTRMを使用したロボットアームの動作を実演しています。それぞれのロボットアームは3Dプリンティングとシリコン成形を組み合わせて作られており、HeTRMを使用していないロボットアームは卵を割らず、ただ表面をなでるだけです。


一方、HeTRMを使用したソフトロボットアームは、モーターで腱を引っ張り、その張力を利用して卵をたたき割るような動作を行います。これにより、卵の表面にヒビが入っているのがわかります。


チョ氏は「私たちのロボットはゴムのような柔らかく伸縮性のある材料で作られています。内部には特殊なパーツがあり、エネルギーを蓄えて一度に解放することで、バン!とロボットを超高速で動かすことができます。曲がった木の枝が素早く元に戻ったり、ノミが遠くまでジャンプしたりするような仕組みです。このロボットは手のように物をつかみ、床を這い、高くジャンプすることができ、これらはすべて単純な筋肉を引っ張るだけで実現します」と語りました。

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in ハードウェア,   サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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