人は見た目がよくなると寄付などのポジティブな社会的行動が増えるという研究結果、デジタルフィルターでも効果あり

近年は容姿に関連して差別的な扱いをするルッキズムを批判する声が高まっていますが、その一方で化粧品や美容医療への関心がソーシャルメディアを通じて若年層を中心に広がっており、見た目を「盛れる」デジタルフィルターも人気です。そんな中、イスラエルのテルアビブ大学とアメリカのペンシルベニア大学の研究チームが、「人は容姿が改善されると寄付などの向社会的行動が増える」という研究結果を発表しました。
Physical appearance improvements increase prosocial behavior - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0167811624000831

Self-beautifying can boost prosocial behavior — here's why
https://www.psypost.org/new-psychology-research-shows-self-beautifying-can-boost-prosocial-behavior-heres-why/
現代社会では多くの人々が化粧をしたり、美容医療を受けたり、デジタルフィルターを使用したりして、自分自身の外見を向上させる何かしらの活動に参加しています。これらの行動は多くの場合、自分の魅力を向上させて自尊心を高め、社会的承認を得たいという欲求によって推進されると考えられます。
これまでの研究では、外見が自己認識やさまざまな社会的相互作用に影響することがわかっており、「人はルックスが自分と同じくらいの異性と付き合う傾向がある」「15歳時点の容姿が30代での社会的地位に影響する」「男性は容姿が悪いと女性やその父親から評価されない」といった結果も報告されています。
しかし、外見の改善が個人的な利益を超えて、向社会的行動といった美しさとは無縁の行動にどのような影響を及ぼすのかは、ほとんど理解されていないとのこと。そこで研究チームは、外見の改善が向社会的行動に及ぼす影響を調べるために研究を行いました。
論文の共著者でペンシルベニア大学の博士研究員であるナタリア・コノノフ氏は、「自分の外見をよくしようとすることは非常に一般的ですが、虚栄心や表面的なものと結びつけられて、否定的に見られることが多々あります。私たちはこの一般的な行動が、考えられている以上にポジティブな意味を持つのではないかと興味を持ったのです」と述べています。

研究チームは合計で2895人の被験者を含む7つの実験で、外見の改善が「慈善団体への寄付」や「倫理的な製品の選択」といった向社会的行動にどのような影響を及ぼすのかを調べました。これらの実験には実験室で行われたものやオンラインで行われたものに加え、実験という体ではなく実際のオンライン環境上で行われたフィールド実験も含まれていました。
いくつかの実験では、被験者に「髪をスタイリングした時」「化粧をした時」などの自分の容姿が改善された瞬間か、「容姿とは無関係な楽しい活動」を思い出してもらいました。その後、「ユニセフのキャンペーンに寄付するかどうか」「ソーシャルメディアで慈善団体へのリンクを共有するかどうか」など仮定のシナリオが提示され、どのように振る舞うのかが調査されました。
実験の結果、容姿と無関係な楽しい活動を思い出した被験者と比較して、外見が改善された瞬間を思い出した被験者は、一貫して寄付などの向社会的行動に従事する意欲が高まりました。さらなる分析により、これは単なる気分の改善によるものではなく、「人から見られた自分の認識」によって推進されていることが判明しました。これらの影響は女性だけでなく、一般に容姿を気にしないといわれる男性でも確認されたとのことです。

別の実験では被験者が自分の顔写真を撮影し、外見的魅力を「盛れる」フィルターか中立的なフィルターのどちらかを適用した上で、向社会的行動への意欲を調査しました。その結果、美化フィルターを適用した人は寄付などの行動でより高いレベルの寛大さを示しましたが、中立的なフィルターを適用した場合はその効果が消えたとのことです。
この実験では、向社会的行動への意欲を高めるには、被験者本人が「自分の容姿が改善されている」と感じる必要があることもわかりました。また、容姿の改善が自分にだけしかわからないのではなく、他人にもわかるものであった場合、向社会的行動に従事する可能性が高まったと報告されています。
これらの知見を現実のオンライン環境に拡張したフィールド実験では、被験者は自分の容姿に対する認識を向上させるように設計されたクイズか、あるいは建築物といった無関係なトピックに焦点を当てたクイズに解答しました。その後、被験者の画面に寄付キャンペーンのバナーを表示したところ、外見に焦点を当てたクイズに答えた被験者の方がバナーをクリックする可能性が高くなりました。
コノノフ氏は心理学系メディアのPsyPostに対し、「私たちの研究は、外見を磨くことは単に自信を持つだけでなく、『他人からどう見られているのか』という意識を高めることを示しています。この意識の高まりは、慈善団体への寄付や倫理的なブランドの選択など、より向社会的行動につながる可能性があります」とコメントしました。

なお、今回の研究はあくまで化粧やデジタルフィルターの使用といった、一時的な容姿の改善に焦点を当てたものであり、美容整形手術のような恒久的あるいは劇的な変化がもたらす影響についてはわかっていません。それでも、「容姿をよくするための行動」がもたらすポジティブな影響については、注目に値するといえます。
コノノフ氏は、「私たちの調査結果は、フィルターや自撮り写真がソーシャルメディア文化の重要な部分を占めている今日の世界において、特に関連性があります。私たちは、物理的な外観とデジタル的な外観の変化が自分自身の見方を形作り、他者への行動に影響することを発見しました。これは、非営利団体やマーケターにとって実用的な意味を持ちます。彼らはこれらの洞察を利用して、慈善団体への寄付や倫理的な信念への支援など、前向きな行動を促すキャンペーンを設計できます」と述べました。
・関連記事
外見的魅力の恩恵を受けやすいのは女性より男性であるという研究結果 - GIGAZINE
人はルックスが自分と同じくらいの異性と付き合うことが研究で裏付けられる - GIGAZINE
「ルックスが魅力的な学生ほど好成績な現象」は対面授業からリモートになるとどう変わるのか? - GIGAZINE
「魅力的な人」はそうでない人に比べて犯罪の刑期が短くなる - GIGAZINE
男性は容姿が悪いとどれだけ性格が良くても女性やその父親から評価されないという研究結果 - GIGAZINE
人の顔は「名前」で決まることが研究で判明、子どもにイケメンっぽい名前を付けると本当にイケメンに育つかも - GIGAZINE
美容整形は人を幸せにするのか? - GIGAZINE
TikTokがメンタルケアのために18歳未満の美容エフェクトを一部ブロック - GIGAZINE
何よりも効果的なスキンケアの秘訣は「金持ちであること」 - GIGAZINE
「スキンケア用品はほとんど効果がない」という主張に対する専門家の意見とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Research shows that people's positiv….