サイエンス

なぜオレオのクリームは片側のクッキーにだけガッツリくっつくのか?を探求する学問「オレオロジー」誕生


ナビスコの「オレオ」は、年間販売数が400億枚を超えるという世界で最も売れているクッキー菓子。このオレオをねじってクッキーをはずそうとした際に生じる「2枚のクッキーに均等にクリームがくっつくのではなく、どちらか一方のクッキーにのみクリームの大半がくっつく」という現象について、マサチューセッツ工科大学(MIT)の流体力学者が専門的な研究を行っています。

On Oreology, the fracture and flow of “milk's favorite cookie®”: Physics of Fluids: Vol 34, No 4
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0085362

MIT engineers introduce the Oreometer | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2022/oreometer-cream-0419

“Oreology” investigates mystery of why Oreo creme filling usually sticks to one side | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/04/oreology-investigates-mystery-of-why-oreo-creme-filling-usually-sticks-to-one-side/

マヨネーズや蜂蜜などの日常的な食品に関する流体力学の研究は幅広く行われており、一例では急須やティーポットの注ぎ口から水が垂れしまう「ティーポット効果」やミックスナッツの袋の中で一番大きなナッツが上に来る「ブラジルナッツ効果」などが流体力学によって解き明かされています。

ミックスナッツの袋の中で一番大きいナッツが上に来る現象はなぜ起きるのか? - GIGAZINE


そんな食品に関する流体力学の中でも「オレオ」を研究対象にしたのが、MITのクリスタル・オーエンス氏ら。オーエンス氏らはオレオをねじって2つに分けた際に生じるクリームの付着量が偏るという現象に着目して物体にトルクをかけて粘度を計測する「レオメータ」という機器を使って、オレオのクリームを調査し、一連の研究をオレオ+レオロジー(流動学)からオレオロジーと命名しました。

オーエンス氏が幼少期からオレオが大好きだったという経緯はさておき、オレオのクリームに関する研究は「平行に設置された2つの平板によって可塑性固体が挟まれた複合体」の例として最適とのこと。つまり今回の研究は、熱可塑性複合材料などの研究につながるという趣旨です。

というわけで、オーエンス氏らは近所の食料品店でさまざまなフレーバーを購入し、レオメーターでひねってオレオを分割する実験を開始。


この実験の結果、クリームの分割状態はひねる速度・クリームの量・クリームの味とは関係がないことが判明しました。おそらくはクッキーとクリームの間に存在する接着レベルのみに関係があり、同じパッケージ内のオレオは同じ向きのクッキーにクリームがくっつく傾向が強かったことから、この接着レベルはオレオの製造方法やパッケージ内での向き、保存方法などの影響を受けると考えられました。


なお、分割時にクッキーが割れる率についてはクッキーのフレーバーとひねる速度の影響が大きいため、クッキーを割らずにオレオを分割したい場合はゆっくりとひねったほうがベターだそうです。

この実験ではクリームの断面が、主に延性を有する金属やプラスチックの破損時に見られる「カップアンドコーン破断面」となることや、食感に関わる破損ひずみと破壊応力の2種が相対的に低い値であることからクリームが食品科学の分野で定義される「Mushy(ねっとり、どろどろ)」に分類されることが改めてわかったとのこと。

また、オーエンス氏らは研究室で用いられるようなレオメーターがなくともオレオの流体力学的研究が行える「オレオメーター」も開発しました。

The Oreo Twister / Oreometer - YouTube


オレオメーターは3Dプリンターで作成可能なオレオ専用分割機。使い方は固定部にオレオをセットして……


固定部を台座に置きます。


固定部の側面に筒を接続します。この筒の片方にコインを入れて加重していくのですが、固定部には輪ゴムが内蔵されており、コインの重量をひねる力に変換してくれるという構造。


オーエンス氏らの検証によると、オレオメーターはレオメーターとほぼ同等の実験結果を得られるそうです。

オレオメーターの3Dプリンター用設計図や解説書は以下で配布されています。

On Oreology, the fracture and flow of “milk's favorite cookie®”: Physics of Fluids: Vol 34, No 4
https://aip.scitation.org/doi/suppl/10.1063/5.0085362

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in サイエンス,   動画,   , Posted by darkhorse_log

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