大麻の使用は大学生の学業成績にどのような影響を与えるのか?

近年のアメリカでは大麻を合法化する流れが進んでおり、各州で非医療用途や嗜好(しこう)品としての大麻使用が解禁されています。2020年の調査では大学生における大麻の使用が1980年代以降で最高の割合に達していますが、「大学生が大麻を使用するとどのような影響が出るのか?」という疑問について、ワシントン大学医学部のJason Kilmer准教授らが解説しています。
How does smoking marijuana affect academic performance? Two researchers explain how it can alter more than just moods
https://theconversation.com/how-does-smoking-marijuana-affect-academic-performance-two-researchers-explain-how-it-can-alter-more-than-just-moods-168158
2007年の研究では、人々が大麻を使用するのはハイになったり、高揚感を得たり、社会的なつながりを高めたり、特定の感情や気分に対処したりするためだと報告されました。また、新型コロナウイルスのパンデミック初期に若者を対象に行われた調査では、何かを祝うために大麻を使用するケースが緩やかに減少し、代わりに退屈に対処するために大麻を使用するケースがわずかに増加したことが示されています。しかし、依然としてハイな気分や高揚感を求めることが大麻を使う主要な動機となっていると、Kilmer氏らは指摘しています。
アメリカではすでに18の州が非医療目的や娯楽目的での大麻使用を合法化しており、特に21歳以上の大学生による大麻使用が増加しています。アメリカにおけるドラッグ使用を調査するMonitoring the Futureによると、2020年の調査では大学生の43~44%が過去1年間で大麻を使用したことがあると回答したとのこと。以下のグラフを見ると、2020年における大学生の大麻使用の割合は、1980年代以降で最も高いことがわかります。一方で、過去1カ月間に大麻を服用した大学生は25%にとどまり、少なくとも4分の3の大学生は頻繁に大麻を服用しているわけではないそうです。

Kilmer氏らは大学で働く中で、学生が大麻について「安全」「自然」「ただの雑草」と言っているのを耳にすることがあるそうです。しかし、大麻には潜在的なリスクが存在することが指摘されており、「大麻は人間にとって全く無害なもの」と断言することはできません。
実際に、大学生が大麻を使用する頻度が高いほどGPAが低くなる傾向があり、授業を欠席する回数も多くなり、留年したり中退したりする割合も高くなることがわかっています。Kilmer氏らは、大麻の使用によって注意力や記憶力が低下するとの研究結果があると述べ、これが大麻を使用した大学生の学業成績が低下する理由だろうとしています。
その一方で、大麻の使用を中断すれば認知能力が回復するとの研究結果も報告されていますが、認知能力が回復するまで28日ほどかかる場合もあるとのこと。2021年8月に発表された低リスクの大麻使用に関するガイドラインの著者は、大麻の使用によって認知力の問題を経験した人々は使用を中断するか、使用頻度や大麻の濃度を大幅に減らすことを検討するべきだと結論づけました。
また、Kilmer氏らは大麻を使用する大学生との会話で、「大麻を使わないとじっと座っていられないし、落ち着きや不安がなくなる」という話を聞くことがあるとのこと。この学生らは「大麻の使用によって助かっている」と感じているかもしれませんが、残念ながらこれらの不安や落ち着きのなさは大麻の離脱症状の場合があり、実際には大麻の服用によって離脱症状が落ち着いただけの可能性があるそうです。「私たちは、大麻を使用することの学術的、または教育的な利益を示す研究を知りません」とKilmer氏らは述べ、大麻の使用によって学業成績が向上する証拠はないとしています。

Kilmer氏らは大麻合法化に伴って販売が急増している大麻製品について、多幸感の元となるテトラヒドロカンナビノール(THC)の濃度が高くなっていると指摘。一般的に「高効力」の大麻はTHC濃度が10%以上とされていますが、ワシントン州で販売されていた大麻製品を分析した研究では、喫煙用の大麻の花に含まれるTHC濃度が20%を超えているとの結果がみられたほか、その他のオイルなどの濃縮物はTHC濃度が60%を超えるものも一般的になっているとする(PDFファイル)調査結果もあります。
こうした高効力大麻の使用は、大麻使用障害や精神的健康の悪化といったリスクに関連付けられているとのこと。Kilmer氏らは、若者は特に大麻に対して脆弱(ぜいじゃく)であり、複数の研究結果が大麻の使用によってさまざまな害が出る可能性を示していると述べました。

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