ハードウェア

Amazonによるルンバ開発元の買収は「最も危険で脅迫的な買収になる可能性がある」と有識者が警告


現地時間の2022年8月5日、Amazonがロボット掃除機のルンバを開発するiRobotを約17億ドル(約2300億円)で買収する契約を締結したと発表しました。これを受け、銀行・ブロードバンド・エネルギー・独立事業・廃棄物などの分野における持続可能なコミュニティ開発のためのローカルソリューションについて、コミュニティに技術支援を行うInstitute for Local Self-Reliance(ILSR)の上級研究者であるロン・ノックスさんが「Amazonの歴史上、最も危険で脅迫的な買収になる可能性がある」と指摘しています。


ノックスさんの主張は以下の通り。

「iRobotが開発するロボット掃除機のルンバは世界中で人気の製品で、4000万台以上のルンバが稼働していると言われています。これは多くの人にとって、ルンバはどこにでもあるものであり、すでに日常生活の当たり前になっているということです。誰も掃除機をかける以前の生活に戻りたいとは思っていないということです」「ルンバのような人気製品を買収することにAmazonが興味を抱いていることは明らかです。しかし、iRobotを買収したことで、Amazonはより多くのものを手に入れることが可能となります。その多くのものとは、ライバル製品であり膨大なデータセットでありユーザーの家や生活に関与するための新しい方法でもあります」


「まず、AmazonによるiRobot買収が競争を損なうかどうかだけを心配したとしても、この取引は悪いものです。なぜなら、AmazonはAstroやEchoなど、iRobotの提供する製品と多くの側面で競合しており、今回の買収はAmazonにとって最大のライバルを市場から排除することになるためです」「ジェフ・ベゾスはAmazonが支配への道を買うことを望んでいると明言しています。ルンバを買収し、プライムシステムにより支えられた巨大な独占力と組み合わせることで、それはまさに実現することとなるでしょう。現在、他にもスマート掃除機の選択肢は存在しますが、Amazonがルンバというブランドを所有することになれば、それらはなくなることとなるでしょう」


「さらに、Amazonはどのようにルンバを使用して家庭用ロボット市場を独占することとなるのでしょうか?EchoやKindleなどの販売に使用するものと同じ略奪的な価格体系をルンバにも適用することとなるでしょう。市場から競争相手を追い出すための略奪的な価格設定を行い、その過程で市場を独占するというのがAmazonのやり方です」「これはストレートなデータ取得でもあります。ルンバの最新バージョンは掃除をしながら家の情報を収集します。ルンバは掃除をしながら家具の置き場所や各部屋の大きさなどを認識します」


「これはつまり、アメリカの消費者に関するすべてを知りたいと考えているAmazonが、ユーザーがどこに住んで、どのような買い物をして、何を食べているのかに関する、おそらく最も多くのデータを持っている企業を買収するということを意味します」「プライバシーの観点からすると、これは悪夢そのものです。独占禁止法の観点からすると、地球上で最も強力なデータ収集企業のひとつであるAmazonが、別の膨大で侵略的なデータセットを取得するということになります」


「このようにプライバシーに関する懸念と独占禁止法違反に関する懸念は密接に関係しています。スピーカー・ドアベル・セキュリティカメラにカメラとマイクを搭載している企業(Amazon)が、家の形と内容を把握している企業(iRobot)を買収しようとするのはあらゆる面で悪いことです」「最後に、もしも規制当局がこの合併を垂直統合と考えるのであれば、前述の通り、ここには重要で反競争的な水平方向の要素もあると主張したいと思います。たとえ判例が悪く、勝つのが難しくても、そのように異議を唱えるべきです」


ノックスさんの主張は主に2点あり、「既にスマートスピーカーやドアベル、セキュリティカメラといったスマートホーム製品をリリースしているAmazonが、同じスマートホーム製品の一種であるルンバのiRobotを買収するということは、市場の独占につながるのではないか」というのが1点。もうひとつが、「既に多くのユーザー情報を収集しているAmazonが、家庭内のさまざまな情報を収集するルンバのiRobotを買収することになれば、ユーザーのプライバシーはますます損なわれることとなる」という点です。


AmazonがiRobotを買収することで、ルンバが収集する家の間取りなどの情報をAmazonが入手できるようになり、ユーザーのプライバシーが損なわれることになるという点については複数のメディアが報じています。テクノロジーメディアのMotherBoardは「ルンバ単体では何も怖くありませんが、これをAmazonの広大な監視インフラストラクチャーと組み合わせることで、より邪悪なものが生まれます。データを収集しAmazonのシステムに接続することで、Amazonは常にユーザーを監視し、ユーザーの人生に関与し、ユーザーに何かを売りつけるための方法を模索しようとしています」と報道

The Vergeは「Amazonはすでに4つのスマートホームブランド(スマートスピーカー・スマートディスプレイをメインとするEcho、ホームセキュリティのRing、低価格帯カメラのBlink、メッシュWi-FiのパイオニアEero)を有しています。ここにiRobotが加わることとなれば、Amazonはスマートホームを形成するために必要な要素すべてを満たすこととなります。これにより、ユーザーが何をしたいのかを予測し、ユーザーに尋ねることなくそれを実行することも可能となり、これはAmazonが既にHunchesで行っていることそのものです」と報じていますが、同時にAmazonサービスの利便性が向上することで、ユーザーのプライバシーはより損なわれることになると指摘しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Amazonが1000円分のポイントと引き換えにユーザーの「手のひら」の情報を収集している - GIGAZINE

AmazonはKindleを通してどのくらいユーザーのデータを収集しているのか? - GIGAZINE

Amazon製監視カメラによる録画がAmazon従業員によってチェックされていたことが判明 - GIGAZINE

AmazonがAlexaの会話データを第三者に聞かれないようにできるオプションを追加 - GIGAZINE

Alexaはユーザー音声の「写し」を無期限に保持し続ける、音声データを削除しても意味なし - GIGAZINE

Alexaが聞いた会話内容は録音されAmazonの従業員によって解析されている - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article Experts warn that Amazon's acquisiti….