自殺や自傷行為について考えるとストレスが軽減されることが判明

大切な人の死や大きな挫折など、押しつぶされそうなほどつらい思いをした人の中には、自殺が頭をよぎったことがある人もいるはず。しかし、生き物にとって避けるべき死のリスクとなる「自殺や自傷行為」についての思考には、むしろ逆境を生き抜くためのメカニズムが隠されている可能性があることが、新たな研究により判明しました。これにより、自殺や自傷行為を予防する取り組みが進展すると期待されています。
A meta-analysis on the affect regulation function of real-time self-injurious thoughts and behaviours | Nature Human Behaviour
https://www.nature.com/articles/s41562-022-01340-8
Thinking About Suicide and Self-Harming Alleviates Stress - Neuroscience News
https://neurosciencenews.com/stress-suicide-self-harm-20502/
日本の中高生の1割に自傷経験があると報じられているほか、「自殺者の4割近くに過去の自殺未遂歴がある」と(PDFファイル)報告されているなど、自殺や自傷は深刻な社会問題です。若者の死因の上位が自殺なのは日本以外の先進国も同様ですが、そもそもなぜ人が自分を傷つけたり自殺を思い立ったりするのかについての包括的な背景に関する研究は、これまであまり顧みられてきませんでした。

今回、ワシントン大学心理学部のケビン・クーン氏らの研究チームは、自殺念慮や自傷行為を扱った文献をメタ分析して、自殺や自傷に関する思考が人に与える影響を定量化する研究を行いました。研究チームによると、自殺念慮と非自殺的な自傷行為(NSSI)をまとめて分析したのは、NSSIが自殺の危険因子なのが理由とのこと。
研究チームが、38件の文献から取得した合計1644人分の調査データを分析したところ、自傷行為と自殺念慮の両方の前に高いレベルの精神的苦痛があったことが確かめられたほか、それらの後にストレスが軽減されているということも判明しました。つまり、被験者らは強いストレスを感じた後に自傷行為や自殺念慮を経験しましたが、そのことがストレスの軽減に関係している可能性が示唆されたことになります。
今回の研究では他にも、自殺により亡くなる人の大半がメンタルヘルスの治療を受けていなかった点なども改めて浮き彫りになりました。こうした知見は、自傷行為や自殺願望を他のストレス軽減手段に置き換えるトレーニングをするといった、自殺予防の取り組みに役立つと、研究チームは述べています。

その一方で研究チームは、今回の研究には「使用された調査データのうち80%が女性で75%が白人である点」などの制限があることも指摘。今後のさらなる研究では、性別や人種の多様性を高めることが求められると述べました。また、ストレスが具体的にどんな過程で自分を傷つける思考や行動に結びつくのかを特定することも今後の課題とされています。
その上で、クーン氏は研究結果について「いいニュースは、認知行動療法や弁証法的行動療法など、自分を傷つける行為よりも感情のコントロールに役立つ治療法が存在するということです。自殺念慮や自傷行為に苦しんでいる人を、もっと多くケアにつなげることで、それらの問題を減らせるでしょう」と話しました。
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in メモ, Posted by log1l_ks
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